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軽音楽部夏合宿
私の高校には、あれだけ古い施設なのに、なぜか合宿所だけは綺麗なものがあった。合宿と言えば、体育会が夏の集中合宿というものをやるイメージが強い。まさか、軽音楽部に夏の合宿があるとは思いつきもしていないが合宿があったのだ。
というよりも合宿所は、部活であれば使用する権利があり、「合宿とかやる?」という打診が顧問からあったのだと思う。顧問は軽音楽が嫌いだったのでやりたくなかったのだと思うが、確か3日間だけ合宿所で寝泊まりした覚えがある。
合宿と言っても、軽音楽部は、走り込みをするわけでもないし、筋トレもない。合宿メニューなんてあるわけがない。ただ、皆で集まってワイワイするだけの三日間である。それも悪くない。
夜は一丁前にカレーを作った。軽音楽部に合宿の必要性がないことも分かったけれど、恐らくプロのミュージシャンがレコーディングの作業をする時は、こんな感じなんだと思う。
当時は、カバー曲しかやってなかったから、余計にただのお泊り会っぽさが前面に出ていたけれど、あれが後夜祭に向けた新曲の作曲の場であれば、非常に生産的な合宿になったような気がする。
軽音楽は、オリジナル曲作曲している部もあるかもしれないけれど、基本的にカバーが多い。後に渡米して知ったことだが、アメリカは、オリジナル曲でバンド活動をしている人が多い。
アメリカのカバーバンドは、良い言い方をすると、「トリビュートバンド」と呼ばれて、非常に本格的にやっている。演奏は本家並み、外見も本家に似せる。なぜかと言うと、バンド活動でお金稼ぎができるのは、カバーバンドだから。
アメリカのライブハウスは、当時の日本のライブハウスと違って、とにかくお客さんが沢山お酒を飲む。カバーバンドで声まで限りなく本家に似ていると、まるで本家を聞いているような気分になるし、楽しくなる。楽しくなれば更に飲む。飲めば飲むほど、バーは儲かる。
日本のライブハウスは、当時の印象だとチケットノルマを課すことで、その日の日のミニマムを確保しているビジネスモデルに見えるけど、アメリカのライブハウスは、お酒で稼ぐ。だから、素人バンドでも、ノルマはなく、販売したチケットの70%をバンド側にくれる。それは、来たお客さんのお酒からの利幅で稼ぐから。
アメリカのビールは、コストがそもそも安い。クラブだと小瓶で7ドルくらいで販売しているものの、コストは2ドルもしない。一人二本以上は呑むから、平均14ドルの売上で、10ドルの利益が取れる。
また、若い子たちは、結構ショットを飲むから、そこで更に利益が取れる。日本みたいに、ワンドリンクチケットなんてなくても、どんどん飲んでくれる。寧ろ日本は、ワンドリンク制を止めて買わせた方がいい。
話は軽音楽に戻るが、軽音楽部は、カバーをやるのではなく、オリジナル曲で競い合っていく部活である方が面白い。スポーツでいう県大会みたいなのがあって、それがいわゆる野外フェスみたいになっているとか、あるいは、大きめのクラブでもいいし。
審査を来場者に行ってもらうために、無料で入場させて、最後に投票を募る。最も票を勝ち取ったものから、関東大会、全国大会と駒を進め、全国大会で優勝したバンドは、プロの野外フェスのステージに出演できるというインセンティブを作れば、演奏するバンドよりも、パフォーマンス重視のバンドが増えるかもしれない。
また、こういうコンテストを勝ち抜くことで、レコード会社の新人発掘にも一役買うことになるから、お互いに得する関係に慣れると思う。そもそも、ただ単にカバー曲を演奏するだけの部に終わっているから、顧問もただ煩いということで嫌うことにもなる。学校は、基本的に名前が売れればいいわけだから、軽音楽部は、ただのコピーバンド部を脱却すべきだと思う。