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バンドでスカウト

 ビジュアルバンドを始めたばかりの頃、ライブハウスでのライブの他に、屋外でのイベントに参加したことがあった。自分でドラムを持っていなかったので、誰かのドラムで叩いていたことは間違いない。

 屋外でどこかの橋の上で、いくつかのバンドがパフォーマンスを披露するようなイベントだったのではないかと思う。いつものようにカバーバンドの曲を5曲くらい披露して、ライブを終えた。すると、二人の女の子と、一人のおじさんらしき男性が別々に近づいてきた。

 男の人は、中年の方で、ビジュアル系ではもちろんない。しかし、彼は名詞を我々に渡すと、バンドのスカウトをしているという。その人がレーベルの人ではなくて、彼の知人が新人発掘をしている人だという。私たちは、あまりの出来事に興奮を抑えることが出来なかった。

 しかし、ボーカルは冷静だった。結成してまだ1年も経過しておらず、カバーバンドなのに、レーベルがスカウトしても販売できるCDがなければ、商売にならないだろうと。絶対インチキに決まっていると、間違った電話番号を渡してきたという。確かに一理あると思った。と同時に、うちらのバンドが騙されたとして、どういう騙され方になるのかなとも思った。

 さて、その中年の男性以外に私たちにべったりとついてきたのは、ファンになったという二人の女の子だ。しかも、キャバいお姉様ではなく、ゴスロリっぽい雰囲気に近い、非常に大人しいお二方であった。

 ライブを見て気に入ったという二人には、その当時ブッキングしていたライブのチケット渡して、もし日が空いていたら見に来て欲しいと伝えた。ガセでも、スカウトと言いファンといい、こういうファンのつき方は、恐らく生涯で初めての経験である。

ビジュアル系バンド

自分の高校時代のバンド人生の中で、社会人になってプロを目指していたバンド活動に最も近いのが、レディースルームというバンドのカバーバンドをやっていた時である。

 私は高校で軽音楽部に入る、同じく部に入部したベーシストのOが、「中学時代の同期とバンドを組みたいが、ギターとドラムがいないから手伝ってくれないか」と声をかけてきたのがきっかけだ。とにかくドラムを叩きたい私は、即快諾。初めての本格的なバンド活動が始まった。

 ギタリストは、音楽雑誌のメンバー募集で見つけた、地元のギタリスト。実は、そのギタリストも、うちの高校に同級生が進学していたらしく、またその元同級生もギタリストという奇跡的な繋がりがあることが分かった。後に元同級生Tは、私と同じクラスメートになり、一緒にXジャパンのカバーバンドをすることになる。

 メンバーが全員揃ったところで、早速本格的に練習を開始することになる。メタルのドラムばかりをカバーしていた私からすれば、レディースルームのカバーは、それ程難しくはなかった。曲も覚えやすく、ボーカルもハイトーンボーカルで親しみやすい。

 何といっても、叩きやすく簡単なフレーズの場合は、ライブをしていても余裕が出て、間違えるかどうかなどの不安もないので、文字通りやっていて楽しい。このバンドでは、レディースルーム以外のカバーは一切やらなかったので、アメリカで見た「トリビュートバンド」というものに非常に近い。

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