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初めてのレコーディング
中学3年の頃からバンドに関わってきたが、レコーディングスタジオでお金を払ってレコーディングをするのは、名実ともにアメリカで行ったものが初めてである。
練習スタジオ内で、ウォークマンやスタジオ内のPAを通した一発録りは、何度も経験があるが、正式にレコーディングやマスタリングを行うのは、この時が初めてである。
アメリカには、日本のような練習スタジオが殆どないと前述したが、レコーディングスタジオの方が目にする。多くがホームスタジオで、レコーディングエンジニアが自前のスタジオを作っていることが多い。
ミュージシャンズ・アトラスという冊子が売られており、そこにはプロではないミュージシャンでも、プロと同じだけのプロダクションが可能となる、全ての連絡先が記されている。
レコーディングスタジオだけでなく、マネージャーや弁護士、レコードレーベル、ブッキングエージェントなど、本当に全てである。この冊子を元に地元にあるスタジオやその関連のものを探した。
レコーディングのスタイルには、アナログとデジタルの2種類が存在する。初めてのレコーディングで使用したのは、アナログレコーディングである。
アナログとデジタルの違いは、色々とあると思うが、誰でも分かるような特徴比較を上げるとすると、デジタルは間違えた箇所を後でコピペが可能である。アナログの場合は、一度間違えると、間違えた箇所の前後にかけて、もう一度同じフレーズを演奏し上書きする。
アナログの場合は、1曲の中でのサビが4回出てくるとすると、プロであれば、全てのサビが微妙に違って聞こえるはずである。
しかし、その繰り返し部分をデジタルなら全てコピペをすることができ、全く同じ仕上がりに出来るというのも特徴である。
アナログは、失敗した時の修正が面倒ではあるが、音質的にはデジタルよりも優れてはいる。
プロのエンジニアが聞くと、デジタルでコピペを沢山しているのが分かってしまうと言う。素人には全く区別がつかない。
レコーディングを初めてする時は、誰でも緊張するだろうと思う。しかし、ドラム以外のパートは失敗しても心配することはない。あとで録り直しが簡単にできるからだ。
レコーディングでは、最初に、ドラムのパートを録り終えてしまう。そのパートを録音するために、他のパートも一緒に演奏はするものの、全て仮の音入れで、後で全て本録りする。
ドラムだけは、ドラムの部屋で録音しなければならないが、ギターやベースは、エンジニアの隣に座りながら弾けたりするので、寧ろ緊張もほぐれるだろう。
レコーディングを終えてミキシングルームで完成した曲を聞くと、非常に質の高い録音を聞けるのだが、それをCDに落として車のステレオで聞くと、途端にボリュームが小さくなった様に聞こえる。
何故そのように聞こえるのかというと、マスタリングという作業をしていないからである。
レコーディングのマスタリングは、録音された音楽や音声の最終的な音質調整とフォーマット変換を行うプロセスである。マスタリングには、いくつかの作業項目があるので、参考までに書き留めておく。
イコライゼーション(EQ): 各周波数帯域(低音域、中音域、高音域)のバランスを整えるためにEQを使用することにより、特定の楽器やボーカルが埋もれないようにし、全体の音がクリアでバランスの取れたものになる。特定の周波数が過剰に強調されている場合や逆に不足している場合、それを補正する。例えば、低音が強すぎる場合は低周波をカットし、高音が不足している場合は高周波をブーストする。
コンプレッション: コンプレッサーを使用して、音量の変動を抑えることで、全体の音量が均一化され、特定の部分が突然大きくなったり小さくなったりするのを防ぐ。コンプレッションによって音の持続時間を長くし、サステイン(音の長さ)を強化することにより、音楽の流れがスムーズになる。
リミッティング: リミッターを使用して、特定のピーク(音量が非常に高い部分)を抑え、全体の音量を上げてもクリッピング(音割れ)が発生しないようにする。最終的なマスターの音量を最大限に引き上げ、楽曲が他のプロフェッショナルな録音と同じレベルで再生されるようにする。レコーディング直後に車のステレオで音量が小さく聞こえたのは、この作業が未実施だったからである。
ステレオイメージング: ステレオイメージャーを使用して、音の広がりや定位を調整する。この調整を行うと、音が左右のスピーカーにどのように配置されるかを制御し、より広がりのある音が完成する。ステレオイメージングを調整する際に、モノラル再生時の音質も確認することで、モノラル再生でも音が失われないようにする。
ノイズリダクション: 録音時に入った不要なノイズ(ヒスノイズ、クリック音、ポップ音など)を取り除くことで、クリアな音質を実現する。
アーティファクトの修正: デジタル録音時に発生する可能性のあるアーティファクト(不自然な音や歪み)を取り除く。
ラウドネス正規化: 楽曲のラウドネス(音の大きさ)を測定し、標準的なラウドネスレベルに調整する。これは、ストリーミングプラットフォームや放送基準に適合させるために重要となる。
ゲイン調整: トラック全体の音量を細かく調整し、曲の各部分(イントロ、バース、コーラスなど)が適切な音量バランスを保つようにする。
サウンドチェック: スタジオモニター、ヘッドホン、車内スピーカー、スマートフォンなど、異なる再生環境で音量と音質を確認し、どの環境でも最適な音量レベルが保たれるようにする。
リバーブとエコーの調整: 録音されたトラックに適切なリバーブを追加し、空間感を強調します。ただし、過剰なリバーブは音を曇らせるため、慎重に調整する。必要に応じてエコーも追加し、音の深みや広がりを強調させる。