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浪人完敗
はれて浪人が決定した私は、予備校の手続きをさっさと済ませて、大学進学に失敗したことを嘆くより、予備校に通うことを待ち遠しく思っていた。なぜなら、現役時代は、千葉の校舎に通っていたのだが、浪人の時は、千駄ヶ谷の校舎に通うことにしたからだ。
高校受験で都内に進学したかったと言及していたのは覚えているだろうか? まさに落ち武者になって、ささやかな夢が叶ったのだ。しかも、千葉校舎で学んでいる時は、有名講師のクラスはサテライト授業でしか受講できなかったのだが、千駄ヶ谷校に入学すれば、通常クラスの時に有名講師のクラスを受講することが出来る。それも浪人生活を期待する要因の一つだった。
有名講師のクラスをサテライトで受講したものもあるし、そうでないのもある。すべての有名講師が自分に合うというわけではない。とにかく試してみるしかない。逆に言うと、自分で選んだものを受講できるのは、自由度が高くて好きだった。
今後悔しているのは、大学受験科コースのようなものに入学し、後は他の予備校で単科クラスを受講していた。コースにした方が安いのかもしれないが、各教科自分に合う先生を1名ずつに絞っても良かったと思った。
結局、全てが覚えられるわけがないからだ。今日学習して納得はしても、翌日になれば8割方忘れてしまっている。読書にしてもそうだ。じっくり内容を理解しながら読んだのと、速読で読んだものを比較すると、読破後に記憶に残っている内容やその量は、それ程変わらない。じっくり内容を理解しながら読んでも結局その多くを覚えられないとすれば、出来るだけ多くの書物を読みたい。
初めて都内の教室に行ったわけだが、どう見ても自分のアウェイ感は否めない。私が千葉の教室に行っていれば、高校の同級生もそこにいる。同じことが都内の教室でも起こっているのだ。私は、当時人見知りする性格だったので、自分から話しかけるような人間ではなかった。和気あいあいと「久しぶり」感を出して、懐かしむ人たちの中に飛び込む程の勇気も気力もなかった。
しかし、これは想定の範囲内である。友人を作ってしまうと、勉強をしなくなってしまうだろうという自分の弱さを認識したうえで、誰も知り合いがいない場所へ飛び込んだのだ。