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帰国の決意
17年のアメリカ生活には名残惜しいこともあったが、それ以上に「このままではいけない。
自分が目指す成長を具現化しなければならない」という思いが離婚後非常に強くなり、その思いが自分自身を突き動かした。
結婚当初は帰国という選択肢を断念した。
それは、前妻が帰国を頑なに拒んでいたからだし、その理由も理解できたからだ。
しかし、人間とは国籍関係なく、一人の人が上手くいくやり方を別の人が同じように実行しても、上手くいくとは限らない。それが個性であり、人生というものである。
よく「人生何が起こるかわからないから面白い」という人はいるが、私から言わせてもらうと、それはただ辛いだけでちっとも面白くない。
ただ、良くないことが起きた時にいい形で切り抜けられた人だけが、暫くたって「面白い」と思えるものだ。
上手く物事が進んだ人でさえ、上手くいった瞬間にその感覚を得ているわけではないと思う。
帰国の決意には、離婚を決意できたこと、英語を言語ツールではなく武器として成長を後押しさせたいという思い、自分の仕事のレベルが稚拙に感じていたこと、不動産を持ちお金の流れを学びたいと思ったこと、アメリカでの医療費が高額で将来的に破産するだろうと思えたこと、場所を変えれば運気が上がると思ったことなど、様々な理由がある。
しかし、その裏にある唯一の思いは、17年間で上手くいったという感覚が一度も掴めなかったことに対して、「自分は自分の持っている才能を活かす上で、全く違う場所にいる」と感じたことだ。
結婚をした多くの人が結婚に対する否定的な念を持っている。
価値観の異なる二人がずっと一緒にいるのだから、ぶつかって当然だし、それを受け入れられない性格であれば、結婚という状態は地獄絵図に見えるかもしれない。
しかし、一旦「結婚」という枠に縛るから否定的な念が出てくるだけで、この世界から結婚という制度が廃止され、誰の子供を産もうが社会が認めて支援し、子育てする親たちを支援する、一人に縛られない恋愛が常識となる世界になったとしたら、人は苦しみから解放されるのではないだろうか。
結婚は決して悪いことではない。
お互いを認め合い、許し合い、尊重し合う二人が出会い一緒に時を過ごすこともある。
マッチングしていない二人がマッチングしたと思い結婚する場合もあれば、相手の経済的、社会的な要素だけを理由に結婚することもあるだろう。
ただ、上手くいっていないと感じるのであれば、「あなたは違う場所にいる」と思えばよい。違う場所にいるなら、いるべき場所へ移動するべきだ。
その移動を社会の法則や家族が妨げていることが世界中で起きているのだ。
だから人は憎しみ合い、自分のプライドをかけて他人を傷つけていく。
日本への帰国に当たり解決しなければならないことがいくつかあった。
まず、結婚生活を継続していた頃の家を出て、一人で十分な場所を探すこと。
見つけた場所へ引っ越しをすること。
戸建てからアパートへ引っ越すにあたり、多くの荷物を廃棄すること。
日本での転職先を先に見つけること。
見つかったら、全ての荷物を廃棄し、帰国の荷物だけに整理してアメリカを飛び立つこと。
飛び立つ前に銀行口座の整理をすること。
予定通りにいけば、一つずつ解決していけるだろうが、人生というのは計画通りにはいかない。
テンパりそうだったが、とりあえず冷静になり、一つ解決してから次に着手することに決めた。