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アメリカでのライブ活動
今はどう呼ばれているか分からないが、私が日本でバンド活動をしていた時、ライブを行う小さな箱の会場を、ライブハウスと呼んだ。
この呼び名は英語ではない。アメリカでは、「ヴェニュー」と呼ぶ。
また日本でもライブの事を「ギグ」と呼んでいた。英語で書くと「GIG」だが、これはアメリカでも使われていた呼び名である。
日本のライブハウスでのライブとアメリカでのそれは、多少慣例が異なる。日本では、ブッキングした後、販売チケットのノルマが課せられていた。チケットが売れなかったとしても、指定された枚数のチケット代は払わなければならない。
一方、アメリカでは、ノルマを課されることはない。販売したチケットの6~7割はバンド側に戻され、3割のみヴェニューが取る。
この違いはいったいなぜなのか? 少なくともアメリカの場合は、来場客は必ずビールを1本は買う。
1本凡そ7ドルくらいで販売されている。1本のコストは、1ドルくらいなのだ。来場数x5~6ドルの利益という掛け算になる。
ノルマを課さないのは、サービスの一環と考えてよいだろう。
アメリカのライブヴェニューは、一般的に集客力のあるバンドやアーティストを呼ぶことで観客を集めることができる。バンドが自らチケットを販売せずに、ヴェニュー自体が集客の責任を負うことになる。
チケットの手売りノルマを課さないことで、バンドはより音楽活動に集中でき、より良いパフォーマンスを提供できるようになるだろう。これが結果的に観客の満足度を高め、ヴェニューの評判にも繋がっているわけである。
チケット販売分の6~7割をバンド側に渡すことで、バンドは積極的にチケットを販売する動機付けがされるのだ。このインセンティブはバンドが自らのファンベースを拡大する手助けとなり、長期的にはヴェニューにとっても利益となることは言うまでもない。
アメリカでは、インディーズバンドや新人バンドのサポート体制が整っている場合が多く、ヴェニューやプロモーターがバンドの成長を支援する文化があり、バンドが自力で成功する機会が増えると言える。
アメリカには多くのライブヴェニューが存在し、競争が激しいため、バンドに有利な条件を提供することで優秀なアーティストを引きつける必要がある。ノルマを課さずに収益の一部をバンドに還元する方が、長期的にはヴェニューにとっても利益となるため、短期的な薄利を許容しているのだろう。