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初めての化粧
自分のバンド人生の中で、一番躊躇したのが化粧をすることだった。Xジャパンは好きだったものの、自分が化粧をするという想像はしたことがなかったし、そもそも一度もやったことがないため、下手な化粧をして皆の前に姿を見せるのに躊躇していた。
不思議とそんなことを考えていたのは、バンドのメンバーの中で私だけだった。他の4名は寧ろ、メイクをしたくてライブをブッキングしているくらいの勢いがあった。
メイクに抵抗があった私は、初めてのマザーズという会場でのライブでは、メイクをしなかった。そうなると、バンドのメンバーが3名でドラムがサポートメンバーに見えてしまう違和感が出ることが分かった。
そこで次のライブからは、メイクをすることにした。自分ではできないため、他のメンバーに化粧をしてもらうことにした。女性が普段使いで行う化粧とは多少異なり、ビジュアル系バンドでの当時のメイクは、一部分にアクセント入れるような極端なメイクが多かった。
例えばアイライン。普段使いのアイラインであれば、そんなに太いアイラインをつけないと思うが、バンドの場合、目を大きく見せるためにも、アイラインを太めに描く。
また顔も正直真っ白だ。デーモン閣下程ではないにしろ、女性が普段するファンデーションとデーモン閣下の中間より閣下寄りくらいな白さだ。
それに髪の毛を「ダイエースプレー」で固めていく。髪の先っぽをクルッとカールさせて固める。それをいくつも作ることで、ワサワサした髪を作り上げていく。最後にカラースプレーをかける。私は紫だったようなきがする。誰が何色カモ覚えていないが、とにかく前面にスプレーをかけてしまう。
メイクを完成させると、誰がメイクが映えて、誰が映えないかが良くわかる。少なくとも私は映えていたように思う。女性のような顔になった。メンバーの中でも、メイクをしたものの明らかに男であるメンバーいた。この仕上がりを見て、メイクって面白いなと新たな興味も生まれた。
さて、問題は移動である。メイクがライブハウスの楽屋でできれば一番いいのだが、素人バンドが、対バンもいるライブハウスの楽屋に入って全員分のメイクを時間通りに終わらせられるわけもない。だから、メイクはメンバーの家で集まって終わらせ、衣装にもそこで着替え、その格好のまま、公共のバスに乗るのだ。もちろん、周りからじろじろ見られるので恥ずかしさもマックス。しかし、そう思っていたのは私だけで、他のメンバーは、普段と変わらない振る舞いだった。