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ブレイディみかこ著『R•E•S•P•E•C•T』を読んで思うこと

「少しばかりのリスペクト」

リスペクト。
いつもそう思っていた。

「どうせ暇なんでしょ」
「旦那さんがいないと何もできない」
「自分で考えることができない人」
「働かなくていいご身分」
時折そんなふうに
他者からあからさまな態度を取られる(と思い込んでいる)私は、
相手に対して、
謝罪して欲しいわけでもなく、
何かを与えて欲しいわけでもなく、
ただ、
「最低限のリスペクトが欲しい」と思っていた。

そして、この本に出会った。


ブレイディみかこさん

この本は、英国で紆余曲折ありつつも、
子供を育てながら、
在英日本人作家として主にノンフィクション作品で大ブレイクした
(代表作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』など)
ブレイディみかこさんの小説だ。

この本は、2014年に実際に起きた占拠事件をもとにした物語。
若年層ホームレス・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが、
地方自治体の予算削減のために退去を求められ、
連帯して立ち上がり、公営住宅を占拠する。
占拠した住宅には賛同者が集まり、連帯の輪が広がる。
取材に来た日本人記者とその元恋人も登場し、
相互扶助の中で生まれるヒューマニズムが描かれている。


この時代にアナキズムを提唱する作家も珍しいが、
ロックで豪快なブレイディみかこさんに惹かれる人たちは決して少なくない。

なぜなら、彼女は叫んでいるから。

英国の政府の問題点。
社会問題に対する批判。
相互扶助の提唱。
これからの本当のアナキズム。
エンパシーの重要性。

彼女は声を大きく叫んでいて、その姿は私には眩しく写った。

自分だった

リスペクトされたい、なんて言いながら、私は何をしているんだ?
その問いを彼女の書くものを読むたびに思い知らされた。
そして気づいた。

私は、自分自身をリスペクトしていない。

自分をリスペクトせず、
自信なく日々を過ごしている人が、
誰からリスペクトされるというのだろう。

私の尊厳を奪っているのは私自身だった。

長いものに巻かれて、
自分を見失って。
目立たないように黙って。
周りに同調して。
キョロキョロ周りを見渡して。
ビクビク怯えながら、
悪いことや不安なことが通り過ぎるのを待っていた。

こうして自分の記事を書くことも一つではあるのだから、
きちんと向き合うと誓い直すことにする。

「超人手当」

リスペクトされたい、というのは、
ただ大切に思われたいというわけではなくて、
私の権利を認めてほしいということだ。

無職で、夫の収入を当てにして生活していると、
どうしても「いいご身分」という見方をされている気がしてしまう。

時々SNSで「専業主婦」がトレンドになるのは、
たいてい、専業主婦への批判である。

専業主婦であることは、肩身の狭いことだと感じるのは、
私だけではないと思う。

専業主婦は、主婦業を専門に働く女性なのだから、
本来なら大手を振って歩いていいはずである。

むしろ働きながら子育てをして、家事もして、
という人の方が「超人」であって、
「超人手当」をもらうべきである。

いわば大谷翔平のように、「人生の二刀流」をこなしているわけだから、
収入もそれ相応であってもいいとすら思う。

尊厳を守ること

この小説に出てくるシングルマザーたちだって、
望んで貧乏になったわけではない。
生まれ持ったものもあるし、運もあり、
誰にだって彼女たちのような生活がいつか訪れる可能性があるのである。

「収入がないのなら地方へ」という政府の言い分も、
簡単に納得してしまう人もいるのかもしれない。

しかし、彼女たちは、
知らない人ばかりの土地に行きたくないと主張する権利を持っている。

そして、エッセンシャルワーカーである人々の収入が低すぎて、都市部に住めない状態は本当に正しいのだろうか。
(高収入の人ばかりを優遇する政策を「ジェントリフィケーション」というらしい)

リスペクトが欲しい、という気持ちは、
「人権」「人間の尊厳」を主張することだ。

思考停止

作中、英国へ派遣された日本人記者のシナコが、
極めて閉鎖的な自分の所属する会社に嫌気がさしながらも、
やはり「自分で考えるのをやめ」かけてしまっているのが、
とてもわかりやすかった。

思考停止。お上や会社に従えば、なんとかしてくれるだろう。
そんな考えの人は、たくさんいるように思える。

でも、私は、誰かに洗脳されたり、誰かの言いなりになって、
自分の考えを無くして、そのうち尊厳もなくすようになるのは
絶対に嫌だ。

だから、考えて、行動しなければならない。

おかしいことには、おかしいと言わなければいけない。
同調したり、人任せにしたって、最後に苦しむのは自分だ。
自分の尊厳は自分で守らなければいけない。


関連映画

この話と繋がりを感じる映画に、
「わたしはダニエル・ブレイク」というものがある。

英国の貧困を描いた映画で、
これもまた、高齢者や、
貧困に苦しむ人たちの尊厳を主張する内容になっている。
とても切なく、苦しいけれど、とても良いのでおすすめです。


アレサ姉さん最高

表題になっているアレサ・フランクリンの曲
「Respect」もとてもいいですが、
アレサ・フランクリンなら、
ブルースブラザーズのこの動画をぜひみてもらいたい。
めちゃくちゃ格好良くて何度も見ました。

I need you , you need me
Without each other, there ain’t nothing people can do!
Think!

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