応用情報に合格しました 【令和4年春期】
この度令和4年春期(2022年4月)の応用情報技術者試験を受けて合格しました。せっかく受けたので受験の経緯や対策をまとめてきたいと思います。
なぜ受けたのか
なぜ私はいま応用情報を受けたのでしょうか?
というのも、応用情報は情報系で真っ先にあげられるようなメジャーな試験のため、自主的に資格を取るほどにやる気のある同世代の人たちは、時間のある学生時代に既に応用情報を取っていました。ただ私の場合は「自分のキャリアプランを考えたとき就活や転職で応用情報資格が評価されることはほとんどないだろう」と思っており、わざわざ受けようとしてきませんでした。この考え自体は今も変わっておらず、今後も自分のキャリアで「応用情報を持っているから評価される」という場面はあまりなさそうな気がしています。
ただ、毎年春と秋になるとTwitterなどに基本情報や応用情報の合格報告が大量に流れてきて、その度に何か心の片隅で1%くらい引っかかるものがありました。よく考えたら「自分には必要ない」と言いながら、それが一体どんな資格なのか、自分が既にその知識やスキルを持っているのかどうか何も知りませんでした。持ってない人が「そんな資格使わないよ」などと言っても全く説得力がありません。そのモヤモヤは非常に小さいものでしたが、私の精神をほんの少しずつ削るものでした。私はそのモヤモヤから解放されるために試験を受ける必要がありました。
また別の理由として、最近リモートワークの終業後に家でゴロゴロして特に何もせずに寝るという生活習慣に落ち着きつつあったので、何か目標を作って勉強の習慣をつけたいという思いもありました。遂に私は思い立って応用情報を受けることにしました。
応用情報技術者試験とは
今さら私が語る必要もありませんが、応用情報技術者試験は情報処理推進機構が開催している国家資格の一つです。試験のレベル的には「基本情報」→「応用情報」→「専門分野別の高度試験(データベース、ネットワークなど)」という感じに上がっていくそうなので、「技術者として基礎的なトピックは幅広く押さえてますよ」と胸を張って言えるようになるくらいの試験です。
ただ、合格率は20~25%, 必要な勉強時間は200時間と言っているサイトもあるので、簡単な試験ではないと言えます。
試験は午前・午後に分かれていて、以下の構成です。それぞれ6割得点すると合格になります。
勉強法
教材
試験日は4/17でしたが、私が試験に申し込んだのは1/26で、その翌日くらいに本屋に行って参考書を買いました。
この2つは同じ系列の参考書と過去問で、どちらも本屋にいけば一番前に置いてあるような有名なものです。他にも定番とされる参考書はいくつかありますが、後述するように個人的にはこのシリーズが好みでした。この2冊以外には特に書籍は買っていません。
さらに、以下のサイトで隙間の時間にちょっと過去問をといてみたりしました。
過去問の解説が非常に丁寧に載っていて、使用感もよかったので非常におすすめです。
勉強内容
私はフルタイムで仕事をしているので勉強できるのは平日の終業後と休日です。平日は平均して大体1時間前後、休日は一日中勉強に使える日と予定があって何もできない日があるので、平均すれば3時間くらいの勉強時間でした。これをおよそ2ヶ月やったので総勉強時間は80時間くらいだったかなと思います。
参考書を読む
まずは半月くらいかけて参考書を一通り読みました。前半部分は大まかには知っている内容も多かったですが、後半のマネジメント系(非技術系)は初見の内容が多くて一度読んだくらいではとても覚えられませんでした。
上で紹介した参考書(合格教本)の特徴として、過去に出題された用語が、注釈のような形も含めて可能な限り掲載されていることがあると思います。かなり網羅されているので、「いざ過去問をといてみたら教材に載っていない全く知らない単語が出てくる」という状況は少なかったです(無いとは言ってない)。
ただ、本番の試験では様々な種類の用語が脈絡なく出題されるので、全用語を拾おうとするとある程度体系的な説明を諦めなければいけません。実際に参考書の11章などは色々な概念の説明の寄せ集めのようになっていた気がします(これは教材が悪いのではなく出題内容の影響な気はしますが)。
個人的には、多少説明に飛躍があっても説明が載ってないよりはましだと思うので、この参考書は結構好きでした。
参考書を読んでいて苦労した部分として、情報系の試験に共通する話かもしれませんが、アルファベット3, 4文字の略語が異常に多いというのがありました。
実際の試験でも、例えば以下のような問題がいくつも出題されます。
こんな問題、知っていないと答えようがありません。こういった部分を補強するために私は、参考書の後ろにある索引のアルファベットの部分を順に見ていって、わからない単語を逐一復習する作業をしたりしました。
また、各単元の内容をノート(iPad)にまとめる作業もしました。内容が多くて全部まとめるのは大変なので、とりあえず単語を羅列し、後から順に見て説明できないものを復習するというスタイルにしました。
過去問を解く
参考書を読み終わった後は過去問を解きました。上の過去問集は、紙面に載っているのは4回分ですが、追加で過去19回分のPDFをダウンロードすることができます。私は
紙面の4セット
PDF1セット
参考書の後ろに載っている予想問題
で合計6セット分くらいを解きました。午前問題は解説を読むのも含めて1回分を2時間、午後問題は大問1つにつき20分くらいで解き進めました。
さらに、午後問題の第一問(セキュリティー)は必答で避けられないので、練習のため過去問を遡って追加で4セット分解きました。
試験が近くなってきたら、午後問題の問題選択も意識するようにしました。具体的には、午後問題の1セット10問のうち、どれを選ぶかを考えながら解くようにしました。
また、過去問を解くのと並行して、過去問でわからなかった部分を適宜参考書で確認したり、知識の薄い9~11章あたりを読み直したりしました。
応用情報に限らず、試験勉強で最も力を入れるべきなのは過去問だと思います。なぜなら、結局のところ試験は「教科書をどれだけ暗記できたか」などではなく「問題が解けるかどうか」によってのみ評価されるものだからです。
たいてい問題には傾向があり、出題されやすい分野があります。午前問題は過去問がそのまま出ることも多々あるので言うまでもないですが、午後問題にも出されやすい問題形式や知識があります。参考書には膨大な情報が等しく説明されており、どこに注目すればいいのかが見えてきません。参考書を何度も読み直している暇があったら代わりに過去問を解き、一度解いた問題を本番で間違えないようにするための復習をする方が効率的だと思います。
午後の各分野に対するコメント
応用情報は午後試験に関していえば大問が11個ありそのうち5問を解きます。
それぞれの分野は違った特徴を持っているので、解きながら自分が思ったことを雑多に書いていきます。
大問1:セキュリティ
大問1は必答問題なので選択の余地がありません。用語など知識もよく問われるので、参考書や過去問で多めに勉強しておくと良い気がします。
大問2:経営戦略
大問9, 10と並んで最も知識の必要ない問題といえそうです。比較的解きやすいことが多いので個人的には狙い目だと思いますが、記述がやたら多くて難しいドボンの年もあります。正直大問9, 10との違いがあまりわかりません。
大問3:プログラミング
アルゴリズムを理解し、手書きコーディングをさせる問題です。日常的にコードを書く人、特に競技プログラミングの経験があるような人は確実に点が取れる問題と言っていい気がします。
大問4:システムアーキテクチャ
アーキテクチャと言いつつ計算問題が多くの割合を占めています。問題によってはかなり計算が煩雑でミスを誘うようなものもあるので、個人的にはややリスキーかなと思いますが、文章を書くより計算の方が得意な人は選ぶと良い気がします。
大問5:ネットワーク
「会社のネットワーク構成を変えたい」みたいな問題設定が多く、ネットワーク関連の知識がわりとしっかり問われる印象です。参考書に載っている内容から一歩進んだような問題も多く、普段あまりネットワーク系に触れていない人は頓珍漢な解答をしてしまう危険があると思います。
大問6:データベース
E-R図の解読とSQLの穴埋めが多くの割合を占めます。SQLを日常的に書く人からすると解きやすいとは思いますが、重箱の隅を突くような構文が出ることもあるので油断できません。SQLに馴染みがないと苦労しそうです。
大問7:組込システム
いくつかの機能を持つシステムの挙動、状態遷移や例外などを問われます。知識はほとんど求められず、問題のシステムが何を目的としてどう動くかを丁寧に追えれば解けることが多い気がします。計算系が多く記述は少なめな印象です。
大問8:情報システム開発
大問7とだいたい同じです。たまに「アジャイル開発とは」みたいな問題が出てびっくりします。
大問9:プロジェクトマネジメント
チーム開発、プロダクト開発の流れを読み解く文章題です。いくつか用語を除いて知識は不要なことが多いです。
大問10:サービスマネジメント
大問9とほとんど同じです。
大問11:システム監査
一見こちらも単なる文章題に見えますが、監査問題のお作法(例えば「編集権限と承認権限が同じ人についていてはいけない」「監査員が具体的に改善内容を指示してはいけない」など)を覚えて、そこに着目して読み進める練習が必要です。問題文の長さと解答する量がともに少なめな印象がありますが、シンプルが故にわからない時はもうお手上げになります。
どの問題を選択すべきか
応用情報の午後試験は150分間で、11問のうち5問解かなくてはいけません。その中には解きやすい問題と解きにくい問題が潜んでいて、その差はかなり大きいです。
自分が解いた際は、1問に平均して20分ほどかかったので、時間内に解けるのは多くて7問程度と言えます。それぞれの問題文は非常に長いため、難易度を判断するにもある程度しっかりと目を通す必要があり、全てをチェックするのは困難です。
もし仮に解きやすい問題がどれか事前に教えられていたなら、合格率はかなり上がるでしょう。つまり、問題選択がかなり合格に大きな鍵を握っているのです。試験中に慌てないためにも、問題選択の戦略はある程度持っておくほうが良いです。
私は、問題選択の方針を以下のように決めて臨みました。
第一問を先に解く
大問3, 4, 5, 6のうち、自分が圧倒的に自信のある分野があれば迷わず解く
大問2, 7, 8, 9, 10, 11のうち、問題文が短い & 記述解答が少ない問題を優先的に解く。
まずStep 1, 2ですが、制限時間の厳しい試験では迷いのなさと精神的な余裕が重要です。大問1は必ず解かないといけないので、先に解いて潰しておきます。
大問3~6に関してはそれぞれの分野に特化した知識問題が含まれる傾向にあるので、過去問を解いてみて「この分野はいける」という自信がある問題は迷わず解き始めていてみるのがいいと思います。自分は大問3にかなり自信があったので他の問題を見ることなく先に解きました。これによって、問題選択を迫られる前に5問中2問を倒すことができました。
また、逆に大問3~6ではなるべく避けたい問題も決めておくのがいい気がします。私は過去問を解いて大問4, 5があまり得意ではなかったので、本番でもおそらく解かないだろうというつもりで臨みました。
これが終わったらStep 3です。大問2, 7, 8, 9, 10は、正直あまり事前知識が要らず、文章を丁寧に読み解くことが求められる問題です。誰でも解けるチャンスがある反面、厄介な問題を引き当ててしまう恐れもあります。
私は、問題文の長さと記述回答の多さを判断の目安として使えるのではないかと思っています。
問題文が短ければその分読解にかかる時間も減り、選択する / しないの判断も早くつきます。また、抜き出し問題があったときに問題文が短い方が探索範囲が少なくて有利というメリットもあります。
また、午後問題は採点基準が公開されていません。よって、記述解答は想定された通りの解答をしないと点が引かれやすいかもしれないというリスクがあります。一方、記号や単語で解答する問題はそのようなブレが少ないです。よって、解答欄をざっと見て記述が少ないものはチャンスになる可能性があります。
もちろん、実際に解き進めてみて「思ったより解きづらい」ということは起こり得るので、その時は速めに捨てて次の選択肢に移るのが良いと思います。
本番当日 〜 合格発表
本番当日、大教室に座ってマークシートの試験を受けるのは学部以来だったのでなんとなく懐かしい気分になりました。
午前試験は70分くらいで一通り解き終わり、丁寧めに見直ししました。前半に骨のある問題がいくつかあったので少し慌てましたが、午前は時間に余裕があることはわかっていたので迷う問題は飛ばして後から戻ってきて解きました。
午後問題は、当初から決めていた通り大問1, 3を何も考えずにまず解きました。その後全体を見て、大問7, 8が比較的記述解答が少なくて解き易そうだったのでそれを解きました。あと一問となって、回答欄がシンプルそうな大問11を解こうとしましたが、意外と解きづらかったので途中で諦めました。大問2, 9, 10は記述解答ばかりで危うく見えたので、自分のSQLスキルに賭けて大問6を解きました。それが意外とできたので、この4つに確定して残り30分ほどは見直しをしました。
本番終わった後の時点で、午前午後ともまあ合格に必要な点は取れたのではないかという手応えはありました。試験後にすぐ午前の選択問題の解答が公開され、自己採点では合格点を超えていました。午後試験に関しては記述解答をどう採点されるかが定かではなかったので、合格の確証はありませんでした。
結果が通知されたのは約2ヶ月後の6月中旬でした。結果を見ると…
無事合格していました!!
午前は9割近く取れており、ややオーバーキルしてしまった感があります。午後は思ったより点が伸びていない感じもしますが、余裕を持って6割を超えていたのでよかったです。
まとめ
技術者として働いているとつい業務に関係ある知識に偏ってしまいがちですが、応用情報は広く浅くいろいろなトピックが網羅されているので、勉強をしたことで「情報系の基本的なトピックは押さえたぞ」という安心感がありました。
何より、これでもう応用情報を受けるか迷わなくて済むのは嬉しいです。余裕ができたらデスぺ、ネスぺ、セキスペなどの高度試験にもトライしてみたいなと思っています。