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一枚の自分史:グラウンドゼロで祈る
2015年10月27日、65歳の秋のこと
ニューヨークの国連本部の国際学校で日本語を学んでいる中学生たちに
絵本を作る講座を質問の師匠がやることになってアシスタントの募集に応募した。
そして、グラウンドゼロに行ってきた。
アメリカ同時多発テロ事件の標的になったニューヨークのワールドトレードセンター( WTC )の跡地には博物館と記念碑のプールが 完成していた。まだ建設途中の建物もあった。
ニューヨークにいるなら行かなきゃならない…。
ずっと心に引っかかっていた。でも、行くと何か起こりそうで怖かった…
あなたは行かない方がいいよと言われた。でも、行かなきゃ…。
仲間たちが行くというのでついて行った。
案の定、地下鉄の乗り換え駅のエレベーターの中では焼けるような異臭を感じた。ワールドトレードセンター駅に近づくにつれて激しい渇きを覚えて、寒くてきぶんが悪くなった。
何処かで待っていたらどうかと仲間には言われても、行かなきゃいけない自分がいた。
階段を上っていると、悲しみが降ってきた。
地上に出たら、悲しくて、悲しくて号泣して動けなくなった。
ガイドらしき男性が「早く水の流れているところに連れて行ってあげなさい」と話していた。
記念碑のプールに着くまで、「戦争をやめて!戦わないで!」の声が響く。
プールには大量の水がそこに向かって流れていた。浄化の水流だ。
やっと落ち着いた。立ち尽くし、ただ平和を祈った。それしかできなかった。
行けてよかった…。
あそこまで行けたこと、一緒に行ってくれた仲間に感謝しかない。
ニューヨークを訪れた時は戦後70年、戦争が決して過去のものではないということを目の当たりにした。
20年前、テレビの画面で見たあの瞬間が目に浮かぶ。
アメリカ軍のアフガニスタン侵攻から20年、撤退と同時にタリバンが制圧。
20年は失われた。永遠に平和と自由は彼の地には訪れることはないのだろうか。
戦争はこの地上からなくなることはないのだろうか。
平和が多くの犠牲の上に成り立っていることを忘れてはならない。繋いでいかなければならないと改めて思う。
この経験を、自分史のどこかに置いておきたい。書けてよかったです。