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バングラデシュの現状

【紹介書籍】『990円のジーンズが作られるのはなぜ?』(2016年、合同出版)
著:長田華子


 この本のタイトルからファッション業界の話と思われる方もいるかもしれませんが、この本では開発途上国、主にバングラデシュでの労働環境について書かれている本です。こんなにも安くジーンズがを作ることが可能なのは、最低賃金以下で働かされることも珍しくない劣悪な労働環境で一日中働くことで作られた製品だからです。

 基本的な労働時間は毎朝8時から夕方の17時までで、休日は週に1日と定められています。しかし、それが守られていないところが多く、21時を過ぎても煌々と明かりが漏れ、ミシンの音が鳴り響いているのだそうです。また工場内は40℃近い室内で工員たちはキツキツに詰められ、一日中働いています。またバングラデシュでは義務教育は5年生までですが、縫製工員の中には小学校を卒業していない人が多く、学力がないために縫製所で働くしかないということが何代にもわたって続いているという負のスパイラルもあります。

 バングラデシュは世界最貧国の一つとされています。首都のダッカで働いている人の平均月収は約77000円ですが、縫製工員ではたらいている人はバングラデシュでの平均の給料よりも安く、1か月の給料は日本円に換算すると約4000円です。それでも工員たちの多くは、このわずかな給料の一部を実家に送金しています。このように実家に送金することは当たり前であるという風潮であり、夫の実家にも送金をすることも珍しくなく経済的に非常にひっ迫していることを意味しています。「パルダ」と呼ばれる女性を家族以外の男性の目から遮断するという慣習があり、女性の社会的地位が低く社会問題とされています。

 縫製工員の大半が女性です。また学歴が低く、地方出身者であり、寡婦や離婚者などの困難を抱えている人が多いという共通の特徴があり、貧しい状況から逃げ出したいという理由を持っています。また「カンタ」と呼ばれる刺し子を作る慣習があるために一通りの裁縫技術が身についており、女性は手先が器用で、忍耐強いというイメージが雇用者の側にあるのが縫製工場で女性が多い理由の一つとして挙げられます。また縫製工場では同じ境遇の女性とともに働くことができ、経済的に独立することで夫や家族から自由になることが期待できるため、女性にとって重要な働き場であることが働いていることが分かります。

 2013年に首都ダッカで5つの縫製工場が入るラナ・プラザという8階建てのビルが突然崩壊しました。このビルは商業用の建物であったが、ビルの所有者は違法と知りながらビルの建て増しをして、劣悪な環境の中に3639の工員が詰められたことによって、1137人もの死者が出る事件が起こりました。このようなに劣悪な労働環境は時に重大な事故につながります。しかし工場の経営者や所有者は政治家であるケースが多く、黙認されているケースが多くあります。このような悲劇を繰り返さないように国際的な運動も広がってきており、労働法の改正などがありました。企業が負うべき責任と労働者の人権というのをしっかりと理解し取り組む必要があり、先進国が率先して問題解決に取り組む姿勢を見せていくことが今後も必要であると思います。このように少しずつ前進しています。私たち自身も何が起きているのかを知り、何ができるのか考え取り組み始めることが必要です。




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