あなたも田舎暮らししてみない!?
【紹介書籍】玉村豊男(2007)『田舎暮らしができる人できない人』集英社
みなさんがもし「今、田舎暮らししてください」と言われたらどのように感じるだろうか。田舎暮らしと言われて1番の心配事は人付き合いではないだろうか。田舎には古いけど優しくて、温かい人間関係が生きている。「優しさと暖かさ」(p.132)をする田舎の人とされる都会の人との間のギャップが生じている。「トウモロコシやレタスも玄関の内側に置いてあったり、他人の家に黙って上がり込んでくる(p.136)」といったように田舎の人は人間関係に自由なところがある。また、「川のごみさらいなどみんなで共同作業をする行事があり、集合時間は午前5時と決まっている」(p.15)といったずっと前からある習慣などは都市生活者にとっては驚くことばかりであろう。
田舎暮らしブームに日をつけたのは団塊世代である。団塊世代を中心に田舎暮らしへの関心が高まっている。昔の田舎暮らしの実践者は地域住人とはあまり付き合わない、多くが変人だった。都会から田舎へ移住者を受け入れようという受け皿がなく、筋金入りのエコロジストだけだった(p.24)。また、田舎暮らしする初めのうちはご近所の方から得体の知らない余所者がなにをしでかすかと警戒される。「村のしきたりを守れないような者は来ないでほしい」(p.51)と言われることもある。しかし、限界集落が増え、地域の活性化のために田舎暮らし希望者への誘致を試みる地方自治体が生まれた。その流れをうけ田舎に住みたいと希望する年齢層は幅広く集まってきた(p.25)。最近では主導権が下の世代に移り、古い隣組制度にも新しい風が吹いてきている。転入者を歓迎することが寛大になっているのである。隣組以外にも新しい仲間を作り、境がなくなっている。
田舎のよさを感じ取るにはある程度の人生経験が必要だとされている(p.36)。若い頃は今ある日常から逃げたいことが多い。田舎生まれは農業への悪いイメージがインプットされ(p.36)と後継者はいらないと環境で育ち、都内生まれで田舎へ移住してくる人の姿に不思議さを感じる。しかし、そんな人も定年近くになると田舎の良さに気づく時が来るものだ。
田舎にもいろいろな田舎がある(p.87)。田舎暮らしのかたちは望む人の数だけある。田舎といっても軽井沢のようなリゾート地で外来者との付き合いがある地もあれば、全くそうではない地もある。ただ、共通して田舎に向いている人は「ひとり遊びができる」(p.117)かが鍵になってくるということだ。自由な時間と場所を与えられた時にやりたいことがあってできる人、何かを見つけて自分で自分の時間を潰せる(p.117)、穏やかな気持ちで文化と自然の両方を楽しめる人、目的がある人である。さらに田舎暮らしをマスターするには偶然の発見や人との出会いなど、さまざまな出来事や経験の積み重ねが必要になるp.42)。そうした経験を積まないと田舎の良さも本当の魅力はわからないのだろう。
団塊世代は田舎暮らしに私は火をつけた。私はこの本を通して、団塊世代ジュニアやそれ以降の世代の田舎暮らしはどのようなものになるのかが気になった
[ヤス]