アメリカ黒人史ー奴隷制からBLM運動までー
【紹介文献】アメリカ黒人史ー奴隷制からBLM運動までー ジェームズ・Mバーダマン 著 / 森本豊富 訳
黒人が奴隷として歴史に登場するようになったのは約400年前に遡る。その黒人史を扱ったのがこの一冊であり、ヨーロッパの植民地に奴隷として導入されるようになった初期の事柄から、近年のBLM運動(Black Lives Matter)以降の内容まで扱っている。また、黒人が「ジム・クロウ法」によってせべつされるようになった経緯が簡潔に記されており、アメリカ合衆国の黒人事情を初めて学ぶにはちょうどいい内容になっている。本書は全7章で構成されているが、以下では私が興味深いと思った章をいくつかピックアップして紹介したい。
第1章・2章、黒人が奴隷となり、アメリカ大陸で植民地を作ったヨーロッパ人に労働させられるという内容が記されている。1章ではなぜアメリカ大陸に植民地を作ったヨーロッパ人がほかの人種ではなく、黒人を奴隷として導入したのか、大型プランテーション内がどのような構造になっていたのかなど、奴隷としての日々の生活が細かく書かれている。
第3章はアメリカ南北戦争において、南北がそれぞれ黒人に対してどのような思いを抱いているのかを軸にしながら南北戦争を描いている。ここではアメリカ南部が黒人奴隷制を崩さない体制で、北部は奴隷を開放する体制をとっていた。アメリカ合衆国が北部と南部に分割されていたと同時に黒人に対する思想も異なっていたということも記されている。本章を転機に本章以降の章では南北での黒人に対する思想と共に、アメリカ内の地域ごとに黒人がどのような扱いを受けていたかが記されている。
第4章・5章、キーワードは「ジム・クロウ法」と「公民権運動」である。キング牧師が登場する1960年代を中心に話が進行する。この時期には奴隷解放後に成功し、裕福になる黒人たちが多くなる中、いわゆるジム・クロウ法によって黒人の動きを制限し黒人が不利になるように差別が法制化されたことで苦しむ黒人たちの様子が描かれている。そして、ジム・クロウ法にいかに反抗し、公民権を手に入れるのかが描かれている。本章には黒人だけでなく、白人の立場も記されていることからどちらの心情も理解することができるだろう。本書の全体を通じて、第3章を伏線にしている部分が多いので、第3章を熟読すれば内容が容易に理解できるだろう。
執筆 T・H