オリジナル vs スタンダード
最近、数年前から人気の、とあるジャピアニストの YouTube をよく観ている。
少々口は悪い方なのだが(笑、
それもこれも、ジャズに対して真摯に向き合う姿勢があればこそ。
知識の豊富さ、勉強量、それに何より「ジャズに対する愛情」をとても感じる。
こういった動画を何万人という人が観ているのであれば、
ジャズを始めた人だけでなく、僕のような、にわかファンの理解度も、ぐっと上がってくる様に思う。
期待しています。
ところで、
その方が、動画で繰り返し言われている事のひとつに、
「ジャズは歴史を学ぶことが重要。基本のスタンダードを大切に。」
というのがある。
ご存知のように、ジャズとカクテルはこの点で非常に似通ったところがある。
どちらも「スタンダード」(カクテルの場合、海外では「クラシカル」」というらしい)というものが存在して、
まずそれを学ぶことから始めるのが常道だ。
そこから始めることで、お酒の知識を得たり、基本の技術を学んだりしていく。
この「スタンダード」であるが、
諸説はあるが、どちらも1900年前半に大体のものが出揃い、風雪に耐えて残ったものが、現代に受け継がれているというのが、おおまかなところ。(そういった話はもっとお詳しい方がおられると思うのでここでは割愛)
ただ、「これが公式」という明確なレシピ(楽譜)が存在するわけではなく、
あったとしても、それは後になって、誰かが見聞きしたものを参考に、改めて書き起こしたものが多い。
したがって、作る人(演奏する人)によって、如何様にも変化させられる訳で、
それが、各々の「個性」につながるところが、今日の興味の対象になっている。
ただ、「無闇やたら」と変化させれば良いわけではなく、
そこにはやはり「基本の味(曲)」を踏まえた上でのアレンジが必要だ。
すべからく「解釈」が大切ということ。
そして、「このスタンダードを、この人はこう「解釈」したのか!!」という新鮮さが、その人の評価に繋がっていく。
その差異を見極めるのが、受け手側のひとつの楽しみになっていることは間違いないところだろう。
さて、
ジャズのことは、演奏側ではないので分からないが、
カクテルのこととなると、曲がりなりにも作り手側ではあるので、分からないではすまされない部分がある。
昨今のBAR 業界を眺めていると、どうも「シグネチャーカクテル(その店を代表する、いわゆる「名刺がわりの一杯」といった意味だろうか)」と称した、独自の「オリジナルカクテル」全盛のように思える。
BAR が日常的に行く所ではなく、ここぞという日の「エンターテイメント」となっているならば、これは当然のことだろう。
どこでも飲めそうなありきたりの一杯を飲むよりは、「ここならでは!!」という一杯を飲んでおきたくなるのは、とても良く理解できる。
ただ、前述のジャズマンの話ではないが、「その人のリーダー作、オリジナルばかりでは、差異が分かりにくいし、本当の腕前は測れない。」ということになるのではないか。
要は「これはこういうものです!!」と言われれば、それまでという話。
それが、特別美味しければ問題ないのだが、
「果たして今のは美味しかったのか??」と困惑される方もいるのではないか。
一方、作り手側も、お客さんのほとんどがそれを頼むのに慣れてしまって、どんなお客さんのリクエストにも、結局落とし所をそこに持って行ってしまって、いつの間にかそれしか作らなくなっている、なんてケースも多いかと思う。
かくいう当店も、「シグネチャーカクテル」と言えるほどのものではないが、時代におもねって(笑、いくつかの「オリジナルカクテル」を用意するに至っている。
気付くと、一日中そればかり作っていることもあるくらいだ。
そんな時、
たまに海外の方が来られて、メニューを見ずに、スタンダードカクテルを注文されたりすると(知らない土地の、しかも大して有名でもない店で、冒険はしたくないのかもしれない(笑。)、
「あ、試されてるかも。」
と、思う事がある。
海外の方が注文されるスタンダードは主に下記の三つ。
・マンハッタン
・オールド・ファッションド
・ネグロニ
びっくりするくらい、これに集約される(笑。
(ジン・トニック、ハイボールなども立派なカクテルだが、ここではあえて除外)
その点、日本の方の場合と少し異なる。
(ちなみに日本の場合は
・マティーニ
・ギムレット
・サイドカー
といったところだろうか。)
海外のものと、日本のものでは若干「解釈」に違いはあろうが、
やはりそこは「スタンダード」。
基本は外さぬよう、「ポンニチ」にならぬよう(笑、努めたいところではある。
(その差異を楽しみたいというところもあるのかもしれないが・・・)
そんな訳で、
最近、いわゆる「スタンダードカクテル」というものを改めて見直している。
そういえば、
自分の作った「オールド・ファッションド」なんて、ここ10年、飲んだことあったっけ??(笑
店が終わった後、スタンダードを聴きながら飲む、僕のスタンダードは、
ひどく眠気を誘うものでした(笑。
どうにも、もう体力が、ね・・・。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
まだまだ、学ぶこといっぱい!!しっかり精進いたしやす!!
お待ちしております。
Work Song / Oscar Peterson Trio with Milt Jackson
The Verve Music
1961
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
サポート頂いたお金は、お店でかける音源の購入に充てさせていただきます。