世界が変わるほどではないけれど
テレビでやっていたので、
久しぶりに、映画「フェノミナン」を観た。
1996年の作品なので、もう30年近く昔の作品になる。
ところで、この映画、
僕にとって、ちょっと「印象的」な作品でもある。
内容を簡単に記すと、アメリカの田舎町に暮らす平凡な男ジョージが、37歳の誕生日の夜に、空から降ってきた不思議な光に打たれ、それがきっかけで超人的な能力を身にまとってしまう。そんな彼の身に起こる顛末を描いた作品だ。
「超大作」というほどではないが、今にしてみると、脇役にフォレスト・ウィテカーやロバート・ディパルなど、なかなか豪華な顔ぶれで、主演のジョン・トラボルタも、「パルプ・フィクション」で復活の狼煙を上げた後の、ちょっと小休止的な時期の作品で、映像も美しく、挿入歌のエリック・クラプトン「チェンジ・ザ・ワールド」と相まって、心地よく観られる快作だと思う。
まあ、そんな話はさておき、
なぜ、この映画が僕にとって「印象的」なのかといえば、
この映画、公開当時、僕は全く意図して観に行ったものではなかったという点だ。
(もちろん、それまでもそんな映画は沢山あったし、現在もそんな観方をされている方も多いかと思う。ただ、店を始めてからの自分は、そんな時間を取れるはずもなく、そういう観方の出来た最後の作品だった)
確か、当時働いていた新宿の BAR の先輩に、
「俺、映画とか観ないから。」
と、映画鑑賞券を貰ったのが理由だったと思う。
いわゆる劇場発券の招待用チケットで、いつ何を観ても構わないが、劇場だけはそこ限定というやつ。
せっかくなので、店が非番の平日の昼間に、ふらふらと新宿歌舞伎町まで出向いて行って、なんの予備知識もなく入ったのを覚えている。
あの頃の平日の昼間の新宿なんて、それこそ閑散としていて、どことなく昭和の香りがまだ残る、どこか裏寂しい感じのする街だった。
(何といっても、あの伊勢丹が平日のど真ん中、水曜を定休にしていた時代だ。おかげで僕の働いていた BAR も火曜の夜はアパレル系の人でごった返した)
案の定、劇場にもお客さんは4〜5人。(日本ではあまり興行的に振るわなかったようです(笑 )
今では考えられないほど、呑気で贅沢な時代だ。
一方で、僕自身の状況といえば、やりたいと思っている店を、なかなか実行に移すことができず、どこか悶々としながらも、「まあ、このままでもいいかな。」なんて、いい加減に考えていた頃だ。(若さって愚かですね)
そんな心情にピタッとハマったかどうか分からないが、何だかとても気分が軽くなって劇場を後にしたのを、今でも鮮明に覚えている。
映画同様、表の新宿の景色もいつもよりちょっと綺麗だ。
予期せぬご褒美。
今だと「serendipity(思いがけぬ愚然)」とでもいうのだろうか。
いや、
逆に今ってそういう事ってあるのかな。
何もかもが予定を決められていて、それにより効率的に事が運ばれていく。
店をやっていても、
よく前の通りを歩いているカップルが、
「あ!!何ここ!!入ってみない??」
となることがあるが、
大概、
「え、いいよ。また今度にしよう・・・。」
となることがほとんどだ。
(不思議なことに、ほぼ100%前者が女性で後者が男性です)
やはり、何事も、予定通り進むことが最優先なようだ。
「思いがけぬ偶然」が、世界を変えるとまではいかないかもしれないが、
ちょっと、表の景色が良く見えるくらいには、なることもあるのに。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
ようやく秋めいてきましたね。「栗のカクテル」始めてます!!
お待ちしております。
j'san · Epektase outer space / a new world
Lofi Records
2021
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)