銭湯に通ったことと、「ぬた」の味
いま「銭湯」ってどうなってるんですかね。
フィットネスジムなどが休業になって、お風呂代わりにしていた方々は困っているなんて聞きます。まさか「銭湯」まで閉鎖されることはないですよね・・・。大事なライフラインですからね。
実は、僕は「銭湯通い」が随分と長い人間でした。
大学の2年生から、社会人になっても2年半ほど。計6年くらいですかね。
当時は豊島区雑司が谷というところに住んでいたので、チンチン電車のすぐ脇の、その辺では唯一残された感じの、小さな「銭湯」(「何湯」だったかな)に通っていました。
「銭湯」っていいですよね。ちょっと面倒臭い気もしますが、行ってみると、とってもスッキリするし、安上がりのちょっとした「レジャー」と思えなくもないし。
確か、僕の通い始めた最初の頃は280円だったと記憶しているのですが、徐々に値上げされていって、最後、ようやく風呂付きアパートに引っ越す頃には360円くらいになっていたと思います。(社会人になって最初に就いた上司は、「お前は若い。俺は80円代を知っている。」と自慢??していました(笑。 )
「銭湯通い」の楽しみは、それともうひとつ。
帰りに、近くの定食屋「安楽亭」(だったと思う)へ寄ることでした。
鬼子母神神社の入口の斜向かいにあったその定食屋さん。壁に一品料理がいくつか貼られてあって、どれを選んでも、ご飯とお味噌汁を付けて「定食」にできるようになってあった。
風呂桶を持ったまま、テーブルについて、壁を眺める。
学生らしき若い客のほとんどは定食を食べていて、さっさと済ませて帰って行く。
でも、風呂上がりの僕は、まずは一品のみから始める。
お気に入りは何と言っても「ぬた」。
ワケギをしっかりと湯がいて、キッパリと冷やす。上に乗る具材はなんでもいい。タコだったりアサリだったり、マグロぶつだと少し嬉しかったかな。
酢味噌がたっぷり乗って、蒸してくるこのくらいの時期には本当に最高だった。
これに、ビールの「小瓶」を付けて、食事前に軽く一杯やるのが、バイト代や給料の入った僕の、ささやかな贅沢だった。
小瓶が空き始めると、おもむろに、ちょっと厚化粧のおかみさんが「お兄さんは、今日は、ご飯は?」と聞いてくる。
焼き魚や鶏カラを選んで、ご飯とお味噌汁をお願いする。
奥で、峰岸徹に似た旦那が、常連と競馬の話の合間に「あいよ。」と返事をする。
ちょっと焼きすぎなんじゃないか、と思うくらい真っ黒な魚や鶏カラは、またそれはそれでそこでしか味わえない美味しさだった。
きっと、今はもうないと思う。
出世して(笑、風呂付きのアパートへ引っ越してからも、近所の「銭湯」を探しておいて、足を伸ばして湯船に浸かりたくなると、たまに行ったりしていた。
何でも、「大量の水」って、水の分子同士がぶつかり合ってマイナスイオンを発生させて、人間をリラックスさせる効果があるらしいですね。川とか海とか滝とか。
疲れが溜まってくると、「銭湯」へ行きたくなるのはそのせいかもしれない。
でも、必ず行く前にはワケギを湯がいて冷やしておく。
上に乗せるものは帰りに買って帰ればいい。
マグロぶつがあれば少し嬉しい。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
BAR は内側から潤します。
お待ちしております。
Waterdrops / Melodiesinfonie
Jakarta
2019
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