初心忘るるべからず
以前にも書いたと思うが、うちのメニューには「定番」メニューのほかに、
「今月のおすすめ」メニューとして、季節のカクテルや、人気のフレーバースピリッツなどを記載した別紙がある。
なかでも「今月のセレクト酒」と称した、普段扱わないちょっと珍しいお酒を紹介するコーナーは、新しいお酒に巡り会うチャンスなので、なかなかの人気だ。(それしか飲まない方もいる(笑。)
選考するこちら側としては、BAR に通い慣れている方でも「おやっ??これは??」と思って貰えるような物をセレクトするよう努めてはいるのだが・・・。
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ジャズ漫画に、ラズウェル細木の「ときめきJAZZタイム」というのがある。
「ジャズ批評」誌に連載されていた人気漫画なので、ご存知の方も多いかと思う。
その話の中に、「初心忘るるべからず」というのがあって、「ジャズというのは、ある程度聴いていると、自分が一番分かったような気になる音楽だ」というようなことが描かれていて、そのくせ「有名なのに実は一度も聴いたことがないアルバムがあるのだが、今更恥ずかしくてとても買えない」というような内容に、思わず頷いてしまう。
事実、著者の細木さん自身も、「ニュ…, ニュークス・タイム…, ア,ア,アンダー・カレント…, (略)ミーツ・ザ・リズムセ…, ゆ、許して、これから買って聞くから」と白状しているところが、また笑いを誘う。
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話をお酒に戻して、
BAR に来るお客さんにしても、そうそう「通」な方ばかりいるわけではなく、また、そんな方ばかりを対象にしていたのでは、とても経営は成り立たない。
(そもそも、それほど「通好み」の店でもないし。)
そこで、ここ数年、セレクト酒のコーナーで「有名なのに実は飲んだことないお酒」シリーズとして、BAR のバックカウンターなどで良く見かけるにも関わらず、実際に飲んだことがないんじゃないかというお酒を何本か紹介している。
例えば
・ウニクム(ハンガリー)
・チナール(イタリア)
・アペロール(イタリア)
・スーズ(フランス)
などなど。
一度はどこかでボトルをご覧になったことがあるような一本だと思う。
(本当は常備していないといけないお酒です。スペースの都合ですみません。)
しかしながら、「BAR 初心者」の方には、「美味しい。しかも全然知らなかった。」と大変好評を頂いている。
一方で、こちらからすると「この人、BAR に通い慣れてるな」と思わしき方からも、意外に評判がいい。
先程の話ではないが、ある程度「通」になってしまうと、今更頼めなくなっていて、「そのうち・・・」なんて思っていると、結局飲まずにここまで来てしまった、なんてことが起り得るのかもしれない。
そんな時、あえてこちらから半ば強引に提案してみると、
案外、新鮮な体験に繋がるようだ。
今ではすっかり気に入られて、毎回このシリーズを楽しみにしてくれている。
いくつになっても「初心忘るるべからず」だ。
かくいう僕もこういった機会で改めて飲んでみた物も少なくないので、お酒を扱うプロの側がそうなのだから、一般のお客さんに至っては、仕方のない事だと思う。
もちろん、こういった取り組みも、路面店で、なおかつ初心者向け、BAR のダイジェスト版を謳う当店ならではの「役目」でもあろうかと思って、開き直ってやっているところはある。
レア物は他の店に任せておけばいい。
とは言え、やはりこういった「有名過ぎるお酒」を扱うときの、一抹の照れのようなものは、無いと言えば嘘になる。
「パ,パ,パッソア…, パライソ…, マ,マ,マリブ…, 」
ゆ、許して、これから買って、今度やるから(笑。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
アぺロール常備することにしました。「アペロール スプリッツ」いけます!!
お待ちしております。
I Hear A Rhapsody / Bill Evans · Jim Hall
Blue Note Records
1962
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)