我々は断面を食べて生きている
生ビールの美味しい季節になりました。
「ビールといえば夏でしょ!!」と仰られるかもしれないが、
もともとビールは寒い地方で生まれた飲み物。
秋から冬にかけてのこの時期が、
やはり一番しっくりくる季節だと思う。
ところで、
美味しい生ビールの条件は、
何といってもその「鮮度」だというようなことを書いた事がある気がするが、
やはり「注ぎ方」にも、それなりの要素はあるにはあると思う。
ただし、これには諸説あって、
実際のところは、そのお店さんそのお店さんごとに、様々なやり方が混在しているのが、現状というところだろうか。
うちの店の場合、
やはり「泡」にはそれなりに気を配っていて、あまり「こんもり」とさせないように、フラットな状態で、スッキリ切れ味鋭くお出しするよう努めているつもりだ。
何というのだろう、
イメージとしては、
煌々と流れる「ビールという滝」の一部を、スパッと切り取って出す。
いわば、ビールの「断面」を飲んでもうらう、
そんな感じを目指している。
(というと聞こえはいいのだが、それには上下をかなり「捨てる」必要があるので、かなりコスト的に無駄が出るのは事実だが・・・。)
まあ、そんなこんなで、
ビールひとつ取っても、色々と「想い」というものはあるものだ。
しかしながら、
これは何もビールに始まったことではなく、
その他、諸々のメニューについても言えることで、
カクテルなども、あまりあれこれデコレーションをしすぎることなく、なるべく出来たらさっとすぐにお出しするようにしているし、
サラダなども、畑の菜葉をザクっと捥いで、そのまま出てきたような感じにしたいと思って作っている。
すべからく、その物の「断面」を食べて(飲んで)もらう。
そんなイメージで、仕事をしている。
結局、人間の感じる「美味い・不味い」の判断って、その「断面」で決まるのではないか、という気がしているので。
実際、世間を見回してみても、
ウイスキーの蒸留などでは、最初と最後をどこまで捨てるかが、常に裁量を問われるところだろうし、
デパートのスイーツ売り場などを眺めていても、各社こぞってその「切り口」に、病的なまでに留意しているような気がする。
やはり、誰も、その物の中身、「本質」を味わいたいのだと思う。
さて、
これを人間に置き換えると(笑、
その人の「本質」って、どこに現れるのかというと、
僕は常々、人間は「玉葱」のようなものだと考えているので、
その人の本性って、幾重にも重なっているように思える。
弱いように見えて、実は強い、ように見えて、実は弱い、ように見えて実は・・・
陽気そうに見えて、実は陰気、そうに見えて、実は陽気、そうに見えて実は・・・
どこまでいっても、芯が無いようでいて、やはりある、ようでいて・・・
「お前の本質はどこなんだ!!」と問われても、
その日その時、どの「断面」が現れるかで、その人の本性が変わる気がしている。
難しいのは、その「断面」を、自分では切れないというところ。
切るのはあくまで相手だ。
スパ!!
さて、今日はどの「断面」が出るのやら。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
野菜って縦に切るのと横に切るので味が違うって知ってました??
お待ちしております。
Thinking of You / Oatmello
Lofi Records
2021
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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