フラクタルの店
新緑が美しい季節ですね。
事後報告になってしまうが、当店も新年度より、一部値上げをした。
価格変更は随時行っているので、今回改めてご報告するまでもないのだが、
最近の物価等の高騰を考えると、
今後もまた遂行せねばならぬように思う。
その節は、何卒ご容赦頂きたい。
ところで、
こういった価格の見直しは、うちの店に限った事ではないのかもしれないが、
実は、大変「良い機会」である。
何が「良い機会」かというと(以前にも触れたと思うが)、価格というのは、おおよそ、そのお店のポリシーのようなものが現れる、コピーライティングのようなものである。
したがって、それを「見直す」というという事は、そのままその店の「存在理由」を見直すということに繋がる。
定期的にこれを行うのは、大変重要なことだと思う。
さて、その「存在理由」であるが、うちの店の場合・・・、
ちょっと、「存在理由」というと重々しいので、
「どういった特徴があるのか」
に置き換えて考えてみたい。
・・・。
これが見事に「特徴が無い」のである。
・モルト○○○本!!といった、何かのお酒に特化している訳でもなく
・ジャズレコード○○○○枚!!といった、何かの音楽に特化している訳でもなく
・総フォロワー数○○○○○人!!といった、・・・これくらいにしておこう。
お客さんを見ていても、
一人あり、カップルあり、グループあり、若者あり、年配者あり、日本人あり、外国人あり、男性あり、女性あり、その中間あり、・・・これくらいにしておこう。
特に何処かの客層に偏っている訳でもなく、
とにかくバラバラ、
一言でいうと「特徴が無い」のである。
◆
僕の好きな概念に「フラクタル」というものがある。
(理論や概念に好きも嫌いもないのだが・・・。)
ご存知の方も多いかと思うが、フランスの数学者ベノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念で、一部分を抜き出しても全体と似た形になる「自己相似性」を示すというもので、
平たくいうと、
・海岸線の形を遠くから見ても、近くに寄っても、同じ形状をしているとか、
・森全体も、一枚の葉っぱも、緑の色素の比率は同じになっているとか、
(ちょっと違ったかな(笑 )
まあ、そんなような話だ。
無学な店主ではあるが、
自分の店を考えるとき、いつもこの概念が頭の片隅にある。
別に何かのマニアや、何かの職業や、何かの人種に特化した店でなくていい。
その辺を歩いている人達の断片を切り取った、社会全体の「縮図」でありたい、
そう願って店作りに努めてきた気がする。
誰が入ってきても、浮かない、沈まない。
そんな店でありたいなあ、と常に考えているように思う。
それを要約すると、
きっと、
「特徴が無い」店になるのだと思う。
はたして、
「特徴が無いのが特徴」って、現代で許されるのか。
連休でもう少し考えたいと思っています。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
ゴールデンウイークも暦通り営業しております。今年もありきたりですみません。
お待ちしております。
What's Going On / Les McCann
Atlantic Recording Corp.
1975
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)