AOR現行世代の予習と復習|極私的プレイリスト
10代の後半、私はいわゆるAORと括られた曲たちを自発的に聴くことがありませんでした。
なにしろ「アダルト・オリエンテッド」ですからね。
なんてのは冗談ですが、同年代ではもちろん、少し年長のひとたちにもAORという概念は、ノスタルジックな名曲たち、という見られ方とともにあったように感じます。
そのころ私はハード・テクノやエレクトロ・ファンクやニュー・ジャズなどにのめり込んでいて、その他の良質なポピュラー音楽に目を向けることがありませんでした。
愛好家のかたたち、怒らないでくださいまし。
そのころの私は今よりもっと視野が狭く、「なんだこんな軟弱なモノ」などと思っていました。
バカです。
どこかでどなたかがおっしゃっていた、
「若いということは偏狭であるということ」
を地で行っていました。
幸運なことに、豊潤なポピュラー音楽の時空を遡る手助けをしてくれるひとや書物や音源に出会うことができ、少しずつ、センスの凄みやスキルの厚みや歴史の重みを感じ始めているところです。
AOR全盛期といわれる時代の作品も名曲揃いですが、今回はいま「AORというスタイル」を標榜し、豊かな才能を発揮している現行世代を集めてみました。
♪ "Still Not Over Being Over You" by James Sayer(2024)
かのMichael McDonaldさんのサポートを受けてのデビューというだけあって、その影響も垣間見えるUK出身のSSW。
柔らかい歌声も、痒いところに手が届くようなメロディー・ラインもアレンジも、時代を超えて愛される曲になるのは間違いありません。
♪ "Kids" by Young Gun Silver Fox(2020)
上掲のJames Sayerさんをツアーのオープニング・アクトに招いたロンドンの2人組、言わずと知れた現行AORの代表的存在ですね。
4年前のこの曲、めっちゃ可愛いカップルとキャッチーなフックにヤラれました。
♪ "Nobody's Fault" by Benny Sings(2021)
アムステルダムを拠点とするBenny Singsさんも、そのセンスはAOR。
ヒップ・ホップ・トラック・メイカーだっただけあって、打ち込みの処理などそれっぽいですが、特徴的なのはその甘い声。
♪ "Lucky Radio" by Samuel Purdey(1999)
結構前の曲なんですが、当時大きな話題になったというこの曲も外せません。
Jamiroquaiのツアー・メンバーだったふたりの、R&Bマナー全開のミッド・グルーヴがめちゃお洒落。
♪ "Another Chapter" by Madfinger(2011)
プラハで結成されたアシッド・ジャズ・バンドが、新ヴォーカリストを迎えて放ったスマッシュ・ヒット。
端正な演奏は、フュージョン/UKソウルをお好きな方にもマッチするのでは。
♪ "Still River Flow" by JIM(2023)
JIM名義で活動しているノッティンガム出身のDJ/プロデューサー、James Baronさん。
昨年作から、アコギのカッティングも爽やかにバック・ビートを効かせた一曲。
ヴォーカルのハーモニーなどに、西海岸ぽさも英国フォークの翳りも。
♪ "Find a way" by Ole Børud(2023)
ノルウェーのOle Arnold Børudさんも、現行AORシーンを牽引しているひとりですが、このMVご覧になりました?
Michael Omartianさん、Bill Champlinさん、Jay Graydonさんが一堂に会してのバックアップ!
TOTOの未発表曲?と思ったほどですよコレ。
♪ "Hold On" by State Cows(2022)
Graydon/Foster節を現代に伝えるようなメロディとコーラス。
スウェーデンから西海岸の風を送りつづけてくれるユニットのヒット曲です。
ここでもGraydonさんがギターで参加。
ただのフォロワーではない曲としての完成度が素晴らしいです。
♪ "Smile" by Ed Motta(2016)
最後は、現代のAORを耕して育てつづけてきたリオ・デ・ジャネイロのMottaさんに締めてもらいます。
なんせアルバム・タイトルが「AOR」っつーんだから筋が通ってる。
しかしMottaさん、どれだけスティーリー・ダンお好きなんですか…
うーむ、他にもたくさんリスト・アップしたい曲があるけど、とりあえず今回は第1弾ということで一旦ここで収めます。
top image : Derks24, Thank you for letting me borrow your wonderful work.
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