夫から「君を守りたいと思ったことがない」と言われた話。
子どもたちを寝かせつけたあと、いつものように夫と2人で夕食をとっていた。夕食のときは、毎日お疲れ・・・からはじまり、仕事のことや子どものこと、周りで起きている他愛もないことなどを喋りながらご飯を食べる。
すると、夫がおもむろにこう言い出した。
「さっき〇〇(息子)の寝顔を見ながら、〇〇ちゃんのことは何があってもお父さんが守るからね!って思って。でもふとさ、そういえば君のことを『守りたい』って思ったこと無いな...って気付いちゃったんだよね」
ちょっと衝撃だった。内容というよりも、なんというか「守りたいと思ったことがない」という言葉にギョッとした。
「ええ、それ、どういうこと?」思わず聞き返すと、
「うーん、なんていうか守りたいっていうのとは、ちょっと違うんだよね」と夫は言う。
大学時代から付き合いがはじまり、結婚も含めてトータル14年あまり。一応、20代のころは今より多少か弱かった気もするのだが。その言葉を聞いた瞬間はなんだかちょっと複雑な気分になった。
ただ確かに、私も彼に「守られる」という言葉はしっくり来なかった。疲れた時は優しくしてほしいし、寄りかからせてほしいけど、「守られたい」と思ったことはなかったからだ。
男女の関係性の中では、男性が女性を「守る」という感覚はまだ一般的なのだろうか。
辞書で【守る】を引くと、大切なものが失われたり、侵されたりしないよう防ぐこと、大事にすること、世話をすること、などの意味が出てくる。
よくあるプロポーズの言葉として、「君を守ります。一生幸せにします。」なんて定型文が思い浮かぶけれど、よく考えてみれば、その言葉が出てくるその時点で夫婦としての価値観や関係性が規定されているのかもしれない。
これまでは女性は守られるべき対象であり、夫は妻を保護することが当然の役割だと認識されていた。ただ、「守ります」という言葉に、女性を庇護下に置くかわりに家の中を守ってもらうとか、現代でいうと出産育児によるキャリア中断や、家事育児が女性に偏るなども未だに自然に受け止められていることが関係するのだとしたらどこか前時代的だ。むしろ今の時代、女性が男性を守ったっていいじゃないと思う。
その上で、夫が私を「守りたいと思ったことがない」という感覚は、私たちのパートナーシップのあり方を的確に捉えていると思う。
夫の冒頭の言葉は、お前は自分でやっていけるから勝手にやってくれとか、自分はいなくても大丈夫という意味ではなくて、パートナーである私を自立した「個」として捉えているという意味らしい。確かにその通りだし、互いにフォローしつつリードする関係性にもなっていると思う。私の場合、子育てを始めてからは特にそれを意識するようになった。(それまでは単に好き勝手やっていたかもしれない・・・ありがとう夫よ)
守る/守られるの関係ではない夫婦のパートナーシップをこれからも発展させていきたいし、共に/それぞれが充実した人生を送れるような関係性を大切にしていきたいと感じた出来事だった。