Gronbitter

好きな調味料はタバスコ。

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ゆるやかな自殺

速やかな自殺 某人曰く、喫煙は緩慢なる自殺なんだそうだ [1]。 言ってることは分かるが随分甘い表現だ。喫煙に限らず、人生は悉く死へ向かう過程にある。生命の始まりから死に至るまでの放物線を微分したものに瞬間的な”人生”を見出しているに過ぎず、物質的には0から0へ移動しているだけである[2]。人生においては万象が緩やかな自殺に相当する。その中で喫煙は寧ろ相対的に速やかな自殺と言えよう。 こんな屁理屈を捏ね回した癖に僕は時々喫煙する。ただ本数があまりに少ないのでしばしば何故

    • ドラフトライター

      Op.01 ワラスボソフト 多分僕はファンタジーの才能がないのだと思う。 今となっては「古風」とか「コスプレ」とか言われるような濃紺のスーツに身を包んで入力コンソールに猫背で向き合っていると、時々離れたところから若者の嘲笑だの好奇の視線だのが突き刺さるようで痛い。しかしこうしていないと気分が出ないのだから仕方ない。50年前のサラリーマンのスタイルを恰好だけ踏襲した僕は、猫背をさらに丸めて冷凍剥きエビのようになりながらモニタに浮かび上がる文字に集中する。オリジナリティだの創

      • 唐揚げAI、メンチカツを買う

        午前1時、唐揚げ大好きAI午前1時、ラジオで呂布カルマがAIについて話していた。 「AIに仕事奪われるってよく言うけど、AIも膨大なデータからパターンを生み出しているだけ」「経験とそれを選ぶパターン、それだけをもって自我と言えるのか」「意思みたいなものと、選択パターンの間にいろんなものがある」「例えば、唐揚げが一番美味いのは知ってるけど、今日はメンチカツいっとこうか、みたいなことをAIはできないのでは?一定確率で違うほう行くみたいなのは組み込めても、それって意思決定じゃないじ

        • 或いは闇鍋

          最近、気が付くことがあって、記録のためにここに記しておく。 百合、または神についてこのところ作業量は大したことがなくても精神的に気を張らなければならない場面が多く、その所為か神経が摩耗している感じがある。日頃より神経細胞の集合体を扱っている身として「神経が摩耗」という表現を使うとどうにも痒い感じがして(i.e. 誤用とされている慣用句の使い方を敢えてしたときのような違和感)気持ち悪いのだが、他に上手く言い充てることができないので仕方ない。 そんな折、近年合衆国の属州となっ

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          キッチン

          その日は低気圧が来ていた。 僕は気圧が原因で体調を崩すほどやわではないと思っていたが、いくつか条件が重なると弱いらしい。前夜寝付けずに中華統一を目指す王様のアニメをだらだら見ていたら朝が来ていて、仕方なしといった体で布団を被り、目が覚めたら頭頂部が割れていた。恐らく睡眠中に何者かにバールのようなもので頭部を強打されたのだろう。黒卑村もびっくりの治安だ。 しかしながら現代は春秋戦国時代とは違い、大抵の異常にはそれ相応の対処法が用意されている。鼻炎には金の、喉頭炎には銀の、俺に

          キッチン

          キューバリブレ

          Netflixをはじめとした動画ストリーミングサービスは視聴内容に応じてユーザの好みそうなコンテンツを提示してくる機能を備えている場合が多い。Amazonのように商品そのものを売りつける目的であればなるほどこれは有益なアプローチであると得心するに容易いが、「こんな動画を見ているお前の同類はあんな動画も見ています」と提示されたところで「へぇ、そうなの」以上の感想はなかなか得られないのではないだろうか。実際には、ある程度人の選好というものはパターン化しており、少数パラメータの学習

          キューバリブレ

          ただただ長いだけの話

          先週寝付けない日があって、ただ長いだけの退屈な話を書いた。暇ができるとすぐメモ帳を開いて頭に浮かんだことを書き留める癖がある。疲れるし目は冴えるしで良いことなど何もないがどうにもやめられない。こんなゲロみたいなものを投げつけることについて確かな抵抗はあるが出来てしまったものは仕方ない。どんなひどい出来の料理であっても調理してしまったなら口にしなければならないということと似ている。ゲロっぽい料理を好む人もいるかもしれない[1]。ここで問題なのは、もういい無理をするなと止めてくれ

          ただただ長いだけの話

          髭の対価

          最近ハライチの岩井が書いたエッセイ本を買った。 僕は芸能人が本業の片手間に書いた本など買うタイプではないと思っていた。芸能人が書いた本というのは、まず前書きに「私の本業は物書きではないため自信はなく〜(中略)世間や出版社に促されるままに書いたまでです」といった内容の不必要なまでに謙った形式をとった尊大な序文が置かれがちである。芸能人の書いた本を読むのは恐らくこれが初めてなのに何故そんなことが分かるのかというと、本を出した芸能人は大抵そういうトークから入る番宣に出るからである

          髭の対価

          「カッコ」つける

          「初対面の人と話すとき、なんかカッコつけた声で喋るよね」と彼女に言われた。 当方、全く自覚はない。たしかに僕は初対面の人と会話するのにあまり抵抗を感じない方ではあるが、だからと言ってあからさまにカッコつけて話しかけにいくような軟派野郎では決してない。ただ緊張していつもと違う発声方法になっているだけなんだ、いやほんとに、信じてくれ、と伝えたが半信半疑だった。 そもそもの事の発端は、最近彼女がハマっている俳優のインスタかなんかの配信で、「おやすみ」を言ってくれるのがカッコいいだ

          「カッコ」つける

          悪癖

          何かに行き詰ったとき、特定の場所に出向くことで打開するという行動パターンをとる人は多い。 僕もそうしたテンプレートに違わず、嫌なことがあると研究所の屋上に行ってコンクリートの出っ張りを蹴りまくる悪癖がある。大体22時過ぎの場合が多いのでこの惨劇を誰にも目撃されない点が非常に良い。他の学生には温厚かつ冷静なキャラクターで通っている僕が、教員への悪態をつきながら非破壊オブジェクトを踏みつける残忍な一面を衆目に晒すわけにはいかない[1]。 上記は”嫌なこと”があった場合の対処法

          橙色の夜

          おしいれのぼうけん オレンジ色の灯りが嫌いだ。 理由はわりとはっきりしていて、幼稚園の年長の頃読み聞かせられた「おしいれのぼうけん」という絵本が原因だ[1]。細かい部分は覚えていないけど、何か悪さをした罰として押入れに閉じこめられた男の子2人が、ネズミの魔女が支配する暗闇の世界に迷い込んで冒険するみたいな話だったと思う。その中で、オレンジ色の電灯が立ち並ぶ無人の高速道路を渡る場面がある。寒々しい道路が嘘っぽいオレンジ色の水銀灯で照らされる様を描いた挿絵が物凄く不気味だった。

          橙色の夜

          ダイナになりたい

          ウルトラマンダイナになりたい 僕が語ったとされる将来の夢で最も古い記録によると、僕はウルトラマンダイナになりたかったらしい。つるの剛士が再ブレイクを果たして頻繁にテレビに出るようになった頃散々両親に蒸し返され馬鹿にされた[1]。別に中の人になりたかったわけじゃねえよ。 結局巨人化の夢は叶わなかったけれど、タイマーには追われる日々を過ごしている。忙しない免疫染色、合間を縫ってやる後輩の指導、迫り来る書き物の締め切り等々。どうせなら僕の敵も週一で現れてくれると楽なんですけど。

          ダイナになりたい

          イングリッシュスコーンの幻覚

          スコーンを焼きたい。 これだけ全国同じ状態になっていると、普通に考えるようなことは大抵やられていて、今スーパーからホットケーキミックスやら無塩バターやらが無くなっているらしい。 暇だし子供の菓子でも手作りしてやろうという気まぐれが同時多発的に起こると一時的な品薄すらも引き起こせるというんだから人間という種の冗長性は恐ろしい。 調べたわけじゃないけど、”日記もどきをネットに垂れ流し始める”というのもそういった全国的なムーブメントの1つなのだろう。 僕自身は安易に大衆に迎合する

          イングリッシュスコーンの幻覚