偽歴史も陰謀論と同じかもしれないと、ふと思った

 先の大戦頃の歴史には、種々の誤りや捏造が流布されている。

 色々あるが、「日本の戦争は正当だった」とか、「アメリカが日本を戦争に追い詰めた」とか、「コミンテルンの陰謀だった」とか、「マッカーサーは『日本は自衛戦争した』と述べた」とか、「原爆投下は不要だった」とか、「日本は降伏の準備をしていた」とか、「真の黒幕は日本海軍だった」とか、「アメリカは真珠湾攻撃を知っていた」とか、そういう偽歴史。

 確かめたことは無いが、現在書店に並んでいるのは、おそらく大半が偽歴史書だ。他の時代は筆者には分からないが、先の大戦頃の歴史に関する限りは。ネット上の記事は、それ以上にそう。


 それにしても、どうしてこうも偽歴史が出回るのか?
 筆者はこれまで考えたことは無かったが、あるいはそれは陰謀論と一緒なのかもしれない。2021年9月2日NHK・BS放送『ダークサイドミステリー「なぜ人は陰謀論にハマるのか?イルミナティとアメリカ」』を見て、筆者はそう思った。

 その番組中では、陰謀論の成り立ちをこう述べている↓

陰謀論ができるまで
①社会に不思議・理不尽なことが起きる
②「定説」に対して疑問を感じる
③「巨大な組織の陰謀」で筋が通る
④同じような怪しい情報が集まる

 これって、先の大戦頃の歴史について「アメリカの陰謀」とか「コミンテルンの陰謀」とかのトンデモ偽歴史が吹聴されるのと、類似してるんじゃ無かろうか?
 と、なんとなく、ふと思った。



 一例として、『日本はどうしてアメリカに戦争を仕掛けたのか?』について。

 今更言うまでも無く、第二次世界大戦において、日本は惨憺たる敗北を喫した。それは、国力と工業力で、日本が決定的なまでにアメリカに劣っていたからだった。そしてそれは、戦争が始まる前から明らかで、当時の日本もそれは認識していた。

 では、にもかかわらず、どうして日本は自らアメリカに戦争を仕掛けたのか?
 これってまさしく、『①社会に不思議・理不尽なことが起きる』ではないだろうか?

 そしてそれは、戦後に「日本は愚かだった」と説明されてきたのだが、そんないい加減な説明では、「本当にそうだったのか?」と疑問を感じるのは当然だろう。すなわち『②「定説」に対して疑問を感じる』。

 そこに、「アメリカが悪意を持って日本を戦争に追い詰めたのだ」もしくは「それはコミンテルンの陰謀だったのだ」という説明が登場する。つまりは『③「巨大な組織の陰謀」で筋が通る』。

 さらに、そういう論旨の著作を書いている似非歴史作家は数多く、および現在ではネットでそういう主張をする御仁も数多く、時にはそれがご立派な肩書きだったりもして、それってまさしく『④同じような怪しい情報が集まる』だろう。



 付け足しだが、結局、こういう話は大問題にぶつかる。

 そもそも『正しい歴史』とは、いったいどれなのか?
 どうすれば、それを知ることが出来るのか?
 という。

 それらについては以前記しているが、要するに世の中はトンデモな偽歴史にあふれている。現在、書店に並んでいる歴史書なんざ、すべてそうなんだと思った方が良い。
 もちろんTV番組もそうだし、ネットの情報などそれ以上に信用できない。

 いや、それはもちろん、良書も多い。なのだが、どれがそうなのか、どうすれば見分けられるだろうか?

 これも以前記したが、その著者の肩書きで見分けることは出来ない。それまでの実績から見分けることも出来ない。
 内容から見分けることも出来ない。トンデモ本の著者なんざ、しばしば筆力だけはあり、一見、いかにももっともらしく見えるからだ。
 ちゃんと資料に当たっている著作も信用できない。資料に目を通していても、それを誤読して曲解してしまう人物は多く、まれだが捏造までする人物もおり、それでも説得力にあふれた真実味のある文章を書けるからだ。

 だから結局、自分で資料を読んで研究していくか、入手できるものはすべて読む勢いで大量の本を読むしか無いのだが、よほどの歴史オタク以外、そんなこと、してられまい。

 というわけで、筆者的には、歴史の真実なんて、追求しようと思うこと自体が、間違いだと思う。現実問題、そんなの常人にはとても無理。トンデモを真実と思い込まされるだけだ。

 だから歴史なんて、エンタテインメントとして楽しむだけが、たぶん、賢い。そんなもの知らなくたって、日常生活に何の支障も無い。


 以上、色々書いてしまったが、それでも先の大戦頃の歴史を知りたいと思うなら、筆者的にはまず『戦史叢書』を読むべきだと思う。それですべてが分かるわけでは無いが、何しろ無料。真偽の怪しい書物にお金を出すより確実に良いはずだ。
http://www.nids.mod.go.jp/military_history_search/CrossSearch


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