『ともに生きる仏教』の発売記念シンポジウムで感じたこと
二週間ほど前になりますが、表題のシンポジウムに参加するために大阪へ。ついでに京都へ行ってきました(京都でのお話は前回の note「アンドロイド観音はお釈迦様の夢を見られるのか?」に書いた通りです)
その参加の感想をまとめようと2週間も時間をかけていた間に、ネットのお寺さんこと『彼岸寺』さんにて、当日の様子がアップされておりました
個人的にはもう、こちらを読んでいただければほぼ完璧!!とは思いつつも、せっかく大阪まで出向いていろいろとメモまでしたのもモッタイなく。簡単にわたしの印象といった部分に絞って、感想をアップしたいと思います。よろしければ上記の『彼岸寺』さんの記事とセットで、読んでいただければ幸いです
〇應典院さんについて
シンポジウムの会場は、大阪天王寺区にある應典院さまです
お寺さん好き、お寺さんやお坊さまのソーシャル活動を齧ったことのある方なら知らない人はいないという、「お葬式をししないお寺さん」として有名なお寺さんです。様々な方がその活動について書かれていますので、この note ではその説明は割愛したいと思います。とにかく市民のみなさんに開かれた、本当に面白いお寺さんです
應典院さんのサイトもありますので、ぜひ一度、ご覧になられてみて下さい
今回のシンポジウムもこれだけが単独で開催されたのではなく。このシンポジウムの前後では『おてら終活花まつり』という一連のイベントが開催されていました
このおてら終活花まつりでは
・死では終わらない物語 ~日本人はどう死を受け入れてきたか~
・8000件の終活相談から見えてきたもの。今何をすべきなのか。2019終活の極意、教えます~お寺がもっとできること~
・愛するペットの死に、いかに向き合うか。ペットの終活。わたしの終活。(おてら終活カフェ第8回)
といった「終活」をキーワードにした様々なイベントがあり。東京からは簡単に行けなかったのが残念に思うほど、どれも魅力的なものばかりでした
もちろんこれらイベントの様子も、上記の應典院さんのサイトにて知ることが出来ます
その中でも、どうしてもこれは行かねば!!と思い参加したのがこの『ともに生きる仏教』の出版記念公開シンポジウムです。ソーシャル x お寺さん、お寺さんの社会貢献といった言葉も最近は珍しくなくなりつつありますが、それを様々な形で実践をされてきた関西を中心とするお寺さん、お坊さんが一堂に集まり、お話をして下さるという豪華な内容
それぞれの方のお話の持ち時間は10分と非常に短かったものの、それでも一度にこれだけの方々のお話を聞ける機会はそうはなく。ご挨拶をしたい方もあって、参加をしてきた次第です
〇すべては仏様の教えを伝え、実践するため
一見派手なお寺を舞台にしたイベントにしかに見えなかったり
それってお寺さんがやることなの?と感じられたり
お寺さんがそこまでしなくても…
と指摘されることへ登壇された皆さんが力を入れて取り組まれる理由。それは総て
仏さまの教えを伝えるため
その教えを実践するためにある
このシンポジウムの結論的なことを先に書いてしまうと、これに尽きると思います。それはこのシンポジウムにに登壇された全ての方々が、共通して言われていたことでもありました
ではここで言う仏さまの教えって、何なのでしょうか?
それは社会貢献的なコトとどういう繋がりがあるのでしょうか?
わたしはそれは、ヒトの世の「苦」に向き合い。手を差し伸べることだとずっと思ってきました。日本のお寺さん、仏教は「葬式仏教」と言われ揶揄されますが、ヒトの死はヒトが体験するもっとも怖ろしい「苦」であるとも言えます。そこにお寺さんやお坊さまが向き合われるのは、むしろ自然なことだと思うのです
では社会貢献も「苦」に向きあうことなのでしょうか?
現実ににも、そうした取り組みに対して同じお坊さま仲間やお寺さんからあれやこれや言われてしまう…
何人かの登壇者の方々がそう言われてきたことを、吐露されていました。ところがどっこい、これまではそうした目が向けられてきたのに。メディアで活動が取り上げられたり。賞を取ったりすると、途端に相手の姿勢がが180度変ってくる
という話もされていました 苦笑
わたし自身は、お寺が社会貢献的な活動をしない。手掛けない理由の方がよく分からないのですが。現実には同じ宗教界からもそう受け止められてしまう。そんな現実がまだまだ根強く残っていることがむしろ、不思議に感じれます
子育ても
アイドルも
社会的な貧困も
グリーフケアも
被災地への支援も
ヒトの世のことであれば、総ては「苦」に繋がっていて。それが自然だと思っています。むしろ今回登壇された方々の活動は、本来のお寺さんやお坊さまがしてきたこと。それを現代風にアップデートするか。単に焼き直したをしたものにしかむしろ見えないのですが。でも当のお坊さまでさえ、仏教=葬式仏教。決められたことを繰り返していれば良いと考えている方が多いという現実は、正直とても残念に感じられます
と同時に、登壇されたみなさんの手掛ける動機や、活動を継続することに賭ける想いはむしろ宗教者としてシンプルであり。非常に純粋なのだなぁ…と感じ。それぞれがとてもとても、ステキな姿に見えました
〇登壇された方々とその内容
今回のシンポジウム、基になっているのはちくま新書さんより刊行された本『ともに生きる仏教:お寺の社会活動最前線』です。この本で各章を担当された執筆者の方々が、当日の登壇者でもありました
【登壇者】
〇大谷栄一(佛教大学教授)
なぜ、お寺が社会活動を行うのか?
〇松島靖朗(浄土宗安養寺住職)
貧困問題―「おてらおやつクラブ」の現場から
〇池口龍法(浄土宗龍岸寺住職)
アイドルとともに歩む―ナムい世界をつくろう
〇関 正見(浄土宗正観寺住職)
子育て支援―サラナ親子教室の試み
〇猪瀬優理(龍谷大学講師)
女性の活動―広島県北仏婦ビハーラ活動の会
〇大河内大博(浄土宗願生寺副住職)
グリーフケア―亡き人とともに生きる
〇曽田俊弘(浄土宗浄福寺住職)
食料支援と被災地支援―滋賀教区浄土宗青年会のおうみ米一升運動
〇秋田光彦(應典院/大蓮寺住職)
NPOとの協働から、終活へ―應典院の20年と現在、これから
豪華ですよね。松島さんと池口さんが同席されるなんて、こういう機会ならではのものだと思います
また今回の登壇者、そして本、ちょっと面白いのは書き手の方々がみなさん関西かその周辺の方々ばかりであることです。その点については、イベントを主催された應典院住職秋田光彦さんが facebookページで自らの見解をコメントされてます。それによれば
・関西圏の特異として大本山、教団本部が集積しエスタブリッシュメントの勢力が強い、そのことが逆に社会活動をい意味で批判したり、内省する力を鍛えているような気がすること
・月参りの伝統や檀信徒との日常的な信頼関係が根強い。「おっさんがやってはるなら間違いなし」がまだある
・関西のローカルメディアは宗教をしっかりフォローしている点。宗教関連の記事は首都圏版と関西版では待ったく扱いが違う。それだけ関西では「記事ネタ」としてお寺や僧侶は魅力があり、メディアが仏教の社会貢献の基盤を支えている
・何より日本最大のローカル仏教は関西に根ざしている
といったことを、推測だが…ということ断りの上で語られています
いやそんなことないよ。東京にだってローカルに根ざし。社会と繋がろうとされるお坊さまやお寺さんがいるじゃないか?というご意見も当然あると思います(わたしもそう思います)。ただより根ざしている感でいえば、関西を中心とするエリアの方かもしれない…シンポジウムを観ながら思いました
〇シンポジウムに参加してみて
先にも書きましたが、まず残念だったのが、参加者がちょっと少なかったこと。お坊さまの参加者も、一般の参加者も少なく。空席が目立ったことはとても残念に感じられました
お寺さんのソーシャル活動の紹介ととその実践者の方々が集まっていたのに、一般のソーシャル系の方々もそこに関心のある方々も、ほとんど見かけられず。もともとそうした告知はしていなかったかもしれませんが、こうしたお寺さんが何を目指されているのか。自分たちと一緒に何が出来るのかを知り、考えるきっかけになったはずなのに…と思うと。正直人の集まりに関してはとてもとても残念に思いました
むしろソーシャル界隈の方々は、お寺さんと何が出来るかについて、本を通じてもっと感度を上げていただきたいデスね
それにもまして残念だったのが、上記の通り、お坊さまの参加が少なかったことです
もちろんこの日は花まつりを控えた週末。お彼岸からも間もないということで参加しにくい日程だったかもしれません。それでももっともっと、関心を持って参加してくれた良かったのになぁと思わずにいられませんでした。やはりこうした取り組みを知り、実践者の姿を目にすることで、学べることも沢山あったと思います。開かれたお寺さんというスローガンを掲げたり。お寺でちょっとイベントをすることが、これからのお寺さんの役割ではありません。これからの時代をサバイヴしたいのであれば、それなりの準備やリサーチが必要です。それを先行して行っている方々の姿、もっと参考にしていただけたらと思います
私から特にお伝えしたいのはこの二点です
〇最後に(秋田さんからの告知)
さていろいろな試みをされている應典院さんですが、5月18日はいよいよ「ともいき堂」というお堂の落成記念法要と公開シンポジウムを開催されます
さきほど應典院さんはお葬式をしないお寺さんとご紹介しましたが、ここ数年、應典院さんは「終活」に関わるイベントをたくさん開催されてきました。お葬式をしないお寺さん故に、より自由に、葬送や墓制について語ることが出来たそうです
そうした知と経験の積み重ねから、終活の重要性を感じられ。かつ地域コミュニティを核とした新たな墓制と弔いの仕組み作りが必要との考えから、そのベースとなる「ともいき堂」を作られました
その経緯について詳しくは、すでに終了していますが、こちらのクラウドファンディングのページをご覧になられ手見て下さい
そのともいき堂の記念法要に、終活関連の事業に関わる方限定で10名ほど参加者を募集されています(ただし先着順です。)ともいき堂という終活の場を関係者の方々に知っていただくことを目的とされています
ご興味のある方がいましたら以下の様式に従い、お申し込みをされてみて下さい。関西で終活に関わる様々な方々との出会いもあると思います
【ともいき堂落成記念方法&公開シンポジウム】
日時 2019年5月18日(土)13:30 - 15:30
会場 ともいき堂および大蓮寺客殿
(大阪府天王寺区下寺町1 -1-30 應典院隣)
申込 ①お名前 ②所属(お仕事内容) ③同伴者1名まで可(お名前と所属をお願いします)④連絡先をEmailに明記の上、5/4までにお申し込みください。宛先→info[@]outenin.com
その他
・当日は軽装でお越しください。数珠をご持参いただければ幸いです
・参加費は無料です
・当日は公開対談「無縁社会におけるお寺の役割、市民の役割を考えよう」(白波瀬達也・桃山学院大学准教授VS秋田光彦)も併せて開催されます
当日はわたしも、末席にて参列をさせていただく予定です
いまからとても、楽しみデス。。
デス・カフェ@東京主催。ヒトやペットの区別をしない、死別・喪失のサポート、グリーフケアのお話をしています