ペットロス・ソーシャルワークの可能性について考えてみました
ペットロスについて検索をしていたら、標題をテーマにした論考に出逢いました
佐藤亜紀(2016)「ソーシャルワーカーの新しい機能:ペット・ロスが飼い主に与える影響と
ソーシャルワーク・サービスの可能性―― 先行業績レビューを通しての考察 ――」松山大学論集第 29巻 第 2 号
https://researchmap.jp/?action=cv_download_main&upload_id=284420
東洋大学の佐藤亜樹(準教授の方だそうです)が書かれたものです。佐藤さんのご専門はソーシャルワークのようですね
この論考が面白な、と思ったのは、ペットロスとそれに向き合うソーシャルワークの可能性について触れられていることです。通常ペットロスへの専門的な対応というとカウンセリングぐらいしか出て来ません。そこから一歩踏み込んで、ソーシャルワークを取り上げている視点が、とても面白い感じました
ペットロスについては、正直、いま誰が何を対応すればよいのか。すべきなのかについて定まったものがありません。ペットロスの言葉は広まったけれど、その次が無いのですね。ペットロス専門のカウンセリングを謳う方もいますが、それも決め手とは言えません。人間のロスであれば、お葬式をし、弔いをするという一定のフォーマットがあり(それすらもいまは少しづつ崩れていますが…)。その過程の中で、ロス(グリーフや喪失の感情、想いなど)を本人も周囲も受け止め。それらを通じて死を徐々にでも受け入れていくというプロセスが存在しています
こうしたプロセスは単に弔いというだけでなく、グリーフケアとして知られるようになり。そのケアに関わる人材やそれを手助けする場も徐々に増えてきています
一方でペットロスはというと。まずペットロスを経験した飼い主さんが集える場ですらごくわずかしかありません。わたしも東京に2か所。大阪で1か所を知っているぐらいです
また獣医師さんとしてペットロスの啓蒙や活動をしている方がこの論文でも紹介されていますが。それ以外の方ではお一人ぐらいしかお名前を知らず。ペットロスという「状態」を診てくれる獣医さんも、人間のお医者さまも、ほとんど知りません(ただし人間のお医者さまに罹るのは、そのロスが重篤な場合です)
ペットロスの対応自体は、ひとに対してのグリーフケアの手法を応用することである程度、出来るとわたしは思っているのですが。現実にそうした動きはまだまだ無く。ましてや、ソーシャルワークの視点からそれを実践されている方は皆無かもれません
その意味で、この論考はとても参考になりました。佐藤さんはこの中で、ペットロスに関わるソーシャルワークとしてこんなことが出来ると書かれています
・ロスを経験した飼い主さんをサポートすることが可能な周囲の人々のリストを作成する
・ ペットの死後の埋葬方法について話し合う機会を提供する
・ペットロスに関する文献を紹介する
またこの他にも飼い主さんのペットロスのケアに繋がるものとして
・悲嘆(グリーフ)カウンセリング
・喪の儀式
・セルフヘルプグループ(当事者による分かち合いの場)
などを挙げられています。いずれも大切な人を亡くした人のケアでも役立つとされているものです
また海外の事例として特にこうしたサポートやケアで重要なものに
・これからペットの死に向きあう飼い主さんへのサポート
つまり「予期悲嘆」に対して専門職が関わるケースの重要性を挙げています。この点はわたしも同意見で、おそらくほぼ全ての飼い主さんが自分よりも先をペットを亡くす可能性があるわけで、このいずれ迎えるだろうお別れにどう向き合うかを支えることは、とても重要だと考えています
ただいずれにせよ、ペットロスに対しての専門職の関わりというのはまだまだ発展途上…ということになるのだと思います
最後になりますが、わたしはペットロスを抱えた方からの相談を受ける際、例えば手元に置いてある遺骨をどうすればよいとか。ペットのことでこんなに悲しんだり苦しんだりしてもよいのでしょうか、といったことを聞かれた時にはいつも
まずは自分の感情に無理に蓋をせずにしたいようにして下さい
悲しんでも、泣いても全然構いません
そして弔い方も何も人のそれと同じようする必要性はありません
ペットなのですから自由に行いましょう
そしてそれを繰り返していく中で自然と、その亡くしたペットとの新しい関係が築かれていくはずです
ただその過程で辛い時や悲しい時は、信頼できる人にその想いを語り、伝えた方がよいと思います
そういう方と出会えると良いですね
とお伝えするようにしています。悲しみや辛さを無理に封印する必要はなく。時にその事実や想いに身を委ね、その心情を吐露する。その繰り返しを経て、亡きペットとの新しい関係を自分の中に築いてく。そのプロセス全体が、ペットロスのケアであり、サポートだと考えているからです
とはいえその過程では、もしかしたら、さまざまな専門家や専門職の手を借りた方がよい場面があるかもしれません。そうした時は、素直に、頼ってよいと思います
ただそのことを理解し、実践できる専門職が圧倒的に少ない。それがいまのペットロスをとりまく状況の一番大きな課題です。こうした論考を参考に、これからも自分の出来ることを拡げていきたいなと、思いました