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AIベンチャーがハードを待たずに量子アルゴリズム開発に挑み続けるその理由

 2024年の年の瀬に発表されたgoogleが開発した量子チップ「willow」やスパコンと量子コンピュータのハイブリッド活用など、量子ハードウェアの進化がここ最近、話題となっています。
 
グリッドでは2017年から量子コンピュータのアルゴリズム研究開発を行っています。
ハードウェアの進化は確実に進んでいますが、完全にエラーを出さずに計算ができるまでには至っていません。そうしたハードの開発を待たずに、なぜグリッドはソフトウェアの研究開発を8年も前から行っているのでしょうか。
AIベンチャーグリッドが挑む量子アルゴリズムの研究開発への想いを代表の曽我部に聞きました。


「量子の時代は必ず来る」と確信し、黎明期から研究着手

―量子コンピュータはいつから始めたのですか?


グリッドでは2015年頃から機械学習のプラットフォームを開発していました。当時、自動微分ライブラリを開発しているのは世界でも数社しかいませんでした。
私たちは彼らと同じものを作るのではなく、差別化するために機械学習に独自のエッセンスを入れたいと思い量子に着目をしていました。ただ、早すぎたというのもあり、量子エッセンスを取り入れることはしませんでしたが、量子アルゴリズムの研究開発だけは続けてきました。
そうした中で、2017年にIBMが5量子ビットの量子コンピュータを開発したとの発表がありました。[h1] 
それまでは、量子コンピュータのハードウェアの実現性が不確かでしたが、IBMが量子ビットの世界を切り拓いたのを見て、「ついにきたか!」と思いました。
すぐに、IBMとコンタクトして、2017年にIBMの実機を用いた研究開発をスタートしました。
 


―2017年は、かなり早いタイミングだったのではと思います。


 
そうですね。当時、AIをやりながら量子という基礎研究をベンチャーが行うなんて、と周囲からは言われましたが「必ず量子の時代は来る」と確信して、研究投資を行いました。
そこからは、現在の機械学習がなぞってきたアルゴリズムの歴史を、量子コンピュータ上でも実現可能かを研究し、理論証明し、量子アルゴリズムの可能性を一歩ずつ切り拓いてきました。
 

突然やってくるブレイクスルーに備えて、継続的な研究が本質理解の鍵


―研究開発を開始してから8年経ちますが、振り返っていかがですか?


アルゴリズムは、ハードが使い物にならないと実際の価値を生み出すことはできません。なので、この8年ハードの開発を待っている状況ではあります。
人によっては、早すぎるという人もいるかもしれません。しかし、ブレイクスルーというのは突然やってきます。生成AIも昔からあった理論を発展させ、突然生まれ、そして爆発的に広がりました。
その突然やってくるブレイクスルーを、その分野でずっと研究していればいち早くキャッチできますし自分たちが切り拓くこともできます。
それにいずれ量子コンピュータが普通に使われる時代が来た時に、アルゴリズムや量子技術の基礎原理の本質を理解しているかどうかというのは、すごく重要なことだと思っています。
とかく、テクノロジーでイノベーションを起こすためには、その技術を根本から理解できているかが、重要な要素の一つです。技術は手段ではありますが、その手段を使いこなし、適応していくためにも進化のプロセスの渦中に居続けるというのは意味があることだと思っています。だからこそ、黎明期から継続的な基礎研究を行っています。
特徴を理解し、限界を理解し、5〜10年後どうなるかもわかった上で、どうやって社会に使うか、が初めてわかります。もう8年やっているので、どういう道具なのかはなんとなく分かっています。
 
そうした蓄積を経て、昨年から実際の産業での応用研究も開始しました。
昨年NEDOで採択された、仮想発電所の電力需給調整の最適化に向けた開発もその一つです。これまでは、量子コンピュータ上でどのような計算が可能なのか、基礎的なアルゴリズムの開発を行っていましたが、今後はさらに実課題に対応した研究を加速化させていきます。
 

ハードの開発に併せて、すぐに計算できるソフトウェアを準備する


 

―AIと量子コンピュータの両軸をもつベンチャーはなかなかいないかと思いますがAIと量子コンピユーターを両方行う意義はなんでしょうか?


機械学習も最適化も量子も、いずれシナジーが出てくると思っています。
テクノロジーの進化によって、社会は確実に良くなっていると思います。世の中が複雑になればなるほど、私たちの身の回りでも複雑な計算が必要なってきます。現在の古典コンピュータでは、将来的には処理しきれないほどの計算が必要になってくるでしょう。そうした時に、量子コンピュータのスピーディな計算能力が必要になると考えています。
 

ーグリッドが描く量子コンピュータの未来を教えてください。


計算が速くなると色々なことができるようになり、あらゆる産業が影響を受けます。複雑な計算を同時に解けるようになることで、私たちの暮らしは快適に、そしてさらに創造的な時間を持てるようになり、より豊かな暮らしが実現できるようになると思います。
ハードウェアも、着実に進歩しています。でも、その時が来るのをただ待っているだけではいけません。
アルゴリズムはハードがなくても、その確らしさはシミュレーションし開発できます。だからこそ、ハードが出来てから開発するのではなく、ハードの完成とともに使えるソフトウェアを準備しておくことが重要であり、そうすることで革新的なイノベーションが使われ続ける一歩を切り開くと思っています。

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