vol.3 ウルシオールの酸素共有
前回では,ウルシオールはラッカーゼが水素を奪うことで,ウルシオールの酸素が二重結合し,同じく水素が奪われたウルシオールと架橋することについて説明した.
今回は,ウルシオールは架橋の過程で2つのウルシオールが酸素を共有し,ジベンゾフランへ変化する過程について説明しようと思う.
何度もしつこいかもしれないが,この六角形はベンゼン環,OHはヒドロキシ基,Rはアルキル基と呼ぶ.そして,酸素が二重結合したものをカルボニル基と呼ぶ.ラッカーゼは水素を奪ってヒドロキシ基をカルボニル基に置換する.この奪う反応のことを置換反応と呼ぶ.
ラッカーゼは活性している間はひたすら水素を奪う.そして,空気中の酸素と反応して還元される.このようなサイクルを酸化還元反応,自動酸化反応と呼ぶ.
ここまでが前回までのおさらい.
ラッカーゼがウルシオールの水素を酸化させることで,ウルシオールはカルボニル基を得る.このとき,ベンゼン環の炭素同士のつながりが不安定になるので,同じ様に不安定なウルシオールと結合する.
このとき,どこが不安定になったかが非常に重要になる.ラッカーゼは水素を奪う.ベンゼン環は周りに水素を纏っている.すなわち,エネルギーさえあればラッカーゼはウルシオールを酸化できることになる.
このエネルギーさえあれば,という話が曲者なので今回は省略する.ラッカーゼは史上最高の超強硬な対応措置を検討している.その対応措置によって,ウルシオールは非常に美しい形に変化することがある.
例えば以上のような例では,ベンゼン環の水素が抜かれたときの図になる.アルキル基を持つベンゼン環をフェニル基と呼ぶ.上図のような状態ではフェニル基が2つ存在する分子をバイフェニルと呼び,非常に安定した分子になる.
ラッカーゼはまだまだ酸化させる.ウルシオールの2つのヒドロキシ基がカルボニル基になると,さらにラッカーゼによって酸化されたときに不均一な分子となる.非常にぐちゃぐちゃする.
もし,バイフェニルの中で幸運にもヒドロキシ基,そして炭素と結合する水素が同時に抜けたとする.このとき,片方のヒドロキシ基と結合した炭素は酸素と二重結合しない.酸素と二重結合するよりも早く,隣の炭素が酸素と結合する.
わかりやすくまたAとBを使うと,Aの炭素はヒドロキシ,Bは水素を持っている.偶然にもAとBが同時に水素を奪われた.このとき,AもBも誰もいなくて不安定な状態になる.しかし,Aの隣の炭素と結合するのは非常に厄介だ.カロリーが高い.それよりも,BはAの酸素と結合したい.結合してしまう.
こうすると,AとBは仲良く酸素を共有することになる.ちょうどバイフェニルの間に酸素がある状態になり,2つのベンゼン環,そしてその間に酸素が結合し,2つのベンゼン環の間に五角形の形が作られる.
このような五角形のことをフラン環と呼ぶ.フラン環は1つの酸素,4つの炭素からなる.ちょうどバイフェニルの間に酸素があるとフラン環ができる.2つのベンゼン環,1つのフラン環があることをジベンゾフランと呼ぶ.
ダイオキシン類の一部では,ベンゼン環で水素の代わりに塩素が結合した形になる.ダイオキシン類の一部もジベンゾフランを持っているが,ウルシオールからできるジベンゾフランは水素,酸素,炭素のみでできる非常に美しい化合物になる.自身を変えず,流れに身を任せている点が非常に美しい.しかも,それが化学結合の中で自然とできる点が素晴らしい.
しかし,アルキル基やヒドロキシ基は非常に大きくて邪魔なので,反対側にそれらがないことが条件になる.そのため,バイフェニルからジベンゾフランはあまり作られない.
ジベンゾフランになっても他に水素がある.ラッカーゼはジベンゾフランも酸化させる.幾重ものウルシオールが結合していく.
次回は不均一な分子になるような結合について説明を加えようと思う.以上.
普段は研究していて生活が厳しいのでサポートしてくれる方がいるととても嬉しいです.生活的な余裕が出ると神が僕の脳に落書きを残してくれるようになります.