妹2

2024/09/20
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妹は20日間帰ってこなかった。
ということになる。

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三度目の帰宅も未遂に終わり、妹は晴れて帰宅未遂常習犯である。
ここまでくると妹への出資者も大変だろう。仮に愛している彼女だとしても、一ヶ月近く養うのは無理があるだろうし、
妹も家で引きこもっていても暇を潰せる人間ではない。何かしたがる。
飲み会とカラオケとお買い物は必須だ。
衣食住の提供は愛している彼女になら喜んでする、みたいな人はいるかもしれないが、
底なしのブランド品への渇望は流石に満たせない。

なので妹はどこかで働いているか、借金をしているか。
借金だとしたら、相手は知人である。妹にはクレジットカードがないので。

服も洗わなくてはならない。着替えを持っていかなかったので、買うことにもなる。
一体。

一応今日も帰宅の予定はある。

親は妹が宗教にはまったに違いないとか言っているが、
いわゆるカルト宗教でないにせよ、お金も恋愛も宗教のごとく依存させるものだと思うので
妹は何かには依存しているだろう。
そうでなければ帰ってこない理由がない。

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ホストとかにハマったらそのホストがいい感じの怪しい夜の仕事を紹介してくれたとかそんなんでは?
と言ったら、母親は私を育てたベビーシッターの話を始めた。

私は勝手に、週に2日くらい来ていたお手伝いさん的な人がホストにハマり、お給料を全額使ってしまって親に10万円貸してくれとか言い始めたから解雇した
のかと思っていたが、

実際は4年間平日はほぼ毎日来ていたらしい。

おそらく3-6歳ごろ。小学生に少しだけかかるくらい。

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保育士的な感じの勉強ができる専門学校を卒業した20歳の千春さんは、ベビーシッターを派遣する会社に就職、我が家に派遣される。
彼女は物覚えや要領が悪かったらしく、人間関係もうまくいかず、半ばクビのような形でそこを退職。
やばいと思った千春母登場、ユキナ家に専属で雇ってくださいと親子で来る。

__いやそこで断れよ
払うお金が同じなら他の人を雇えよ

という未来の私からの祈りは届かず、新卒ではいった会社を即退職するような奴に育児を任せることに。
お給料30万円。

ガラケーの時代である。

私も新卒で入った会社を即辞めているから何か言えるわけではないが、
保育経験がほとんど私が初めての状態の人間関係が会社を辞めるほどうまくいかない性質の20歳の女と私どっちが大事なのよ
という話である。
母親はその20歳の女の方を優先した。

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莫大な資金を得た千春さんは、ある日友達とふとホストクラブに行く。
昨日の話の時点で、完全にホストクラブだったということが確定した。
似たような安いお店とかもあるので、便宜上ホストと認識していたのですが…。
ホストでした。

そうしてハマり、一緒に行った友人の方は一回で飽きたらしい。

その話は母親も雑談がてら聞いていたそうだ。

この時点で、保育経験がほとんど私が初めての状態の人間関係が会社を辞めるほどうまくいかない、ホストにハマってしまうような性格の20歳の女に私を育てさせたことになる。
なあ

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そして毎月30万円のお金がお給料だったのにも関わらず、その上で家族のクレジットカード(ファミリーカード?とか言ってたかな)の限度額500万までお金を使い込んでしまう。

この時点で我が家に勤めて2〜3年っぽい感じだった。
つまり、30万円かける12ヶ月かける3年、1000万円近くと、借金500万円を
3年間で使ったことになる。
千春さんは実家暮らしだったので、生活費をのぞいても1000万円はホストに使ったのではないか。

その時点で母親に相談が来る。
親にバレると怒られるから、500万円貸してくださーい
あと、親から今後怒られないように一人暮らしするから保証人になってくださーい
だったそうで、

保育経験がほとんど私が初めての状態の
人間関係が会社を辞めるほどうまくいかない、
ホストにハマってしまうような性格の
500万円貸してくださいと言ってくる
保証人も頼んでくる
23歳の女

になってもなお、母親は見捨てなかった。
やさしいね

とりあえず千春さんと千春母と話し合い、借金は肩代わり等しないということに。
ここで普通は辞めるだろ、解雇するだろ、と思うも、
千春母は次の就職先が見つかるまでは雇ってくれと頼み込む。
母親はOKを出す。
なぜ。

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でもこのあたりからネグレクトが始まったらしい。
正確には、借金500万円の時点でやっと母親が千春さんの勤務態度に注意を向けた結果、そこでやっと、ホストと長話して私たちにご飯をあげるのを忘れていたとか、そういうミスに気がついたらしい。
今まではそんなに監視してなかったけど、一応注意したらこれよ
って言ってたけど、気がついたのがたまたま初回のミスなはずないじゃん
と思う。

でもこの頃の記憶が全くないので、真偽は不明。
うっすらと、ヒステリックに怒る千春さん、常に誰かに泣きながら、あるいは媚びて電話をする千春さん、眠いからと私たち用の布団で昼寝をする千春さんを覚えている。
私も眠くて床に寝ていたら、ありが1匹迷い込んできていた。
ありだー。

そうして小学生になったばかりの頃くらいまでは千春さんはいた。
500万の借金が分かった時から半年あとで彼女はついに解雇された。

父親は挨拶や態度が悪いからと言っていた。数年前まではこれは子供についた嘘だと思っていたが、
父親と千春さんは入れ替わりで家にいたことと、母親が今の妹の失踪を父親に隠し続けていることと、
父親がお金を使うことを異常に嫌がることを考えると、
多分母親は父親に、いくらで千春さんを雇っていたか言っていなかったし、辞める理由も「小学生でもう鍵を管理できるから」「それに態度も少し悪いし」くらいでとどめていたのだと思う。
父なら借金のある人間は自分の視界から排除する。子供のためではなく、自分の嫌なやつを追い出すという理由でだ。

ちなみに本当の解雇理由は、その半年間でさらに彼女が500万円の限度額までホストに使ってしまったから

ではなく、
そのあとホストに行くお金が流石になくなり。好きなホストの誕生日に手作りのチーズケーキを持っていったら(完全にもうお金を引っ張れない客の挙動じゃん)連絡がつかなくなり、寂しさを埋めるために始めた有料チャットサービス(チャットレディの男の人がお金もらえる版的なのらしい)で外科医と知り合い、
チャットをするためにプリペイドポイントをコンビニで買い、いよいよ会うことになったが急患、次こそ!の後にまた急患、というのを繰り返したから
でもなく、

それでまたお金を貸してくださいと言ったから
でもなく、

彼女がなんと二人目の外科医と知り合って、こっちは優しいから本当に会えるんだわ
と言い出したところで
こいつ馬鹿では?と
やっと解雇を決めたらしい。

彼女の転落は見ていておもしろかったわ

と母親は言った。

私は、あの〜〜、それに育てられた幼児の気持ちとかってどう思います?
と言ってみたが、

はは笑

で終わった。多分母親は人の感情を理解する力がない。

私は月30万円で虐待サービスを受けさせてもらっていたのか、とか考えて憂鬱である。

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だから私は異常に両親に厳しく振る舞いを直されたのだと思う。
多分ホスト狂いのヒステリックさとかそういうのが言動に出ていたから。

父親からしたら、私がちょうど小学生になったくらいで千春さんは借金や精神的な不安定さの諸々のピークを迎えたので、
それに育てられた私が周りの子供と自分の子供が明らかに違うのだ、と直面させられたのだろうし、
父親も勉強を押し付けられて殴られて育っているので、そういう形で私を障害者だと思って殴っていたのだと思う。
宿題しない、授業を聞かない、字がやたら汚い、忘れ物が多い、ヒステリック、
愛想が悪い、一度言ったことを一度で覚えない、周りの子供と違う。

私の母親は私たち自体に興味がなさそうなのに、
私はなんで、子供が唯一の理解者なタイプの母親に育てられたような気がしていたのだろう
こんなに愛してるのになんで!と言われた偽の記憶が存在する気がする
と思っていたのだが、
おそらくそれは会社でもホストでもうまくいかなかった千春さんの唯一の、否定しない話し相手が私だったからだろう。

母親はそういう、人が人に与える精神的な影響とかには全く興味がなさそうな人だ。
理解できないのだと思う。
だから私に、どうして衣食住満足に与えているのにちゃんと育たなかったのかしら〜失敗作ね
と言ったんだろうし、
父親からしたら小学生で明らかな”差”を見せつけてきた娘はもう殴ってでも健常者にせねばと思ったのだろう。

ぎゃー

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妹はなぜか闇っぽくはならなかった。多分、千春さんの話を理解できないで寝まくっていたからだ。
私はその頃から相槌を覚えたのかもしれない。
いつも通り千春さんが寝ている布団の横の床で寝ている中で、夢の中の父親に川に連れていってもらっていた記憶がある。

子供自体に興味がなく、自分は完璧に衣食住と喜ぶものを与えているのに明るく育つどころか反応を示さない娘を平気で失敗作という生みの親と、

理解者がいなくて幼児にすら泣きながら話す借金1000万円のホスト狂いの母親2と、

粗が見つかった時と自分の機嫌が悪い時は知能のない障害者に当たって発散していた父親という人々に育てられて、

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その割にまともに育ってない???????????
その割には迷惑度の低い人間じゃない??????
その割には高学歴高収入じゃない??????????

もう その割には と言い訳しないと今日のところはやっていられない。

よくぐれずにいい子に(見かけだけでも)育ちました。

あと、裏側から見たらあんまよろしくなく見えるのかもだけど
一応、私と話した人は楽しんで喜んでくれてます

無理をしない能力は人よりかなり劣っているんだけど、
それでもなんか、人に嫌な思いや苦しみを与えるだけの存在にならなくてよかったと思います。
きっと無意識に誰かの嫌なことはしていると思うんだけど、
でも喜んでくれている人がいるのも確かなのです。

私より嘘や演技や人の顔色を伺うのが上手い人はあまり見ないから
きっと私が 相手が喜んでるなと分かったらあっているのです。

たぶん…。

私の割には頑張りました。

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