コロナウイルス連作短編その120「図書室の先生が死んじゃった」
抱えているのはバスケットボール、目の前にいるのは私の母さん。アパートの前、無造作におかれて、いつだってかすかに揺れているゴールポスト。こんな状況でのおあそび1on1だって、母さんはいつだって真剣そのものだ。彼女は、ほんとう、運動神経というやつがバツグンである。昔は陸上の短距離ランナーとして並みいる速度の女たちを、突風さながら薙ぎはらっていったらしい。野球、サッカー、ラクロス、新体操。興味あったスポーツにはひととおり挑戦して、プロですら圧倒する活躍をみせたとか、みせてないとか