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「終わらせること」から始まるトランジション

「トランジションコラム」では、グリーンズジョブのメンバーが「トランジション(人生のうつりかわり期)」についてのコラムを掲載していきます。

今回の執筆は、プロジェクトマネージャーの長島里奈です。

トランジションの正体とは。

トランジションはつかみどころがない。
「トランジット(乗り継ぎ)」ならば、切り替えの時期が明確にある感じがする。
退職や転職、独立、転居など節目と呼べるような大きな転機なら、その瞬間が点として存在するので分かりやすい。

しかし、これはトランジション理論を提唱するウィリアム・ブリッジズに言わせると「チェンジ(変化)」であって、その一点を指すことはトランジションではないとされている。

ブリッジズ曰くトランジションとは、古い状態から離れて、新しい状態に飛び込むこと、そして心理的な変化がもたらす新しい状況について理解を深め、受け入れるプロセスだという。
そのため、トランジションは古い状態を終わらせることがはじめのステップとして

(1)終わり
(2) ニュートラルゾーン
(3) 新たな始まり

 
の3つの過程からなるものだとされている。

私にとってもトランジションとは、じわじわとずっと続いているもので、いきなり大きなビッグウェーブがきてすべてが変わるとか、そういう類のものではないと感じる。

なぜなら、仕事に、住む街に、住居に、誰と過ごすか、どう暮らすのか。
ひとつが変化したところで、そのあとにも悩みや葛藤は付きまとい続けるのだから。

とくに私の場合は「終わり」に費やす期間が長く、転職や今いる環境・関係を手放すことにも、とっても時間がかかる。
だいたい心境が変わり始めて行動を起こすまでに1年以上はかかっている。

なにかを始めることよりも終わらせることの方がずっとむずかしい。
人はなかなかコンフォートゾーンから抜け出すことができないし、喪失感や空虚感、不安や焦りを感じることは大きなストレスにもなるからだ。

いつかくるチャンスのために足腰を鍛える

前職の先輩が「チャンスがきたらいつでもダッシュできるように、日頃から足腰を鍛えておく」という言葉を言っていた。プレゼンに添えられていた寝そべるうさぎとそれを横目に全速力で疾走する亀のイラストをよく覚えている。
その先輩は有言実行で、チャンスが到来した時にまったく別の業界へ颯爽と転職していった。

私もその先輩の教えを胸に、自分なりに足腰を鍛えながら「これだ!」と思えたら爆速ダッシュで走り出すのだけど、それまでの溜め(つまり終わりに向かう期間)が非常に長いのだ。
それまでは筋トレというよりも、ずっと屈伸運動を続けているような感じで、日々の行いが筋力アップにつながっている明確な手応えはない。

しかし、毎日の小さな変化と大きくは変わらない日々を積み重ねながらも、実は内側ではしなやかさを溜めているようなのだ。そして、そのしなりが一点を超えたときにようやくスイッチが入って思い切り全力ダッシュ(変化)することができる。

この一点を超えるタイミングは、言い換えると「吹っ切れる」ということに近いと考えている。
様々な人の生き方や価値観に触れて自分の筋肉をほぐしながらスタート地点まで準備していくことが「終わりのプロセス」だとしたら、過去の習慣、自身の生き方、考え方や価値観、組織や人との関係性などをさっぱりと手放して次に進む瞬間がスタートになる。

では、どうしたら「終わり」を始めて変化を起こすことができるのか。

終わりの始め方

一見効果があるのかわからない屈伸運動を続けていると、あるとき急に「吹っ切れ」が起きる。
その時期がいつやってくるのかはまったく予測がつかないのだが、とにかくまずは新しく出会った人と話したり、気になっていた本を読んだり、行きたかった場所に足を運んでみたりと、挑戦したかった趣味を始めてみたりと、気が向いたことを一つずつやってみる。

遠回りに思えるが、終わりに納得するには時間をかけることも必要だ。
それに日々忙しくしていると、自分の感覚が錆びついてしまっていることもある。
そうして自分の感覚に従って過ごしているうちに、それらを行ったときに何を感じているのかアンテナが張れるようになってくる。

すでに、この時点で終わりへのプロセスは少しずつ進んでいるはずなので、定期的に静かに一人になれる時間と場所を確保して自分の気持ちに向き合ってみる。お風呂でも、寝る前の時間でも、近くの公園を散歩するでもいい。

そのときに余裕があれば、自分はこれから何を手放すことになるのかもあわせて考えたい。終わりに伴って起こるであろう事象や喪失感を予想して客観視することで、徐々に自分に必要のなくなったことを終わらせてもいいと思えるようになってくるだろう。

このときに気を付けているのが、何かを終わらせようとするときに、人は自分のこれからの選択を正当化するためにこれまでいた環境の悪い点をあげがちになってしまうということ。
そして、そのマインドだけでは、変化への選択や順応がなかなかうまくいかないということである。
転職の場合も現状の職場への不満だけでやめていくのではなく、何かしら前向きな捉え方に転換して次に進んだ方が結果的にいい始まりを迎えられると思う。

トランジションの3つのステップでも、終わりのステップが一番むずかしいと言われている。
次に向かうための終わりは、きっといまこの瞬間にも始まっている。
これからも焦らずじっくりとしなやかさを溜めながら進んでいきたい。

執筆:長島里奈
ディレクター。企画・ディレクション・場づくりなどをしています。人と一緒に予測できないコトを起こしていくのが好きです。千葉と鳥取でちょっと農的な二拠点暮らし。

グリーンズジョブは「自分をいかす仕事に出会う」トランジションコミュニティです。持続可能な社会につながる全国の求人情報を紹介したり、人生のうつりかわり期についてともに考えるコミュニティの運営をしながら、自分をいかして働きたいと考える人のトランジションを応援します。


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