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こびりつく不安定な意味【ワンフレーズレコメンド 1月25日】

※この記事は、企画「ワンフレーズレコメンド」1月25日分のものです。

こんにちは、抹茶ミントです。

今回は、企画「ワンフレーズレコメンド」の記事として書かせてもらいます。
「ワンフレーズレコメンド」とは、楽曲における数秒間のフレーズに焦点を当ててレコメンドする、という企画。

↓概要リンク

面白くない訳がない!!!

企画ははやくも後半戦。前回は、メイさん(@usg_LitH2)の記事でした↓

いやいや、最高です。何気なく聴き流していた歌詞が、一気に身近なものになる感覚。こんな素晴らしい記事の後続が、抹茶ミントなんかでいいのかしら…

前置きが長くなりました。はじめます!

はじめに

今回紹介するのは、崎山蒼志「五月雨」という楽曲の

素晴らしき日々の途中 こびりつく不安定な意味で

というところ。1番Bメロの後半(1B'って言うんですか?)の頭の4小節です。下の動画では、0:47〜0:53の部分。

(読者の皆さんには、歌とギターのみのライブ感を味わって欲しいので、敢えてTHE FIRST TAKEバージョンを載せています)

この部分を、①歌詞②メロディー③コードの観点で語っていこうと思います。長くなりますがご容赦ください、、


歌詞について

すばらしき日々の途中 こびりつく不安定な夜に
美しい声の針を 静かに泪でぬらすように
すばらしき日々の途中 こびりつく不安定な意味で
美しい声の針を 静かに泪でぬらして

これはBメロの歌詞です。この曲は、全体を通して抽象的・暗喩的な言葉が多いですが、この部分はそれが顕著に表れています。正直、よく意味が分からないですが、無理やり解釈してみます。以下、私のありったけの国語力を用いた考察です…。

まず、「美しい声の針」=「綺麗に聞こえるが人を傷つけてしまう言葉」と解釈する。だとしたら、針を泪で濡らしてしまうのは何故か。おそらく、針を人に刺してしまった罪悪感、後悔のせいだと考えられる。
何故なら、その「美しい声の針」は、「素晴らしき日々の途中」の「こびりつく不安定な意味」によって出てしまうから。自分でもよく分からない、落ち着かない感情。そのような、不安定な感情のせいで、人を傷つけてしまう。そして、不安定な感情は、素晴らしい日々にこびりついている。楽しい日常にも引っ付いて離れない、つまり誰も避けることができない。

なんて解釈してみましたが、正直なところ、歌詞の意味自体はあんまり重要じゃないと思っていて(ここまで溜めといて、すみません)。私がいちばんレコメンドしたいのは「こびりつく」というワードセンスです。

「不安定」=壊れやすい、脆い、落ち着かない、といったマイナスのイメージな言葉。この言葉に対して、「こびりつく」という、取りたくても離れない、といったニュアンスのある言葉を当てているんです。上記の考察でいうと、「人を傷つけてしまうことの、複雑で自分でもよく分からない不安定な意味(理由)は、日常から切り離したいが、くっついて離れない」といった意味になります。こうした微妙な意味の違いを、一言で表現しているのがこの「こびりつく」という言葉なんですよね。

さらに、発音の目線でみると、k音で楽曲に鋭さを与えているような気もします。語感の良さ、メロとの収まりも最高。これほど上手くハマった表現は無い、といっても過言ではないと思います。


メロディーについて

全編通して最高なメロディーですが、「こびりつく不安定な意味で」のところに注目します。(もっかい貼っときます↓0:50〜0:53)

…分かりますか?歌詞の「不安定な」のところで、メロディーラインが一気に上昇していますが、このメロディーはちょっと掴みづらいですよね?口ずさみにくい、というか。単純にドレミで表せないような、微妙な音階のようにも聴き取れます。
さらに、リズムも若干タメていて、歌う時の崎山さんの匙加減に任せているように感じます。
こんな具合に、「不安定な」の部分はかなり不自然なメロディーになっていることが分かります。何が言いたいのか、察しました?

そう、「不安定な」という歌詞の部分のメロディーが、文字通り「不安定」になっているのです。

歌詞と音階が一致する、非常にキモチいい瞬間です。意図的にこうしたのかは分かりませんが、一瞬のあいだに込められた拘り、あるいは遊び心のようなものを感じます…。


コードについて

ギター弾き語りのこの曲において、伴奏の役割を担うギター。そのコードについて、レコメンドしてみます。もちろん、私はプロの音楽家では無いので、そんなに深い話は出来ませんが、自分なりに良さを語っていこうと思います。

まず、Bメロ前半の「すばらしき日々の途中 こびりつく不安定な夜に」のところのコードは、下記の通り。

C△7 →→ D7 →→ Bm7(11) →→ Em7

対して、後半「すばらしき日々の途中 こびりつく不安定な意味で」のところは、下記の通り。上記のところとは、メロディーはほとんど変わりません。

Csus2 →→ Dsus4 →D → Bm7(11) → B7 → Em7 →A7

あれ、なんか増えた…!?

前半と後半、メロディー・歌詞は、ほとんど繰り返しなのに、コードがだいぶ変わっています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

前半は、「ジャッジャッ」といったカッティング奏法。それに伴い、開放弦を使わない押さえ方で弾いています。コードも、メジャー7thや11thなど、いわゆる「都会的な響き」と評されるものが目立ちます。何となく、圧迫感があり、内向きで閉じこもったような感覚がしませんか?

それに対して後半。ジャカジャカとストロークするのに合わせて、開放弦を用い、より響きが広がる弾き方をしています。前半と、進行の大枠は同じですが、テンション(加える音)が異なり、幻想的な雰囲気が増しているようにも思います。狭い場所から、広い草原のようなところに出て来たような、開放感がありますよね。

このように、「都会的・内向きな前半」に対し、「幻想的・開放感のある後半」と、素晴らしい対比がなされています。そのため、同じBメロの中で印象をガラッと変え、そのままサビへ向かって盛り上がる、という流れが生まれています。

そして何より凄いのが、この対比をギターのコードの違いだけで表現しているということです。他の楽器の音を加えるのでは無く、ギター1本のみで、異なる世界観を描き分ける。天才です、崎山さん…。


おわりに

以上、3点について詳しく書いてみました。いかがだったでしょうか?

…なっがいね!

すいません。まあ書きたいことは全部詰め込んだので、満足です。この記事を読んでくれた方の、楽曲の聴き方が少しでも変わったら何よりです、、

それにしても、これまで「なんか凄い!」としか思ってなかった一瞬を、どうにか言葉にするという経験は、とても楽しかったです。この場を用意してくださった、主催者のハグルマルマさん、ほんっとうに、ありがとうございました!

次回はともろさん(@tormo0840)。どんな記事になるのか、楽しみです!

それでは!

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