#023 農業×防災 第3話:西の南海トラフ地震、東の富士山噴火?!その時の被害予測について
みなさん、こんにちは。
いつもブログを見てくださり、ありがとうございます。
前回は、「鎌田浩毅著 生き抜くための地震学(ちくま書店)」を参考にし、過去の歴史から伺える今度発生し得る南海トラフ巨大地震が、いつ・どのように発生するかについてお話しました。
今回はその場合の被害予測について、南海トラフ巨大地震と連動する可能性が考えられる富士山噴火のリスクも合わせてもう少し深堀してお話したいと思います。
南海トラフ巨大地震
繰り返しになりますが、改めて南海トラフ巨大地震の被害予測範囲を示します。下の二枚の図は国土交通省気象庁が公開している南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さになります。https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/nteq/assumption.html
この想定によれば、南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。
また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されています。
最大震度7が予想される静岡県西部、愛知、三重は東日本と西日本をつなぐ大動脈であると共に、日本の基幹産業の重要拠点です。
人口も多く、静岡県の静岡市と浜松市、愛知県の名古屋市と、3個の政令指定都市を抱える中日本の心臓部であると言えます。のみならず、近畿、四国、宮崎県沿岸部と、非常に広範囲に被害が予想される事が南海トラフ巨大地震の脅威を物語っています。
非常に極端な話、西日本の太平洋沿岸地域ほぼ全てが被害に遭うという事になります。
これまでお話した通り、地震そのものの規模(発生エネルギー)は東日本大震災と同等と仮定した場合であっても、人口や経済規模から被害はそれ以上になる事が予想されています。
内閣府の情報の纏めによると、以下の試算がされています。
※数値は最大予測
短い動画でも情報公開されているので、実際にご覧になっていただければと思います。
「南海トラフ巨大地震編 被害想定の全体像編(2分28秒)」
2024年1月1日に発生した「令和六年能登半島地震」もそうですが、道路やその他インフラに甚大な被害があり、今なお道路の寸断、地域の孤立があり、迅速な支援物資の提供や復旧作業が進んでいない状況と思います。
能登半島という特殊な地形が追い打ちを掛けている側面もあるかもしれませんが、やはり発生し得る災害に対して被害を予測し、可能な限りその被害を減らせるように出来る限り国土を強靭化していくことは重要な点だと思います。
そして、それを多くの国民が自分事として知るという事がなによりも大事だと思います。
西の南海トラフ地震、東の富士山噴火?!
南海トラフ巨大地震の被害予測を見ただけでも背筋が凍るような思いですが、それに加えて可能性を避けて通れないのが、富士山噴火の連動です。
富士山噴火もまた、南海トラフ地震と深い関連があります。
なぜかというと、前回の富士山の噴火は約300年前の宝永噴火です。
この時の噴火のきっかけとなったのが南海トラフ巨大地震だと言われています。1707年、宝永地震(M8.6)はほぼ同時に南海地震、東南海地震、東海地震が発生しています。その49日後、1707年12月16日に富士山の宝永火口から大噴火が始まったと記録されています。
この噴火によって噴出された火山灰は偏西風に乗り、富士山より東側の関東一円に甚大な被害をもたらしたと言われています。
当時の江戸では5cmの火山灰が降り積もり、昼間も暗く、火山灰による肺疾患が流行り、冷害から農作物への影響も起きたようです。
また、被害地域を管轄していた当時の小田原藩は、その甚大な被害から自力での地域復興は無理と判断し、領地の半分を幕府に差し出し救済を求めたとも言われています。
更に火山灰などが河川に堆積する事によって発生する洪水被害(泥流)によって被害周辺地域をその後何年も悩ませる事になったとも言われています。
それらの可能性は現在でも同様で、更には交通インフラへの影響は勿論、電子機器への影響、発電機やエンジン等への空気供給等、様々な機械への影響がある事は間違いありません。
従って、富士山噴火による今日の社会生活への被害は、明らかに過去のそれ以上に甚大なものになることが予想されます。
南海トラフ巨大地震で西日本が壊滅状態になり、富士山噴火によって関東・首都圏の首都機能が完全麻痺。
加えて首都直下地震の可能性もある事を忘れてはなりません。※関東大震災は1923年(大正12年)9月1日で、昨年は丁度100年目。
これまで当たり前であった文明社会から一転、原始時代のような生活になってしまう事もあり得ます。まさに我が国の国家存亡の危機です。
これは決して大げさな話ではない事がこれまでお読みいただいた皆様にはご理解いただけると思います。
火山噴火の脅威
ここで改めて、富士山に限らず火山噴火による影響について簡単に整理したいと思います。尚、例によって内容については下記の書籍を参考にさせていただきました。
一部は上記でも述べましたが、火山の噴火という現象は直接的、間接的、限定範囲、広範囲、あらゆる被害をもたらします。
■火山灰:
紙や炭の燃えカスの灰とは異なり、軽石や岩石が細かく砕かれたガラスのかけら。ガラスからなる火山灰その物自体は化学的な毒性はないものの、人体にとっては有害。気管支や肺への付着による喘息、炎症による肺炎などの疾患、のど、目の痛み、鼻づまり等が発生。また、家屋、インフラ設備などへの堆積、電子機器、交通インフラへの影響。
■溶岩流:
高温のマグマの流れによる火災被害、家屋倒壊、交通インフラの寸断。
■噴石、火山弾:
爆発的な噴火によって放出される岩石。噴石はこれまで火口を埋めていた岩石そのもの。
一方、火山弾とは噴火の勢いで空中に放出されたまだ軟らかいマグマが飛散したもの。ラグビーボールのような空気抵抗が少ない形状の場合、飛散距離は増加する。被害範囲は数キロメートルとされる。
■火砕流、火砕サージ:
火砕流とはマグマの破片やガス、石片などの様々な物質が一団となって流れる現象であり、マグマとは違い煙のような見かけをしているが、高速、高温の極めて危険な現象。速さは時速100kmを超え、温度は500℃を超す。被害範囲は最大数十キロメートルとされる。
火砕サージとは火砕流とは若干異なり、体積や密度が若干小さく、いわば高温の砂嵐のような現象。しかし温度は建物を焼き尽くすに十分で、火砕流とほぼ同じものと考えていても差し支えない。
■泥流:
火山灰などを含む土砂が水と共に斜面を流れる現象。河川などに堆積物が蓄積されることによって長期間、二次被害の影響を受ける。
■山体崩壊:
噴火によって山そのものが崩壊する現象。山を構成していた岩石がなだれとなり周辺一帯を埋め尽くす。特に富士山に限った場合、大量の岩石が駿河湾、あるいは相模湾にまで至る可能性が考えられている。また、その際に山体内部に密閉されていた高温、高圧のガスが一気に大気放出される事で、
”ブラスト”と呼ばれる水蒸気爆発を起こす可能性もある。
■寒冷化:
火山灰が大気中に大量に広く飛散する事によって太陽光が遮断され、寒冷化が引き起こされる。
如何でしたでしょうか。
南海トラフ巨大地震と富士山噴火による具体的な被害イメージができたと思います。
次回からはメインテーマである「農業×防災」に少しずつ話題を近づけていきながら、「それでは一体、具体的にどのように備えるか」について考えていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
続く・・・