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乗りと勢いと小鳥と鈴と 23.10.02
燻燃器の使い方
急転直下、秋になった。最低気温が10℃に迫る。さすがに今日は、ミンミンゼミの声が消えた。むしろ今まで毎日鳴いていたのがどうかしてるのだが。
秋といえば煙の匂い。そこかしこの田んぼから、籾殻を焼く煙がのぼっている。ただ、どうも見たところ、半分以上獣避けの風で、きれいな燻炭が焼けている気配がない。僕も例年、色々と工夫をしてみたものの、やはり野良で安定した焼きようを維持するのはかなり難しいと思っている。そこで今年から、縦窯式の燻炭焼き器を導入してみたのだが、「誰が焼いても手間無く、均一、確実」との謳い文句の割に、なかなかどうして若干の癖はある。こんなウン十万もする巨大ドラム缶を入手しようと思う人の方が少数派だろうが、今日はその若干のコツを書いていこうと思う。
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全景としてはこんな代物で、上から着火した種火が、最下部の通気口めがけて降下していく仕組みになっている。下へと進む燃焼部で酸素が消費されて、それより上の炭化した部分は酸欠で消火する実に合理的なシステムだ。最後は、バネ仕掛けの通気口に挟まれた小枝が炭化して折れ、蓋が閉まる事で自動消火してくれる。つまり、正しく使えば、仕事をしながらでも勝手に焼ける。しかも、同時にモミ酢(木酢)も採れる、なかなかに夢の塊に見える。
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しかし、説明書通りに焼いても、今ひとつきれいに焼けないケースが続いた。ふんわり入れてみたり、突きしめてみたり。熱が逃げているのかと、缶の内側に巻きダンボールを入れてみたりするものの、焼け残りは無くならない。ネット情報に頼ろうにも、そもそも情報自体が皆無と言って良い状況で、コツも何も分かったものではない。しょうがないので、ここは燻炭焼きの基本に戻ってみることにした。
燻炭焼きの基本は、とにかく充分に種火をおこすこと。野良で焼く時も、種火に籾殻を被せたら消えてしまったパターンの失敗が、特に湿気のある条件でままある。そこで。
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ちょっと、薪やおがくずまで入れて、ガンガンに焚いてみた。公式では籾殻の表面に、灯油250〜300ccを散布して着火することになっているものの、それでは火力の持続力がいまいちのようなのだ。灯油は使うにしても、籾殻より燃え易く火力の出る物に、まずしっかりと着火して、充分熾火を熾して、それを火かき棒なりで全体にならしてから蓋をすると安定した燃焼になった。本当に熱くて、長時間手を出せないレベルの火力が理想だったのではないだろうか。
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ちなみに、着火の際の蓋の隙間も、公式では上の写真くらいだが、下の写真くらいは開けた方が、薪なども燃やす場合には良さそうだ。理想を言えば、すでに熾火になった種火を、バケツ一杯でも籾殻の上に敷き詰めたら早そうだが。
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種火の火力が強いと、出来上がりの量は少なく、採れるモミ酢の量も少ないが、焼き上がりまでの時間は短く、焼け残りもほとんど無くなる。
もし、蓋をしてから燃焼が不安定だった場合は、一旦蓋をずらしてから、下部の通気口からドライヤーで送風すると、熾火に火が回って回復する。ただし、ヤケド注意だ。おそらくは、常時送風した方が均一な炭化になりそうだが、過熱しすぎて缶自体の寿命が縮みそうなのが心配なところ。手間要らずの趣旨にも反するので、結局のところ、種火の高火力が唯一のコツと言えそうだ。ワラでも竹でも、手近な物で大丈夫なので。
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そしてついに、小屋の屋根が完成した。棟押さえに使ったオンデュリンだが、さすがだ。訳あって2回に分けて注文したのだが、ロットによってサイズが “まるで” 違う。あからさまにずれて見えるが、こうした物だと達観せねばなるまい。嫌なら大人しく国産品を使うべきだ。
これで、この小屋が冬の間のプチ温室に使える。庭の、ちょっとしたアクセントにもなってくれると思っているが。
それにしても、ああ、疲れた。
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