不意に吹き出した風の寒い日、午後の森にて。新緑の隙間と移り気な春空を、怖ず怖ずと埋めてゆくのが見えるようだ。幾人か連れ立った我々は、その内の一本の大樹の“価値”の話をしていた。そう遠く無い昔、一面の採草地だった頃から小山の上にはその木があり、その名残か、今も渡り鳥たちの一里塚になっている。虫害を受け、衰弱が見える幹は、材木としては二束三文。とりわけて文化財としての価値も無い。近い将来、植物としての生涯を終え、静かに朽ちてゆくことだろう。見事に映る樹様からは裏腹に、残念ながら
1月22日、意外と良い天気。 年の瀬の空気感を微塵も感じること無く、めでたさも無いままズルズルと始まった新年は、ただの一度も冬を感じることも無いままダラダラと何処かへ行った。 今は、いつだ? 去年の今頃は、有無も言わさぬ捻じ伏せるが如き深雪に埋もれて、何やらかえって安らいだ諦めを感じながらも、陥落したハウスの下50cmにもぐずり込んでは野菜を引きずり出していたのだ。すっかり呆けた頭の中から、今やるべきでない様な思いつきがポロポロと溢れては二度と帰ることも無く消えて行く。落ち着
ひと風吹くごとに冷えてゆく、みぞれ降る一日。例年よりだいぶ遅れて、一冬の薪の運び込みを済ませた。薪小屋とは言え半分以上はヤギのアジトであり、言わずもがなまず順調には事が進まない。ネコグルマの進路妨害、薪の失敬、しつこく頭突き。ああ、楽しそうでなによりだ! そういえば今運んでいる薪は、一昨年の春に集めた物だ。そう、この子がうちに来たその時の事。そう気がついて、しばし感慨に浸った。色々と学ぶ事、気付く事が多かった気がする。 最近になってヤギを飼いだした知人が、「もう、寂しが
ハタケシメジ継続計画 10月14日、晴れのち曇り。朝は冷えたが、なんだか暖かい日だった。辺りの木々も、チラホラと色づき、思いのほか綺麗な秋が、ちゃんと、進んでいることに安心するやら気が急くやら。少々遅れ気味だった栗の実も、ここへ来て、ポツリポツリと落ち出した。今年は、すぐ隣のヤギ小屋で、四六時中籾殻燻炭を焼いているせいか、猪たちは今のところまだ遠巻きに見ているだけの様子。毎晩の渋皮煮が、当面のあいだ日課になりそうだ。 さて、こちらも遅ればせながら、嬉しい秋の味覚、ハタケシ
煙突掃除 10月10日、荒れ模様。 今日は朝から、意外と本気の雨。やりたい事はあるのだが、晴れたからと手を出せば後悔しそうだ。ひっきりなしに通り過ぎる雲が、やたらと悪さをする。 先日の屋根工事で出た古トタンを、知人のよろずやさんに引き取ってもらって、しばらく雨に当てていたビニールハウスの雨よけを貼り直す。さっさと籾殻燻炭を窯から取り出し、明日の為に新しい籾殻をセット。その度に、ちゃんと降られる。秋らしいと言えば秋らしいか。 しょうがないので、室内からだけでも煙突掃除をす
燻燃器の使い方 急転直下、秋になった。最低気温が10℃に迫る。さすがに今日は、ミンミンゼミの声が消えた。むしろ今まで毎日鳴いていたのがどうかしてるのだが。 秋といえば煙の匂い。そこかしこの田んぼから、籾殻を焼く煙がのぼっている。ただ、どうも見たところ、半分以上獣避けの風で、きれいな燻炭が焼けている気配がない。僕も例年、色々と工夫をしてみたものの、やはり野良で安定した焼きようを維持するのはかなり難しいと思っている。そこで今年から、縦窯式の燻炭焼き器を導入してみたのだが、「誰が
思うようにはいかぬ時期もあり チクショーめ。秋らしい日和が来ないからと、しびれをきらして始めた屋根の葺き替え工事。今日もまたお約束のようにしつこい雨が降る。びしょ濡れになりながらムリを重ねていたら風邪をひいた。寝込んでいた数日間は、それはもう汗ばむような良い天気だったのは言うまでもない。 杉林の中で、珍しい物を見つけた。上の写真でわかる人はいるだろうか? 日本に自生はしないが、日本固有の食材。なんとゴボウだ。なぜ生えているのか、全く不明だが、立派な株だった。少々採取が遅れ
屋根を取っ替える日。 いつ手をつけようかと思案していた小屋のトタン屋根。9月に入って暑さも落ちつき、稲刈り日和の良い秋の日にでもと。そう思ったのが悪かったような不安定な天候が今日も続く。確かに涼しくはあるものの、それでもやっぱり例年のお盆過ぎ頃の気温から進展は無く、入道崩れの雲が裏山に湧いては通り雨を投げてよこす。 はて、これは本当に季節が遅いのか、それとも不意な気まぐれか。パッとしない秋の畑を眺めては、どうしたものか決めかねる日々。知らない土地に来たようだ。 しかしなが
6月7日 梅雨の晴れ間 いやに長かった五月も去って、庭の小果樹の実が矢継ぎ早に熟れ始めた。 昨冬の豪雪で、けちょんけちょんになっていることもあって放置していたハスカップの茂みも、いい加減手を加える必要が出てきた。 蜂の巣に気を付けながら小一時間、下草と古枝を整理した。今年は蜂の巣は無かったけれど、まだ今の時期ならば女王蜂一匹。これが、夏になってから首を突っ込もうものなら、痛い!が5、6倍になるというものだ。 それはそれとして、下草取りには時期があり、それなりの勘所もある。