子育てママはやっぱり多様。だから働く「気持ち」の共有が大切。
子育て女性が中心となって運営する会社の組織デザインを担当する紺野です。
本日、全社のZOOMミーティングが終わって、結論がでました。
7月から保育園児ママと小学生ママで、預ってくれる時間が異なる状況になったので、その不公平感をどうするかがミーティングのテーマです。
横浜では、保育園・幼稚園は平常に戻ったので、保育園児ママは夕方まで働けます。
一方、小学校は5時間と短縮授業なので、子供が早く帰ってくるので、小学生ママは、午後には退社しないといけない状況になってしまいました。
そして、小学校の理由で時短になるために、小学生ママには「特別時間有給休暇」を申請できる権利があります。
簡単にいえば、
小学生ママは、早くあがれたうえに、給与を全額もらえる。
保育園児ママは、小学生ママの分まで働かないといけないのに、給与は変わらない。
つまり、特別時間有給休暇を一部の人だけに付与すべきかどうか?というのがミーティングの論点です。
なぜ、そのようなことを社員が話し合って問題にしているの?
ここまで読まれて、そう思う人もいるかもしれません。
一般の会社員なら、上が決めれば、それに従うしかないんでしょ、と思うかもしれませんね。
でも、本当にそのような上意下達の階層型組織でないと会社は成り立たないのでしょうか?
子育てをしている人が中心となって運営する会社なのだから、子育てをしている人が一番働きやすいように組織をデザインすればいいという発想から、私たちの会社は組織の在り方を見直しました。
なので、話の前提として、私たちの会社がどのような組織形態で運営されているか説明させていただきます。
まず経営層がいて、正社員がいて、子育てママはパートという形では、まったくありません。
私たちの会社には役職がありません。リーダーも、責任者もいません。
代表取締役はおいていますが、決定権はあまりありません。
社員はチームで機能します。一人に一業務だと、休んだときに支障がでるのと、個人への負担感も大きくなるので、一つの仕事を2人以上で行うという原則にしています。
また、チームを超えて、いつくかの業務もこなせるマルチサポーター的な役割をつくっています。(主に人事や経理などのスタッフ部門がいざとなれば、現場にヘルプに入るというイメージです。この組織の垣根をこえて、助け合うというのは、現場の判断で臨機応変に対応しています)
子育てをしている人が集まる会社の一番の問題は、いつ、誰が休むかわからないことです。
なので、誰が休んでも、会社が機能する柔軟な組織にデザインしておかないといけません。
リーダーを仮にたてたとしても、リーダーの人ですら、休むことはあるのです。だからフラットに、誰もが意志決定をし、実行に移せる組織を目指しています。
今のやり方が当たり前になってきた今から振り返ると、以前勤めていた大手企業の組織は、やはり健常者の男性がフルに勤務することを前提に組織がデザインされていたんだとつくづく感じます。(法律や行政の制度にも、それは感じますが)
だから、子育てをしている人が、そのような組織で健常者の男性と比較されると、時短正社員とか、パートとかの扱いになってしまうのは当然だと思うのです。
でも、子育てをしているからといって、その人の能力が劣っているわけでも、やる気がないわけでもないので、むしろ、その人を活かす「組織のデザイン」に問題があると思っています。
というわけで、私たちの会社は、役職がなくフラットです。8時間勤務を前提にもしていませんし、正社員や非正規社員の区別もありません。でもママサークルの延長などではなく、ちゃんと人事も経理もCSも企画もチームとして機能し、対外的に売上を上げ、利益を出しています。外見的には年商〇億円のちゃんとした会社です。
そのうえで、もとに話を戻すと、自分達の待遇も、自分達で決めることにしています。(給料がどのように決まるかは、別の機会にお話ししますが、上司がいないので人事査定もありません。)
自分達の間に不公平が生じることを、どのように感じているか、意見を出し合いました。
小学生ママ
「実家が近いし、上の子が下の子の面倒も見れるので、そんなに早退しなくても働けるかも。むしろチームメンバーの〇〇ちゃん(幼稚園児ママ)に仕事が増えて遅くなると、バス通勤なので、混雑したバスに子どもと一緒に乗らないといけなくなることが心配。特別有給休暇はなくてもいい。」
小学生ママ
「私は実家が遠いので、預かってくれる人が周りにいなくて正直無理して出社はできないと思う。利用区分2やスポット利用も検討しているけど、受け入れ枠が少なそうで。やはり経済的なことを考えると特別有給休暇は欲しいけど、むしろ仕事ができないわけではないので、在宅で仕事ができればいいけど、私だけ在宅勤務はどうなのかな・・」
小学生ママ
「うちの子は、おやつでもおいておけば、ちょっとぐらいなら一人でお留守番もできるかな。そうすれば午後3時ぐらいまでは働けると思うけど、夏休みが問題で、そこは出勤できないかもしれないので利用区分2の利用も検討したけど、利用区分2はお迎えが原則なので、お迎えに行かないといけないことを考えるとちょっと・・・。」
小学生ママ
「ひとりでお留守番をさせるのは、私はできないので、やっぱり家にいてあげたい。何かあったら心配だし、何かあってからじゃ取り返しがつかないので。」
小学生ママ
「わたしは、普段より朝早く出勤して、その分で自分の勤務時間をキープできます。」
一方
保育園児ママ
「わたしだってインフルエンザのときは、迷惑かけるし、お互い様だと思っているし、今回の件で、小学生ママがでれないのは、本人のせいじゃないから、それで特別有給休暇をもらってもずるいとも思わないし、もらって当然じゃないですか」
保育園児ママ
「早退は仕方ないことなんだから、むしろ残った少ない人で業務をまわせるように、業務量を減らす手立てを考えるとかできないですか?業務の締め時間を少し前倒しして、後ろにずれこまないようにするとか」
保育園児ママ
「特別有給休暇を与える分、残ってカバーする人に割り増し賃金を出すとかは?人件費がトータルで増えないのであればですけど。」
いろいろな意見がでて、最後は多数決で、
小学生ママで早退する人は特別有給休暇を付与し、3時以降に残る人には割増賃金を払う
という結論になりました。
会社的にも、特別有給休暇なら、あとで補填されるし、それで浮く人件費を午後3時以降の人に分配すれば、トータル人件費は増えず、みんな納得していただけます。
しかし、この結論よりも
この会社に働きにくる背景を、みんなで共有できたことが良かった気がします。
みんな少しずつ、我慢や妥協しながら、会社に来ていることがわかり、それをみんなが気遣い合っていることが再確認できたことが何より大きな収穫でした。
子育ている人ほど多様な人達はいないと実感しました。
ダイバーシティと聞くと、多国籍とか、LGBTとか、障害者とかイメージしてしまうけど
子育てをしている人ほど、子育ての支援環境や、ワークライフバランスの考え方や、子どもの成長過程や、子どもの人数など、抱えているものが違いすぎる多様な人たちはいないのではないでしょうか?
それを「子育て女性」とひとくくりにして、「時短勤務」とか「時短正社員」程度の制度で組織に復帰させるのは、無理矢理すぎるのではないでしょうか。
組織の柔軟性を高め、その人が役に立たない状況を決して作らず、活かしていける組織のデザインをもっと追及したいと思った一日でした。