いろ日記 12【5/19-5/24】 -日記小説-
ある人の ある5月の日記です。
●5月19日 「 とうめい 」
坂野さんによく会います。
会おうとしているわけではないのですが。
むしろ、会わないように気を付けています。
坂野さんだけに会わないようにというわけではないですが。
透明人間のように、いてもいないみたいに働いて、そういう自分の働き方を気に入っています。
坂野さんのあいさつを聞くたびに、私のことが見える人がいるんだなと驚きの気持ちが浮びます。
次は私からあいさつしてみようかな。
●5月20日 「 グリーン・チェック・ハンカチ 」
ちょっとよくわからないのですが。ちょっと書いてみます。
今日も朝から坂野さんにお会いしまして、今日は私からあいさつすることができました。
何か話したいなと思った時に、手元のグリーンのチェックのハンカチが目に入って、
「いつもピシッときれいなハンカチをお持ちですね」と言うと、「入社してすぐのころ、上司に仕事の基本はハンカチだって言われたんですよ」と坂野さん。
坂野さんはアイロンがけが好きで、私はアイロンが苦手だからいつもタオルハンカチ、そんな話をしていたら、なぜか「僕がアイロンをかけてもいいですか?」と。
坂野さんに私のハンカチのアイロンをかけてもらうことになりました。ノーアイロンハンカチを預けて、アイロンハンカチをお返しいただくということです。
5分もない間のできごと。
よくわからないことが起こったので、ちょっと今日はもう寝ようと思います。
●5月21日 「 風の色 」
今日は落ち着いて、引き出しの奥の方にしまってあるハンカチからどれにしようか選びました。
洗濯をして、しっかりピンと伸ばして干しました。
風の色に軽くそよぐ5枚のハンカチが、そわそわする気持ちをなだめてくれました。
●5月22日 「 青空色の袋 」
今日は、ハンカチを入れる紙袋に悩む一日でした。
何でもいいと思いながら、袋を手にとっては並べてく繰り返しました。
結果、チョコレート屋さんの青空色の袋にしました。
ていねいにハンカチを袋に入れて、バッグの横に置いて、明日の用意ができました。
●5月23日 「 ネイビーの背中 」
坂野さんにハンカチをお渡ししました。
ひょいと受け取って、風のように去っていきました。
ふふふ。ネイビーのスーツの背中を見送って、何かおかしくて少し笑ってしまいました。
●5月24日 「 ひよこいろ 」
新しいバスタオル。とてもフワフワで落ち着きます。
ひよこいろのタオルで、さらさら髪を拭いて、頭が軽くなりました。
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