いろ日記 24【8/7-8/12】 -日記小説-
ある人の ある8月の日記です。
●8月7日 「 紺色のノート 」
今日は、いろ日記を読み返してみました。
書き始めてあっという間に5か月がたっていました。
何もなさそうな日にも美しい色があったり、本当にひねり出して書いたような日もあったり、坂野さんや南さんと出会ったり、おもしろかったです。
ひっそりとした夜みたいな紺色の表紙につつまれて、その時の空気やにおいを思い出していました。
●8月8日 「 マンダリン・オレンジ・アイス・いろ 」
雲のむこうに夕日がにじんで見えて、マンダリンアイスがとろりととけているみたいでした。
ゆっくりゆっくり歩いて帰りました。
●8月9日 「 つぶやき色 」
今日はハンカチお渡しの日。南ちゃんがいても、お渡ししてひとことふたことお話できるようになりました。南ちゃんは聞いていないそうなので。
坂野さんはいつも私たちに「今日もありがとうございます」とか「きれいにしてもらってありがとうございます」とか、声をかけてくれます。それが仕事だから当たり前のことをしているだけなのだけど、そう言ってもらえるのはうれしいし励みになります。
坂野さんが去った後、南ちゃんは「これは本当にいいやつだな、さちこちゃん。」と、ぼそっとつぶやきにきます。
●8月10日 「 ひとみいろ 」
早速持ってきてくれて、今日はハンカチ受け取りの日。
ありがとうございます。そうきちんと目を見てお伝えするように心がけています。照れくさいけれど。
当たり前のようにハンカチのアイロンがけを続けてもらっているけれど、何も返せていないし、当たり前なことでは絶対ないです。
●8月11日 「 青白 」
夜、窓ガラスをたたく音が何度かして、恐る恐るカーテンの隙間からそっとのぞくと、セミでした。何度も何度もぶつかってしまうので、電気を消して部屋を暗くしてみました。しばらくすると、ぶつかる音が止まりました。カーテンを開いてみると、もうそこにセミの姿はなくて、空には青白い満月が浮かんでいました。月のまわりには光の線がはっきりと見えるほど、強く輝いていました。私は、わぁきれい、とつぶやいていました。
●8月12日 「 スマイルカラー 」
掃除しているビルの企業さんがお休みなので、私も坂野さんと同じお休みです。
坂野さんとお休みの日をどう過ごすかおはなししました。
どこかに遊びに行きたいですね、って。
毎日一緒に遊びませんか、って。
明日はひとまず会って、何をするか一緒に考えることになりました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?