いろ日記 17【6/25-6/30】 -日記小説-
ある人の ある6月の日記です。
●6月25日 「 夜の町を照らす光の色 」
今日のいろ日記が書けなくて、日記帳を開いてぼーっと考えていたら、サイレンの音が聞こえてきました。
しばらくすると、何台ものサイレンの音が近づいて遠くに消えていきました。
怖くなって目を閉じると、光がいくつも通り過ぎていくのが見えました。
●6月26日 「 クリーミーマンゴー色 」
暑くて暑くてたまらなくて、とけそうになりながらアイスを買いに行きました。
マンゴーアイスにしました。
急いで帰って食べると、あっというまにからっぽになってしまいました。
クリーミーなマンゴー色は、とてもおいしくて、夏の楽しさを感じさせてくれました。
夏はまだこれから。
楽しい夏にしたい、そんな気持ちになりました。
●6月27日 「 ピンク色の赤信号 」
本部から連絡があって、7月から新しくアルバイトの方が入ることになったそうです。
喜ぶべきことなのかもしれませんが、不安しかありません、自分に対して。
仕事相手が私で申し訳ないです。
今日の雨は、とても静かに静かに降る雨で、傘に落ちても音がしませんでした。
町もやさしく見えて、赤信号もピンク色に見えました。
私の動揺を落ち着けるのにちょうどいいお天気でした。ありがとう。
●6月28日 「 便せんの空白の色 」
今日はハンカチお渡しの日。
今は私一人だからタイミングをみてお渡しできるんだもんな。
来月からはどうなるんだろう。
そう坂野さんに話したかったけど、話せませんでした。
普通に話すって、とてもむずかしいです。
おねがいします、ってハンカチを渡すので精一杯でした。
●6月29日 「 くもりいろ 」
今日は雨の予報だったけど、降らずにくもりでした。
なので、お昼ごはんは公園で食べようとベンチにすわったら、ビルから坂野さんと女性たちが出てくるのが見えて、目をそらそうとしたら、坂野さんは気付くのが早くて、こちらに手を振ってくれました。
私にそんなことしなくていいのになと思って、ごはんを食べていたら、ひょこひょこと坂野さんがコンビニの袋を手にやってきました。「公園ランチいいですね。おとなり、おじゃまします。」と、当たり前のようにとなりのベンチにすわって食べ始めました。
思い切って、7月からバイトの方が来ることを話してみました。「よかったじゃないですか」と喜んでくれました。「でも、大川さんとお話しにくくなっちゃうかなー」とも言われていました。「明日ハンカチ持ってきますね」と仕事に戻られました。
思えばこれだけの時間ずっと一緒にいるのははじめてのことでした。
たのしかったな。
●6月30日 「 流れる文字の色 」
今日はハンカチ受け取りの日。
「いつも僕が話してばかりだったので、昨日は大川さんのお話聞けてうれしかったです。」と、ハンカチの袋と一緒に一枚のメモを渡されました。
坂野さんの連絡先が書いてありました。坂野さんの字をはじめて見ました。さらさらと流れるような美しい数字やアルファベットが並んでいました。
「また一緒にごはん食べたいなと思いました。よかったら連絡ください。」と、坂野さん。
これって今日、連絡した方がいいんだよね?
このあと、メールしてみます。
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