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偉大な父へ感謝を込めて
誰が撮ってくれたのかは分からない、父の写真。
アルバムをめくる中で見つけた、絵を描く姿を写した一枚です。
絵を描いている写真はほとんど無くて、わたくしにとってかけがえのない宝物となりました。
こんな素敵な写真を撮ってプリントして下さり感謝します。
父は、10月24日に89歳で旅立ちました。
母が亡くなった後の4年間、父と暮らし始めた日々のことを思い出します。
たくさん話をしたり、時には全然話さない日が続いたり、価値観の違いで喧嘩をしたこともありました。
けれども、その喧嘩があったからこそ本音で向き合うことができ、二人の間の壁が取り払われ、お互いを深く理解し合えたのだと今では思います。
父は定年退職後、画家に転身しました。
そのきっかけは、定年のお祝いとして私が贈ったパステル水彩鉛筆だと何度も話してくれました。
最初はスケッチブックに水彩画を描いていましたが、やがて大きなキャンバスに油絵で風景を描くようになり、師にも恵まれ技術もどんどん向上。
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公募展では最優秀賞や知事賞をはじめ数々の賞を受賞し、海外のコンペでも数多く入賞。
中には、北京万博のポスターに採用された作品もありました。
父が亡くなった後、ふと目に入る眼鏡、茶碗、箸、新聞を読むための虫眼鏡、愛用のジャケット、パジャマなど使っていたものを見るたび、涙が溢れる日々でした。こんなに引きずるとは。
しかし、そうした時間を十分に噛み締めた後、不思議と世界が違って見えるようになった気がします。
四十九日の法要も終え、ようやく少しずつ日常を取り戻しつつある今日この頃です。
この写真の中の父は、まるで大自然と、そして自分自身と真剣に向き合っているように見えます。
父の人生は、間違いなく豊かで幸せなものであり、やり残したことなど何一つなかったのだと、心から思えるのです。
支えてくださった父の仲間たち、応援してくださった皆さまへ感謝の思いを込めて、この記録を残したいと思います。
父さん、本当にありがとうございました。