君がネット民に味方しても、ネット民は君に味方してくれない
一度大学の友達をYouTubeに上げる動画制作に誘ったことがある。
「YouTubeってさ、スカッとジャパンとか隣国中傷動画とか、ポピュリズムが酷いじゃん？俺たちで一石を投じようぜ」と話す私に、彼はこう問うてきたのである。
「ん？嫌韓動画はわかるけど、スカッとする動画の何が悪いの？スカッと成敗される側から与えられるストレスが、成敗の爽快感を上回るから？」
結論から言えば、スカッとジャパンが愚昧な悪趣味である理由は、自省がなさすぎる点に尽きる。自分も成敗される側に回ったことはないだろうか？他人を自覚なく傷つけた可能性はないだろうか？そう過去の言動を振り替えなければ、よい人間に成長することはできないのだ。過去にもこう書いている。
確かにリアルでの友達は思いやりが足りなかったり、仲間を叩くような発言をしたら反発されるかもしれない。恥ずかしい真似をして笑われるかもしれない。殴り合いの喧嘩まで発展するかもしれない。リアルの友達とは、そういう挫折がつきものだ。しかしそれを乗り越えて仲直りしてこそ、人間的な成長があるのだ。
ウザい〇〇に正義の鉄槌【スカッと】みたいな動画を見ていては、いつまで経っても自分が悪いふるまいをした可能性を顧みたりする機会を逃してしまう。そうやってネットに没入して、自省したり、友達とぶつかったりすることからいつまでも逃げ回っていては、いつまでも成長しない。
だからインターネットのインフルエンサーは常々幼稚なのだ。友達に怒られたり、嫌がられたり、逆に褒められたりした経験がないから、いつまで経っても取り巻きを作ってオラつく幼稚園児みたいな真似しかできないのである。
（ポリコレが行き過ぎた場面は多々あれど、）ネット民がポリコレそのものに苛烈なアレルギー反応を示すのはこれが理由だ。リアルでは自省とコミュニティへの定量的でない献身が求められる。しかしネットは、求められた時点でいつでも離れられる。ゆえに、自省が必要な空間に成長していくネットの変化に反発しているのである。
要は、「スカッとジャパン」的動画はネット民の幼稚さの縮図なのだ。いつまで経っても自分は成敗する側に立って断罪し続けるのだと盲信し、断罪される側に回る発想自体を持たないのである。
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最近、「5chまとめ」動画が流行っている。自分と同じ意見の声を聞くのは居心地がいいだろう。しかしこの風潮は、良くない方向にも使われ始めた。最も有名な例は斎藤元彦の世論操作を折田楓が受注した事件だろう。オールドメディアのヘンコーホードーに憤慨していらっしゃるネット民は、自陣営の内情をNoteで公開してしまうような、やっすい広告屋の世論操作にコロッと操られてしまったのである。
中でも目に余るのは、社会的弱者を同じスキームで攻撃する事例群だ。例えば水俣病の患者を「被害者ぶるのはうんざりだ」と電話攻撃したり、自衛隊内の性加害を告発した女性をさも活動家のように中傷したりしたことなど、枚挙に暇がない。
5chまとめ動画がお好きな皆さんは、場合によってはそういう動画をご覧になったこともあるかもしれない。最悪の場合、その動画の風潮に乗って一緒に被害者を叩いたかもしれない――。
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ネット民は石丸伸二に乗って市議会議員を叩いておきながら、自分たち石丸信者が叩かれると「なんで参政権を行使しただけで批判されなければいけないの？」とお気持ちを表明する。ネット民は賃金引き上げに失敗した労働組合の愚痴を吐露しておきながら、自分が組合活動に誘われると「活動家にオルグされた！迷惑！！」と被害者ヅラをするのだ。
ネット民の本質とは、フリーライダーなのだ。
だからジャニーズ事務所を擁護したり、NPO法人を攻撃したりするのだ。私たちが推すアイドルが裏で犯されていたって知ったことじゃないよ。俺たちが使う商品の工場裏で公害が発生していたって知ったことじゃねぇよ。
同じ理屈で、彼らは消防団や労働組合への参加を拒絶するのである。
「NPO法人はか弱い少女を搾取して、風俗で自立する道を妨害している！」などと、それっぽい理屈を触れ回るかもしれない。しかしそれは、そうやってNPO法人を潰して再び路頭に迷った女性たちと、安い金でヤるために言っているのだ。フリーライダーたちは消費するというインセンティブなく、献身することなど絶対にしない。
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ネット史に刻まれてきた数々の炎上を通じて学べる教訓がある。
ある日君が事故で車椅子生活者になったとしよう。君が障害児の親となったとしよう。君が要介護者となったとしよう。君が同性と恋に落ちたとしよう。君が性別違和に気づいたとしよう。君が公害の被害者になったとしよう。君が性的に襲われたとしよう。君が貧困生活に陥ったとしよう。
ネット民が君の味方になってくれることは絶対にない。
ネット民は君の落ち度をググって、「お前の自己責任でしょ」「なんで私たちがあなたの尻拭いをしなきゃいけないの？」「私たちは被害者ヅラされてポリコレ棒を振るわれることにうんざりしているんだ」などとわめきたて、君を助けない理由を滔々と吐き続けるだろう。
君の地元には級友がやっている消防団があるかもしれない。あるいは職場には同僚がやってる労働組合があるかもしれない。君がしっかりと強い仲を築いていれば、きっと彼らは君を助けてくれるに違いない。火が出ればすぐにホースをもって駆けつけてくれるし、賃金が低すぎれば弁護士と一緒に戦ってくれるだろう。
しかしそれらの温かい共助の輪を冷笑する道を選び、気楽なフリーライダーの井戸端会議に身を置いてしまったら、どんなに内輪ノリに付き合って味方しても、苦境に陥った瞬間見放されてしまう。自分がコミュニティに少し献身し、苦しい時にそのコミュニティが恩返しをしてくれる。そういう人間らしい助け合いは「コスパが悪い」と無下にしてきた連中なのだから。
余談だが、ネット民が「モテない俺らに女をあてがえ」などと喚くほどにモテないのも、これが理由である。ネットに没入すればするほど、人はフリーライダーになっていくのだ。だからネットの男女論では、「男はこれをやってくれない」「女は家事をやるべきだ」と家事を押し付けあうのである。彼らに「家族のために献身する」という選択肢はない。そんな人間がモテる筈がないのだ。
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ネットのコミュニティで成功すればリアルで上手くいかないと以前にも述べた。
ネットでの交友と現実社会での友愛はトレードオフの関係にあるのだと思う。私がこれだけ説明しても、君が温かい共助の輪ではなくフリーライダーの便所の落書き大会に参加したいなら、それは君の自由である。しかしこれだけは覚えておいてほしい。
そこからは自己責任だぞ