毎週ショートショートnote【激辛の鏡】
激辛ラーメン専門店がオープンした。カウンター席だけの細長い店で、ひとりずつに仕切りがあり、目の前に鏡が貼り付けられてあった。オーナーによると「ほら、激辛だからいっぱい汗かいて食べ終わったあと大変でしょ? とくに女性には化粧直しに良いかと思ってね」ということらしい。
連日、激辛好きが集まって来てすぐに行列ができる繁盛店になった。
オーナーには別の狙いがあった。激辛好きな人たちは、ストレスを抱えている人が多いという。自己承認欲求の強い人も多い。辛み成分が快楽ホルモンを分泌してストレスを解消し、鏡に映る激辛と格闘している自分を見ながら、自らが承認することでさらに欲求が満たされるに違いない。それが見事当たったのだ。
2号店、3号店がオープンした頃、急に客足が途絶えてしまった。どういうことだ? 激辛好きの潜在数はまだいるはずだ。激辛にハマってしまったら抜け出せなくなるのに、皆どこへ行ってしまったのか? 焦る店長たち。
その答えはすぐに判明した。客たちが激辛ラーメンに飽き始めたとみるや、鏡付き激辛カレー店を次々出店し始めた者が現れたのである。
激辛い世の中だ。次に来るのはいったい何の激辛だろう? いや、むしろ激甘か?
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