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毎週ショートショートnote【ええねん会議】
「先生、ええねんええねんて言ってるよな」
「そうだな。ずーっとええねんて。ちょっと気になるな」
予備校の日本史の授業中。現代から過去へ遡るという先生の講義に興味を持って受講しているが、このええねんには首をかしげてしまう。すると、ある女子が「先生!」と手を挙げた。
「なんだね、何か質問かな?」
「唐突で申し訳ありませんが、先生は関西出身ですか?」
「そうだけど、それが何か?」
「どうりで。先生は先程からもう20回もええねんとおっしゃってますが、正しくはえいねんですよね」
「え? それは済まない。気をつけるよ。ありがとう」
それから先生は意識して発音するように、えいねんと改めた。
「すごいな、あの子」
「あの子、知ってるよ。名前が栄子というんだけどさ、ええこええこと呼ばれるたびに、違います! 私はえいこです!とムキになって訂正するんだよ」
「彼女に何があったんだ?」
「さぁ。ただ小耳に挟んだ話では、女子と口論になって、あんたなんかAカップじゃんて言われたことにえらく怒ってたらしいよ」
「なるほど。それでええとえいに敏感なのか?」
「そこは聞くに聞けないなあ」
『そこ!私語禁止だぞ!会議なら授業の後にしてくれないか!』
「はいっ、すいません」「・・怒られちゃった」
奈良時代が終わった。開墾した土地の永久所有を認めるという墾田永年私財法の講義だった。ちなみに、期限は無しさ(743年)で、ええねん。
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