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毎週ショートショートnote【横断幕中耳炎】

 医療の進歩による高齢化の反面、人口減が原因の医師・看護師不足で医療体制は末期的状況だ。医療従事者の過重労働に呼応するように高齢者の姥捨山化現象が起きている。より長く生きられる人を優先するという余命選択の時代には、高齢者が軽い症状で病院にかかると煙たがられるのだ。
 
 「また来たの?」「耳が痛くてねえ」「中耳炎は鎮痛剤飲んどけばいいって言いましたよ? まだ薬あるでしょ?」「それがどこかへ行ってしまって」   「薬が歩いて出て行ったわけだ。追加の薬を出すから無くさないでよ」
 医師は患者に見向きもせずパソコンと会話して終了。かつて患者は大量の薬を持ち帰っていたが、今や国の医療費負担削減を名目にもらえる薬は少なくなった。「無くした人には保険で薬は出せないので実費で買ってね」
 
 高齢者には受難の時代だ。65歳未満専門病院も出現した。全国各地で『中耳炎にも人権を!』の横断幕を先頭に、高齢者のデモ行進が行われている。
 
 

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