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風景 シーン2 空を泳ぐ巨大魚

私は五階の住人だから、周りの建物の屋上を見下ろせる。

南側の建物の屋上には、夕暮れ時、巨大魚が出現する。

赤くてつやつやな鱗たちは、妖精の魔法の粉を散らすように金色を反射して、夢の中みたいだ。

私は体育座りをして、それを見ている。

右目の端で、金色に染められたレースカーテンが、呼吸するみたいに窓の外に行っては帰ってくる。

両目の中で、巨大魚の尾鰭が寄せては返し、波をつくりだす。

涙が表面に張ったみたいに潤む軽やかな空色が、どんどん深く、海の底に沈んでいく。

漂う雲でハナミズキとライラックが花を閉じると、巨大魚は屋上の上空から泳ぎ出す。

きっと、黄昏れの只中にある屋上へ移動していったんだろう。

ひらめく尾鰭が消えた後、瞬く星たちが、巨大魚の余波を空にとどめている。

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