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二見くんの日々 7 七夕
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乗り継ぎの合間、時間があったから
駅を出てみた。
するとなんだか奇妙に人が多くて
お肉を焼いているようないい匂いと煙が漂っている。
近くにあった幟を見ると、なるほど七夕祭りが行われているらしい。
人の波に乗り、両脇に屋台が並ぶ歩行者天国を進んでいく。
焼き鳥、焼きそば、わたあめ、かき氷、カレー…
あっ唐揚げ串。
どこかの飲食店が出店している唐揚げ串がとてもおいしそうで、購入する。
ふわりとにんにくの風味がする醤油だれが浸みていて香ばしい。5つがあっという間に胃の中に消えてしまった。
食欲が満ちた所で、また人の波へ戻る。
流れに乗って歩いていると、隣を歩いていた男の人に話かけられた。
「1人で来られてるんですか?」
「はい、そうです」
「僕も1人なんです。お祭りって、1人だとちょっと寂しくて」
「そうですね。人の群れの中に1人でいるときは本当にひとりになった気がします」
彼も遠方から来ていると言う。お互い次の列車の時間があったので、少し横に並んで歩いたあと、さよならした。どうぞよい旅を。
僕は神社のほうへ向かう。提灯が緋色に点り、ますます人が増えていく。
歩行者天国と化し、電気が入っていない信号の立つ交差点を夕日が染めはじめる。
柔らかい黄金色を反射する地面から視線を上げると、そこにはマンションの間に大きな笹と七夕飾りがあった。
色取り取りな短冊がハチミツ色の空に包まれ、記された願いたちが上空へとのぼっていくようだった。
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