電波の前世記憶26
『私、心が広いから待ってあげる』
ステラの言葉が頭にこだまする。
(それってつまりは待たせてるって事だよな…)
正直に言ってステラが好きだ。他の女と結ばれる事なんて考えた事も無い。だがそれをただ伝えた所でステラの心に響くのだろうか?
ステラの一途さに甘えていた。ステラはずっと前から待っていたのに、それを傷つけた事はもはや取り返しがつかない。だが。
(女の子の心の掴み方がわかんねえ…)
戦災孤児からレンジャーになるまで戦闘訓練漬だったゲイルには荷が重過ぎた。
『混乱するな、現実に気を切り替えろ』
教官の教えを思いだし、食料探索に集中する。まずはご飯だ。それもステラが待っている。
すると。木をかきわけた先に一羽の大型の鳥を発見した。どうやら飛べない種らしく翼が退化している。鳥はゲイルの接近に驚いて二足歩行で立ち去った。良く見ると地面にその鳥のものらしい巣がある。その中にある物を拾い上げてゲイルは思った。
(とりあえず、ご機嫌をとってみよう)
「じゃーん!」
「何それ、卵!?」
「その通り!」
ゲイルの手のひらよりも大きい卵が3つ。ステラが目を丸くする。
「これで何か甘い物を作ります!」
「甘い物!?」
ステラの顔が輝く。ゲイルは内心ガッツポーズをしながら調理に挑んだ。
…とはいっても、溶き卵を湯煎で半熟にした物に、木から作ったシロップをかけただけの物になった。
「ミルクが無いからプリンは無理だったが、これなら味は近いかと…」
「とにかく、食べましょ」
「そうだな」
スプーンで一口食べてみると。
「美味い!コクがある!」
「口の中でとろける…」
「卵だから栄養価も高いし…」
その時、ゲイルに名案が浮かんだ。
「鳥を捕まえて飼育しよう!上手くすれば毎日卵料理が食べられるぞ!」
「賛成!」
早速ゲイルは、巣に戻って来ていた鳥を捕獲した。
数日後。
「残念な事が判明しました。
この鳥は雄でした」
「あらまあ」
「端末によれば、雄と雌で交互に卵を暖める習性があるらしい」
「卵を産まない訳ね…」
鳥は元の場所に返す事になった。ステラが鳥に話しかける。
「奥さんを大事にするのよ、元気でね」
「鳥にわかるのか?それ」
ステラはさらりと答えた。
「お兄ちゃん、
鳥には求愛行動があってね
その後に交尾するのよ」
「………。」
鳥以下の烙印を押されてしまったゲイルだった。