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『極悪女王』と「ガラスの仮面」

主役はゆりやんだけど


まだまだ『極悪女王」の話題を。

ベビーのフェイスのクラッシュ・ギャルズが主役でも不思議はないが、ひねりが足りない。
ヒールのダンプを主役に。
パズルの最後のピースがはまった。
とはいえ、あのクラッシュ・ギャルズが登場するにあたり、配役や演技に中途半端は許されない。ご本人方もファンも。

プロレスができる女優さんはなかなかいない。女優さんがレスラーに見える演技をしなければならない。身体を極限まで酷使する女子プロレスは、演技だけでは追いつかない。

身体を作り、技を覚え、そして芝居をする。
ハードルは高い。難攻不落に思える。
しかし、役者という人種は来たオファー、受けたオーディションが難しければ難しいほど燃えるのだ。
そのうえ、時間も予算もたっぷりのNetflixの作品である。
抜擢されれば何があっても根性(死語ですがまさにぴったりの言葉なので)でしがみつく。

長与千種役の唐田えりかは、まるで長与だった。リング上の明るさもオーラもあふれ出る表情も、若い頃の長与に似ていた。
可愛くて、動きが俊敏で、つい目で追ってしまう女の子。
ライオネス飛鳥役の剛力彩芽の演技も素晴らしかった。剛力は頭がとても良い人なのだろう。
シャープな芝居、身のこなしが飛鳥にぴったりだった。
画面の二人は本当にクラッシュ・ギャルズだったのだ。

「ガラスの仮面」みたいだ

視聴後興奮は冷めず、YouTubeを漁るとクラッシュ・ギャルズの周年記念イベントを見つけた。
そこにゆりやん、唐田、剛力がゲストで登場する。
剛力の受け答えは満点。にこやかに美しく、撮影のことを語る。
唐田ははにかみながら、ちょっとおどおどと、自分の言葉を探しがながら。

5人で「炎の聖書(と書いてバイブルと読む)」を歌って踊った。

剛力は飛鳥とぴったりシンクロしていて、さすがにダンスもうまい。周囲に目配りし、空気も読む。
唐田は、ダンスの振り付けは飛ばす、歌詞はしどろもどろ、びっくりするほど何もできない。

映像ではあんな壮絶な芝居(プロレス含む)をしていて、おぼこ娘みたいな唐田は、反則じゃないか。なんだ、この落差。
ネックブリッジからジャンプで起き上がり、はずむようにプロレスしていた剛力のそつのない、牡丹のようなあでやかさはどうだ。優雅で美しいじゃないか。
なんだ、この二人は。
まるで「ガラスの仮面」の姫川亜弓と北島マヤみたいじゃないか。

そういう見方をすると『極悪女王』がまた違った作品に思えてくる。
貧しい生まれ育ちだが無意識天才女優の北島マヤと富裕層でサラブレッドの姫川亜弓。
俄然、わかりやすいのはコンプレックスのかたまり北島マヤだ。
いつも「ダメだなあ、私」と落ち込んでいる。「でも、亜弓さんに追いつきたい」と情熱を燃やす。めちゃ素直に。
そんな誰が見ても万能な、映画監督の父親と大女優の母親、豪邸とばあやがいる姫川亜弓の敗北感の強さ。
実はこちらの方がこじれている。
誰に褒められてもまったく、ちっとも嬉しがらない。
亜弓を取り巻くものを通してしか、皆は感心しないからだ。
唯一、北島マヤに勝ったかも!? と感じた時だけ歓喜の表情をちらりと見せるが、
秒で
天然天才のマヤに打ち砕かれる。
亜弓の目は白目になり、恐ろしげに悔しがる。

タイプが違う。だから魅かれる

クラッシュギャルズのイベントであるリングの上で、挙動不審な動きをしながらも笑顔で「炎の聖書」をやりきった唐田は北島マヤのようだった。
あちこちに気配りしながらドレスのまま歌って踊った剛力は姫川亜弓だ。
シャープに踊る剛力が観衆の目を集めたと思った瞬間、タコダンスになった唐田に観衆の目が奪われる。
これは優劣ではない。
どちらもタイプの違う優秀な女優さんだということ。
同じ訓練をして、同じ脚本で役を作り、同じリングで戦い、芝居をした。
お互いを認め合った役者がリングの上にいる。

「ガラスの仮面」はある意味、女子のプロレスなのだな、と思った。

こじつけるような感想だが、昭和を過ごしたさまざまな出来事やアイテムはこうして私の中でシンクロし、落ち着いていく。
(敬称略)

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