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M-1 2024を見て|絶対評価と相対評価

12/22(日)、M-1グランプリ2024の決勝戦を拝見しました。
大学のころお笑いをかじっていた身としては、この上ない楽しみの1つです。元々組んでいた相方が出ていたり、後輩が出ていたりと近しい人が漫才を披露する姿を生放送で見るのは、
・単純に楽しみ!
ということに加えて、
・ネタをミスせずやりきってほしい!
という緊張感もあります。

M-1グランプリでは、2017年大会から笑神籤(えみくじ)という、
当日ネタ順が発表されるシステムを導入しています。

私がこれまで緊張するタイミングは、
・漫才披露中の「ネタをミスせずやりきってほしい!」
に加えて、
・笑神籤(えみくじ)のタイミングで「前半に(特にトップバッター)で引かれないでほしい!」
という感情も大きくありました。

しかし、前回大会~本大会にかけてこの緊張感が少し減っていったように感じます。
「前回大会で令和ロマンがトップバッターから優勝した」
という事実から、ネタ順が関係ない!?と感じているのではありません。

ネタ順が左右されないように感じるこの感情の違和感を、私なりに考えてみました。

前提として、芸人さんに対してリスペクトしかなく、ネタに対して何かを言うつもりもなければ、審査員や大会そのものに対して何か言うつもりもありません。

あくまで私が感じた「ネタ順が左右されなくなってきている」と感じる背景、つまりは相対評価→絶対評価に近づいている状況の私見を述べます。


ネタ順が強く影響した時代

今までは、ネタ順が与える影響は大きく、よい順番でネタをすること、が運を含めて結果に大きく左右されていました。

これはネタの質が高くても、ネタ順によっては、ウケが大きく出ないという、芸人さんにとっては死活問題。

そのため、本大会が始まる前に、別の芸人さんが出てきて前説をするなど、観覧客をあたためるという時間があります。

M-1グランプリでも前説として、BKBさんやくまだまさしさんが出ているそうです。
2006年にチュートリアルさんが優勝した大会では、前説として出たロシアンモンキー(2014年解散)という芸人が、会場を大爆笑させ、伝説の前説ともいわれているそうです。

客のあたたまりが低いと、前半のネタ順の組がウケ量に影響が出る…
ネタの質が良くてもウケない現象は芸人泣かせですね…

お笑いが一般化

これに対して、前回大会程から特にネタ順の影響が少なく、相対評価→絶対評価になってきている、M-1として新たな現象は、「お笑いが市民権を得てきている」という時代背景も重なると考えます。

・M-1 エントリー数の増加
ほぼアマチュアのエントリー数が増えている。ナイスアマチュア賞などの予選における賞の新設が後押し

・漫才を解説する芸人の需要
NSC講師をつとめているNONSTYLE 石田さんや、今回 史上初のM-1 2連覇を果たした令和ロマン くるまさんなど、今年に入ってから芸人さんの出版も話題に。出版するための数字を持っていること以上に、世の中で
「漫才・お笑いを言語化することの需要」が確実に増えている思料

・YouTubeなど、好きな漫才ネタにいつでもアクセス
決勝に行くコンビのネタはほぼYouTubeなどで事前に見られた状態で観客はM-1決勝のネタを見る状況

つまりは観客自体に前提知識が増えてきたことで、前フリとなる自己紹介、キャラ紹介の時間短縮はおろか、ネタ順自体も既に観客があたたまった状態で1組目を見られている状態であると考えます。

前回大会ほどから、既にお客があたたまっている状態で
ネタ披露できるようになっている

絶対評価の時代と新たな悩み

徐々に番組が進むにつれてあたたまる、ということではなく、このお笑いの市民権得てきている状況が背景にあると考えます。

このことはネタ順による影響を減らすという芸人としては願ったりかなったりな状況であることはもちろんですが、一方で
絶対的なネタの強さがそのまま点数に現れる
というある種の戦国自体に突入。決して人気だけでは勝てない、芸を磨く職人が評価される時代でもあるといえます。

ネタ順の影響が減るということは、ネタの質がそのまま出る
という辛辣な状況でもありますね…

お笑いの一般化が進んだことは、ネタ順の影響を減らすことだけではなく、新たな悩みも生まれていると感じます。

それは、
「だいたいのネタは知られている前提」
でネタを選ぶ必要があることです。

つまり、準決勝や予選でやったネタを、いくらネタの質が高いからと言って何度も同じネタは使えないようになります。

スーパーマラドーナの武智さんもYouTubeで
「これまでネタ2~3本をM-1 までに完成させる時代であったが、
今や4~5本完成させる必要がある時代に入っている」
と表現されています。

これは、お笑いが一般化してきたことによる、別の面で芸人さんが苦労している面と感じます。

違ったネタをしなくてはならない
同じネタでも、少し変えなければ「ウケ」につながらない

本大会で最終決戦まで残った、漫才師は
シンプルに2本強いネタを残せていた
といこと以上に、
他で使用していたネタを、さらに改良して本選で披露
されていることが、最後の最後まで残った現在の芸人・職人であるのだなと感じます。

まとめ

私が今回のM-1を見てネタ順の影響度から感じたことに、
「正しい」、「正しくない」はないですが、
あくまでお笑いファン、M-1ファンとして感じたことをまとめてみました。

学生の頃にお笑いに関われたこと以上に、
見る側として私もお笑いに救われたことが多々あります。

ものごとの本質に向き合い続ける芸人さんからの刺激を糧に、
私自身も「本質はどこか?」という問いを、
自分のマーケティング支援事業や、自分の家族、自分の人生に対しても投げ続けたいと感じました。

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