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アニメ映画感想『ふれる。』――あの糸で服でも作ればよかったのに

1.総評  長井龍之・岡田摩里コンビの新作である。彼らが過去に手がけた映画作品としては『心が叫びたがってるんだ。』(2015)や『空の青さを知る人よ』(2019)があり、どちらも傑作とは言えないかもしれないが、随所にアイディアが光る優れた映画ではあった。これらの映画はいずれも恋愛が絡む若い男女の群像劇という共通点があり、本作『ふれる。』(2024)の物語も、その変奏と言える内容である。  本作の着想の中心を構成するのは、「ふれる」という謎の生物をめぐる設定だ。こいつは人と

    • アニメ映画感想『ラブライブ!虹ヶ咲 学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』――一流の美少女アニメと、その背景としての沖縄

      1.総評   この世のあらゆるものは一流から三流まで幅を持つものであり、美少女アニメもその例外ではない。『ラブライブ!虹ヶ咲 学園スクールアイドル同好会 完結編』(2024、以下本映画を「えいがさき」、TVアニメ版を「アニガサキ」と呼称)は、美少女アニメにおける一流を示す秀作だ。  本作の監督を務める河村智之氏は、かつて傑作コメディアニメ『三ツ星カラーズ』(2017)を手がけた方である。その職人芸的な有能さは「アニガサキ」以前から既に証明済みだったわけだが、実際「えいがさき」

      • アニメ映画感想『きみの色』――絶望的に退屈なこの映画は、愛について何を語ろうとしているのか?

        1.総評  気鋭のアニメ監督として国内外で評価を高めつつある山田尚子監督の最新作『きみの色』(2024)は、オルガンとギターをめぐる葛藤劇として、ひとまず捉えることのできる映画である。オルガンはキリスト教世界の規律を、ギターは自由と解放をそれぞれ象徴する。主人公たちの奏でる音楽を通して両者が融合するとき、物語は始まり、また終るだろう。『天使にラブ・ソングを…』(1992)を思い出す人もいるかもしれない。  もうひとつ『きみの色』には仕掛けがある。主人公のトツ子という少女は、

        • 低志会とかいう人たちのアニメ批評のどうしようもなさについて

           故あって「鹿目まどか 神的暴力」というワードで検索していると(自分で書いていても嘘臭いと思うのだが、れっきとした事実である)、ひどいアニメ批評を見つけてしまった。  むろん見も知りもしない他人の(しかも数年前の)トンチンカンな文章を読んだくらいで立腹し、わざわざ記事を書くほど狭量でもないつもりではある。だが、その人の文章を読むにつれ、何だかアニメ批評というジャンルそのものが抱えている問題が露呈している気がしたので、あえて取り上げることにした。  そこで主張されていることの

        アニメ映画感想『ふれる。』――あの糸で服でも作ればよかったのに

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