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一番嫌な仕事|医療機器

注:本記事は内容的に気分が悪くなる可能性があるので、嫌に感じる方は避けてください。
なお、できるだけ直接的な表現は◯印等でカバーします。

医療機器の中でも、
特に嫌だった装置は
霊安室の中の◯体冷蔵庫だ。

日本の病院では
どなたかが亡くなった場合には、
すぐに遺族に引き取っていただくのが普通で、
そのような設備がない施設が多い。

しかしながら
開発途上国では
逆にそれが必須となっている施設も多い。

本来病院という施設は、
病気になった人が健康状態を取り戻す
ためにあるものだが、

開発途上国では
残念ながら、
施設設備、医療人材、資金等が不足しているため、
十分な医療サービスを提供できず、
命を諦めなければならないケースが多々ある。

特に医療人材の不足は痛手だ。
アフリカでは適切な時期に
小学校に行けない子どもたちが30%もいる。

残りの70%の半数は中学に進学できず、
大学や専門学校に行ける学生は
ごくわずかだ。

ましてや医師ともなると、
本当に少ない人数になってしまう。

場所によっては
2千万人の人口に対して、
医師が数名しかいない地域もあった。

医療施設の絶対数も不足していることから、
一般の住民が病院にたどり着くだけでも大変だ。

2~3日、
もしくは1周間程度かかる場合もある。

これは交通インフラにもよるが、
移動にそれだけの日数がかかってしまうと、
移動途中での宿泊費や食費だけでも馬鹿にならない。

現地の中でも農村部に住む人達にとっては、
医療施設に行くだけでも大変なことになってしまう。

さらに、
仮に医療施設にたどり着いたとしても、
やはり施設設備が不足、
医療人材が不足、
といった状況では、
その施設の中で命を落とす人達もたくさんいる。

日本の公的機関によるプロジェクトにおいて、
現地病院関係者達に要望を聞いたりすると、
真っ先に霊安室の◯体冷蔵庫がほしい、
といった要望をされることも多々あった。

日本人の感覚からすると、
先に記述したように
医療施設は患者の健康を回復させることを目的としており、
既に亡くなった方に対して
どうこうするということは目的から外れてしまう。

このため
日本側関係者と現地側関係者の間で
調整が難しくなってしまう場合もあった。

アフリカのある国では、
150体分の◯体を保管する冷蔵庫がほしい、
といった話を聞いた時には、
その数についてまるっきり信じられず、
全く話が噛み合わなかったこともある。

口頭でいくら話をしても全く信じられないので、
では一緒に霊安室に行って、
現状がどうなっているのかを確かめようとなったが、
実際に行ってみると、
それだけの数の◯体がホルマリンのプールに浸されていて、
驚愕してしまったこともあった。

なぜここまで多数の◯体があるかと聞くと、
患者が亡くなった時に
家族に連絡をするだけでも大変で、
携帯もなく
自宅住所も曖昧なため、
思い当たる村で1軒づつ訪問して聞きまわるため、
結局家族を見つけるだけで数日かかってしまうとのこと。

さらにその家族が親戚や友人知人に連絡を取り、
葬式のために◯体を引き取るまでに
最低でも2週間くらいかかることもざらにあるそうだ。

このために◯体の数だけがどんどん増えてしまい、
最終的にはこういう状態になってしまっているとのこと。

ある程度開発途上国での経験があるとはいえ、
ここまでの大事になってしまっているとは、
さすがに想像すらできなかった。

日本の医療状況とのギャップについて
ここまで大きく開いていることに
絶望感にも近い印象を持った出来事だった。

それが1つや2つの国ではなく、
多数の国で同様な要望や状況がある度に
どう対処すべきか苦悩した記憶が
今でも残っている。

以上


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